第17週「支えたい!」第100回 7月26日(木)放送より。
脚本:北川悦吏子 演出:深川貴志
100話はこんな話
涼次(間宮祥太朗)の代わりに映画「名前のない鳥」を撮ることにした元住吉(斎藤工)は罪悪感で自殺を図ろうとするも未遂に終わる。
涼次は元住吉が佐野(若村麻由美)に頼んだことを知っても尊敬する先輩をなじることはできない。
そして涼次の心は壊れてしまう。そんなとき鈴愛(永野芽郁)の体調に異変が・・・。
二度目か三度目に飛ぶ
麦(麻生祐未)がクールフラットを訪ねると応答がなく、鍵が開いていたので勝手に中にあがると、ベランダの窓が開いて雨が降り込んでいた。
何かいやな予感がしたらしく麦は窓の下をおそるおそる見る。
だが元住吉は怖くて飛び降りることができずテーブルの下に隠れていた。
「死ねなかった 怖くて・・・怖くて死ねなかった」と泣く元住吉。このときの斎藤工の口調が子どもに戻ってしまったかのようで庇護欲をそそる。
雨が上がった朝、かたつむりが紫陽花に乗っかっている。
三おばの家の豪華な和室に、麦と光江(キムラ緑子)と斑目プロデューサー(矢島健一)と涼次と鈴愛が座っている。
「自殺をする人は 一度目は怖くてやめて 二度目か三度目に飛ぶって言います」と麦は心配そう。
原作者の指名ではなく元住吉が撮りたいと頼んだことは、ここに介した面子はすでに聞いていて、
鈴愛は「許せない」と憤慨する。
なにしろ愛する夫が2年もかけた夢。彼女が働いて支えた2年の苦労はなんだったのか。
「大納言で残業して働いて働いて」ってそんなに忙しい店じゃなかったのに残業とは。そもそも三おばの家の離れで暮らせているのだからそんなに鈴愛は苦労してもいないであろう(あげあし鳥)。
とはいえ、鈴愛が少し成長したことを感じるのは、元住吉本人には言えないから先にぶちまけておくという気が回るようになったこと。以前はすぐ癇癪を起こして人をなじってばかりいたことを思うと大人になった。
涼次も「今言ったみたいなことは絶対に祥平さんに言わないで」と念を押す。
そんなに元住吉のことを思うのだったら、光江とか鈴愛とか部外者は席を外してもらうと思うんだが(あげあし鳥)。
原作者と涼次を最初に対面させないことも合わせて、その場に必要な人物のチョイスがちょっとへんだと思っていたら、あとで、テレビからテツand トモのヒット曲「なんでだろう〜」が鳴りだして、「それは、なんでだ? なんでだろう?(なんでだ?)」とリフレイン。絶妙な選曲である。
仕事の重要な話の席に光江とか鈴愛とかがいるのはなんでだろう?
原作者と脚本に関してはじめて会うとき、涼次を同席させなかったのはなんでだろう?
いろんな「なんでだろう?」が歌と共に沸いてきた。
欲しいものに手を伸ばすのが生きるってことじゃない?
テレビからテツand トモのヒット曲「なんでだろう〜」が鳴っている場面は、元住吉が撮りたいと思うような台本を書けたことが光栄であると涼次が身を引き元住吉に花を持たせてその場を収めたものの、心が壊れて、終日だらだらするようになってしまった場面。
鈴愛は喫茶おもかげでボクテ(志尊淳)とユーコ(清野菜名)に話を聞いてもらう。
失敗したらやり直せばいいと言うが「たった一度しかない ここ! 今! って瞬間があるような気がする」と言う鈴愛。
ここから3人がこれまでの人生を振り返る。
ボクテは功を焦って一度失敗したが漫画の世界にしがみつき再びチャンスを獲得した。
ユーコは自分と鈴愛の人生に後悔はないと言う。ちゃんと挑戦して「お前じゃ駄目だ」と漫画の神様に言われるまでやったからと。
結果はどうあれ「欲しいものに手を伸ばすのが生きるってことじゃない?」というユーコ。まずは「欲しいものに手を伸ばすこと」が大事。そう思うと元住吉は欲望に忠実で、涼次の欲望はまだまだ淡かったということだろう。
どういう事情だったかわからないけど、原作者に会う時は必ず僕も同席させてください、と前もって頼んでおくことも大事であろう。自分のいないところで話を進めさせないという用心も必要になってくる。体験を積むとそういう知恵もついてくるものだ。
今回だって、W 監督、せめて、監督補にさせろとか交渉の余地はあったのではないか。あとこれがヒットしたらロウ・バジェットでいいから必ず一本作らせろとか粘るくらいの強さがる涼次にあってほしいが、元住吉共々“いい人”なんだろう。いい人で全然いいのだ、ほんとうは。悪いことして成功するより、全然。
ドラマも100回を迎えて、ヒロインの人生に大きな転換点が。101回めはいよいよ鈴愛がお母さんになる?
(木俣冬)

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