坂口健太郎が初主演を務めるドラマ、フジテレビ系「シグナル 長期未解決事件捜査班」(関西テレビ制作、毎週火曜21時~)の第4話。

まだ事件は2つしか終えていないが、「シグナル」の犯人は決まってクズだ。
犯人には犯人の言い分があって~~なんて生温いことは言わず、全視聴者に多大なストレスをしっかりと与える。勧善懲悪というヤツなのかもしれないが、今回の犯人はあまりにもクズ過ぎた。

だが、その分その犯人と対峙した刑事・大山役を演じた北村一輝がすごいことになっていた。
「シグナル」事件は会議室で起きてるんじゃないみたいなセリフにギクッとしてしまった4話
イラスト/Morimori no moRi

あらすじ


1997年に起きた連続女性殺害事件を再捜査中の長期未解決事件捜査班。プロファイラーの三枝(坂口健太郎)は、21年前を生きる刑事・大山と無線機で交信し事件解決に挑む。そんな中、三枝が生きる2018年でも、同様の手口の殺人事件が起きてしまう。犯人として自首してきたのは、バス運転手の田中修一(モロ師岡)だったが、田中は過去の事件の犯人像と一致しなかった。


事件は会議室で起きてるんじゃない~~的セリフの真意


現代と過去を繋ぐ無線を手にした三枝は、大山にとにかく指示を出しまくる。3話では「事件を解決できるのはあなただけなんだ!」と叫び、何とかして事件を解決しようとする。過去が変われば未来も変わるため、これは当然の行為だ。上手く立ち回れば、殺人さえなかったことにできるのだから。

だが、それでも大山が事件を未然に解決できるとは限らない。今話では、親しい仲である北野みどり(佐久間由衣)を、無線での指示を受けたにも関わらず、救うことはできなかった。そして三枝に言い放ったのがこのセリフだ。


「そっちは写真だけでしょ。写真や資料だけで事件を分かった気になってるんでしょ。でもこっちは違うんですよ!」

実際に生の事件を知らない三枝にはわからないことがある。みんな大好き「踊る大捜査線」の「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!!」と同じ意味になる。だが、決定的に違うのは、視聴者の目線だ。

「踊る」の青島(織田裕二)は、自分の都合で物事を考えている上層部に対して、上記のセリフを言い放っている。
結果、視聴者は自身の仕事と重ね合わせ、大きな共感を生んだ。「ふんぞり返っているだけの上司は何もわかっていない」と。

「シグナル」でその上層部の立ち位置にいるのは主人公の三枝、視聴者も三枝と近い視点で見るように作られている。そこに大山という現場から強烈な指摘が突き刺さる。三枝や我々視聴者は、現場のことを何もわかっていない、会議室から出ないでふんぞり返っているヤツの目線だったのだ。

だがそれでも、無線機というコミュニケーションツールとしては未熟な代物を使い、三枝は今後も大山に会議室からという立場を覚悟した上で、指示を出し続けなければならないのだから、その心中はなかなかに複雑であり、今後もドラマを生みだしそうな気配がする。


北村一輝がグッチャグチャに…


犯人に目星をつけた大山は、田中の元へ向かう。そこで真犯人に出会うも、みどりを殺された大山の怒りは爆発する。しかし、対面するのは前述した通り、話の通じないクズの犯人と、犯人をかばうドクズの田中だ。

2018年からのヒントを得て犯人を特定した大山に、物的証拠も証人も当然いない。どうすることもできない怒りと正義感を持て余した大山は、血と汗と涙を流してもうぐっちゃぐちゃ。拳銃を手にして、もう何て言っているのかわからないほどに叫び散らしていた。


最終的には、死んだみどりと大山の思いが現代での犯人逮捕に結びつき、めでたしめでたし風に落ち着いたが、そんなものはほんの気休め程度に感じる。大逆転からのスッキリ!という結果になるには、犯人があまりにもクズ過ぎた。無茶苦茶になった北村一輝を観る分にはすごく楽しめたが、もうちょっとだけ犯人をマイルドにしてくれると、血圧が上がらなくて済む。

(沢野奈津夫)

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