坂口健太郎が初主演を務めるドラマ、フジテレビ系「シグナル 長期未解決事件捜査班」(関西テレビ制作、毎週火曜21時〜)の第6話。
「シグナル」視聴率低下の原因は、制作側が視聴者を信用しすぎているからじゃないか6話
イラスト/Morimori no moRi

視聴率がかなり下がってきている。
同じ枠の過去作も似たり寄ったりなので、特別な失敗という訳ではないが、9.7%スタートと好調だっただけに、6話で5.7%は下がってしまったという印象が強い。

もちろん視聴率が低いからってそのドラマが面白くないとは限らない。だけど、低いには低いなりの理由はあると思う。

制作側が視聴者を信用しすぎだと思う


まず思うのが、制作側が我々視聴者を信用しすぎているということだ。全てのシーンを刮目し、全てのキャラの心情に思いを寄せる前提で作り過ぎている気がする。もちろんそうした方が楽しく作品を観ることが出来るのは間違いない。だが今の時代は、インターネットや録画機能の発達のため、じっくりと腰を据えて「さぁドラマ見るぞ!」という人が減ってきている。
我々視聴者は、ドラマを観ながらLINEも返すし、洗い物もするし、子供のオムツだって替える。1時間集中して観られる人はそんなに多くないのだ。なのに「シグナル」は、重厚感と緊張感を大切にするあまり、説明が不足になりがちだ。

例えば、1話から言われていることだが、「シグナル」は現在と過去を無線で繋ぐストーリーのため、とにかく時系列がわかりづらい。2つの時代の行き来に加え、さらには回想なんかも入る。これだけでもだいぶわかりづらいのに、緊張感や重厚さを大事にしているせいか、テロップでわかりやすく“1998年”とか、“岩田(当時・〇〇歳)”とか、時代や人物を説明しない。


白髪を入れたり、小道具やファッションにこだわってキッチリ描き訳が出来ているので、よく見ればどっちの時代かはわかる。ちゃんと観ている人からすれば、野暮なテロップや、説明臭いセリフ回しなんかは必要ないし、この形は1つの正解なのだろう。だが、先ほども説明したように、ちょっと眼を離してしまう人には、やっぱりわかりづらい。初登場のキャラなんて、どっちの時代に生きている人間なのか簡単に見失ってしまう。

大事な大事な動機もわかりづらい


今話の犯人・工藤(平田満)の動機もわかりづらかった。

20年前、工藤の娘・和美(吉川愛)はバスの爆発事故に巻き込まれてしまった。この様子をテレビ中継越しに見ていた工藤は、香織の父・英介(小須田康人)がレスキュー隊員に、足が挟まって身動きが取れない和美より、娘の香織(野崎萌香)の救出を優先するように懇願しているのを目撃、その結果、和美は死んでしまう。
これで工藤は英介を恨み、2018年の現代で香織を誘拐した。

文字にすればこれだけのことなのだが、映像的にこれがすごくわかりづらかった。英介と香織も映像が暗くて見づらい上、顔がアップにされた訳でもないし、懇願している様子もそれが優先された様子も明確ではなかった。血だらけの和美が燃え上がるというシーンが凄惨過ぎて、ハッキリ言ってそんなところまで見ている場合じゃないというのもある。1回見ただけで恨んでいる理由を全て読み取るのは難しい。

恨む相手だったら他にも、和美を後回しにしたレスキュー隊員や、事故の原因となったバスの運転手などもいる。
なのに工藤が香織と英介を特別恨んだのは、香織が和美と同じぐらいの年齢だったこと、英介が自分と同じ娘を持つ父親だったことが理由なのだろう。だが、こんな超レアケースに遭遇した人間の心理を説明無しで理解するのは、さすがにムチャだ。

また、話が重すぎるのも視聴率低下の原因なのではないだろうか。純粋無垢な女子高生が焼死するシーンの少し後に、主要キャラと思われていた桜井美咲(吉瀬美智子)が、工藤の罠により殉職してしまうシーンはさすがにキツイ。それでいて、1話のうちに何かしら救いがあるという訳ではないので、次の週までそのドンヨリ感を引きづらなければならないのもシンドイ。

「シグナル」ならではの逆転がある


ただ、そんなドンヨリパートが続いた分、事件解決のスッキリ感には期待が出来る。
事件を起こした工藤は、20年前にえん罪で捕まっていた。この過去を大山(北村一輝)変えることが出来れば、工藤はこんな大事件を起こさないはずだ。過去と現代を繋ぐ無線機を使えば、美咲も和美も死なない未来が来るという大逆転が起きるのだ。

現代の視聴者のニーズには合っていない気はするが、こんな大逆転が起こりうる「シグナル」は、間違いなく見応えのある作品だ。ただ、本当にムゴくてエグいシーンが多くてシンドイので、そろそろ楽しいシーンが欲しい。
(沢野奈津夫)

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