第11週「デビューしたい!」第63回6月13日(水)放送より。
脚本:北川悦吏子 演出:橋爪紳一朗

8月24日発売
第6週まで収録
「連続テレビ小説 半分、青い。
連続朝ドラレビュー 「半分、青い。」63話はこんな話
律(佐藤健)と別れの悲しい体験を漫画に描こうとした鈴愛(永野芽郁)だったが、なかなか秋風(豊川悦司)
からOKが出ない。律のことも忘れられず1年が経過。笛を捨てようと思い詰めるが・・・。
ボクテとユーコ
「月が屋根に隠れる」という鈴愛の発想に恐れ入るボクテ(志尊淳)とユーコ(清野菜名)。
「あの子感受性凄いのかも」と言うユーコ。
「天才とは言ってない」才能があると天才とは違うとこだわるボクテ。
それはそう。彼らだって漫画家志望なわけで。どんなに仲良くしていてもライバルだ。
確かボクテもユーコも優秀だったはず。
打倒、岐阜の猿ということで、ボクテもユーコも頑張り始める。
このときの音楽が月9「東京ラブストーリー」(91年)の劇伴ぽい。
描き直しの嵐
「月が屋根に隠れる」(月屋根)を150回くらい描き直すはめに。
そのまま1年経って、いよいよ「東京ラブストーリー」がはじまった91年に。ドラマの世界でこのドラマははたしてやっているか、そもそも柴門ふみの原作漫画は存在しているのか。
それはそうと、鈴愛もアシスタントとしては技術面が成長した。
忙しすぎてお風呂にスクリーントーンが浮くというディテールは面白い。
1年経ってもまだ律が忘れられず、月のきれいな夜、眠れない夜には律を思って笛を吹いてしまう。
広大な自然いっぱいの田舎だったら似合う光景だと思うが、都会のど真ん中・赤坂で笛吹く女って
斬新過ぎる。でもボクテがお湯沸かしていてそのケトルが鳴っているのかと思えばありなのか。
鈴愛の暴言
このままではいけないと、笛を捨ててほしいとボクテとユーコに頼むと秋風がやってきて「やっほーい」と捨ててしまう。
3人を焚きつける秋風だったが、鈴愛は笛を捨てられたことを怒り「先生はおかしいです」と責め立てる。
「私達は漫画家である前に人間です!」
「先生はロボットです。漫画を描くためのロボットです」
「悲しいことを喜ぶ変態にはなりたくない」
「先生は漫画を描くために人の心を捨てたんだ! だから先生はいい年して独り者で家庭もなくて友達もいないんだ!」などと暴言を吐きまくる。
結局、秋風は捨てたふりをしただけで、ユーコは「家族がいなくても友達がいなくても私達は先生が好きです」と言って恥ずかしそうに微笑む。ユーコのフォローに心底ホッとした。
鈴愛の何が天才かというと、人を傷つける天才だろう。引いては北川悦吏子が悪口台詞を書かせたら天才だ。
暴言吐かれた豊川悦司(秋風)が怒るのではなくちょっと動揺を見せるので、視聴者はたちまち秋風(トヨエツ)応援派に回ってしまう。豊川悦司、ずるい。でも、正しい選択だと思う。
スタッフも笛を出す手つきをものすごく美しく撮影までして。前にもレビューで書いたが、ほんとに指がキレイだ。
こんな指が繊細な人に心がないはずがない。鈴愛も感情が高ぶっていただけだとは思うが、秋風の漫画を読めば(くらもちふさこの漫画)、心がないなんて言えるわけがない。
一生懸命、いいふうに解釈すると、律が作りたい「ロボット」だから鈴愛にとって「ロボット」は悪いものではないはず!
でももうそろそろ、鈴愛も暴言吐く前に深呼吸して我慢することを覚えてほしいっす。
時に1992年
とうとうデビューしたのは、ユーコだった。
やっぱり、いい子がデビューしてほしいもの。
喜ぶとき、ちょっとボクテが無理していて「あんたわかりやすい」とユーコが指摘する。
「天才とは言ってない」とこだわってみたり、ボクテの態度がちょっと変わって来ている。人生がかかると
ニコニコばかりもしていられない。
ちなみに「5分待って」は、ある日主人公が目覚めたら見知らぬ女の子が隣で寝ていて・・・という漫画だそう。テレビブロス7月号の清野菜名インタビューより。「男女七人夏物語」(86年)のほか、そういうはじまりはあるある。
(木俣冬)