8月8日(水)発売の雑誌anan(アンアン)は、毎年夏恒例のセックス特集。表紙には「愛しい人と触れあう、優しい時──。
愛とSEX」というコピーを掲げ、AAA(トリプル・エー)の西島隆弘が抱いた女性越しにこちらを流し見ている。
「セックスは万人の必修科目ではない」それでもセックスで幸せになりたい「anan」セックス特集を読んだ
AAA・西島隆弘が表紙の雑誌「特別付録DVD付 anan (アンアン)2018/08/15・22 No.2114[愛とSEX]」(マガジンハウス)

AAA・西島隆弘が醸し出す日常の優しい幸せ


「anan」セックス特集の楽しみの一つは、アイドルや俳優が肌をむき出しにするセクシーな巻頭グラビア。昨年は、関ジャニ∞の横山裕が胸板の毛穴の凹凸までくっきりと見せ、「触れたい」と思わせる質感の裸体を披露していた(レビュー記事)。

横山を撮影したのと同じカメラマン・伊藤彰紀(aosora)が撮っているにも関わらず、AAA・西島のグラビアはやけに清潔だ。パッと見て即「エロい!」と感じたのは、女性と服を脱がせ合う西島の前髪が、女性の髪に引っかかって少し乱れる1枚。
人によってエロスを感じる基準の違いはある。けれど、やはり「相手がふいに乱れた姿」というのは、ドキッとする瞬間の一つなのかも。


西島のグラビアがエロスよりもキレイに寄っているのには、理由がある。それは、今回のテーマが「愛しい人と触れあう、優しい時──。」であるということ。
昨年の表紙コピーは「私たちの最高の瞬間。」で、セックスの非日常性や絶頂を押し出していた。対して、今年のテーマが大切にしているのはセックスの日常性だ。

西島と女性が抱き合っているのは、どこか不明な異国のホテルのような場所ではない。アースカラーの家具が置かれた、無印良品などシンプルなインテリアが好きそうなカップルの部屋だ。

写真の中で西島は女性に何度もキスをする。印象的なのは、女性の肩に唇をうずめた1枚。肩へのキスは、恋しさや愛おしさの表れと言われている。頬や肩、髪の毛に優しく指を沿わせる仕草も、快楽を求めるのではなく、相手への愛おしさからそうしてしまう素朴な愛情が伝わってくる。

今回の「anan」は、官能や快感だけでなく幸福感や愛情に満たされるセックスの価値をグラビアで表現していた。

目次紹介! 見どころは二村ヒトシのコラム


巻頭グラビア以降の目次を一部紹介する。

・心とカラダ、両方満たされたい。
ananセックス白書2018

・めくるめく官能の悦びに包まれて。読者が体験した、愛欲の一夜。

このあたりは、おなじみの読者アンケート結果紹介だ。正直、毎号あまり代わり映えしないと思っていたのだが、一つ気になる変化があった。

それは、「初体験の年齢」の結果を掲載しなくなったこと(※体験談の個人のプロフィールには個別の記載あり)。
いくら「焦らなくってもOK!(2017年)」「タイミングは人それぞれ(2016年)」とフォローしたところで、アンケート結果を載せれば少なからずそれにコンプレックスを抱く女性は出てくる。

本当に人それぞれで焦らなくてOKだというなら、知らせなくたって良いのだ。2018年は、女性を煽らずカップルの現状をレポートする姿勢を貫いた。

・男子の気持ちを徹底調査! 実践的“そそるカラダ”考察。
・自分も相手もさらに昂まる。もっと感じるSEXテクニック。

この辺りは、男性からの目線も気にしたボディケアの方法やテクニックの紹介。
日常感重視の号だからか、「もうみんな知っているのでは?」と心配になるくらいベーシックな情報が網羅されている。初めて「anan」のセックス特集号を買うという人には、2018年度版がおすすめだ。

モテ芸人として登場したパンサー・向井慧は、女性の乳首の色や肌の質感について繊細に言及。その後、「汗っかきなのはむしろ大歓迎だよ!」と両手でオッケーサインを作って笑顔でコメント。男性のわがままな無邪気さに脱力して、呆れつつも笑ってしまう。

・文月悠光/二村ヒトシ/たなかみさき/森美樹 人気作家の官能アンソロジー 性愛─愛し合うということ─

こちらも恒例の、文学による官能表現。

特に、AV監督・二村ヒトシの「幸せになるための性愛論」は、『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(イースト・プレス)や『どうすれば愛しあえるの 幸せな性愛のヒント』(KKベストセラーズ)など、彼の多数の著書のエッセンスが2ページに凝縮されていて読み応えあり。
「セックスは万人の必修科目ではない」それでもセックスで幸せになりたい「anan」セックス特集を読んだ
二村ヒトシ『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(イースト・プレス)

“仕事で認められる、映画や読書や食事を楽しむ、それだけで人生が満たされるなら、あるいはセックスには重きを置かない恋愛や結婚で十分なら、無理して追求することはありません。さんざん「いいセックスとは」を説いてきましたが、一方で僕は「セックスは万人の必修科目ではない」とも思っているんです。”
(雑誌「特別付録DVD付 anan (アンアン)2018/08/15・22 No.2114[愛とSEX]」マガジンハウス p.67)

セックス特集で「セックスは万人の必修科目ではない」と梯子を外す潔さ。迫りくる性愛の圧に悩んでこの号を手に取った人にとって、セックスは幸福になるための手段の一つでしかないという話は救いになり得る。
全文を読んで興味を持った人には、ぜひ彼の数々の著書にも手を伸ばしてみてほしい。

・特別付録オリジナルDVD Love in Comfort 優しさに包まれて

毎年大好評だという、ananとシルクラボのコラボDVD。今年は、エロメンの東惣介、北野翔太、有馬芳彦と、AV女優の古川いおり、大槻ひびき、花咲いあんが出演している。
冒頭のテロップには、「男女間のコミュニケーションを映像化しました。」と明記。セックスだけではなく、そこに至るまで、至ってから、そしてその後のすべてを一つのコミュニケーションと称するところに意思とプライドを感じた。

2016、17年にあった「酔った勢い」や「別れる前に最後のセックス」という非日常シチュエーションではなく、18年版はお互い癒し合うことを大切にしたストーリーが3つ。エロ目的だけでなく、「いいな〜、可愛いな〜」とほのぼのとするために見るのも良さそう(北野・大槻カップルがめちゃくちゃ可愛い)。

ハッピーに包まれた2018年版セックス特集



過去の挿入&絶頂主義から少し距離を置き、日常のセックスとコミュニケーションで幸せになることを考えた2018年の「anan」セックス特集。細かいツッコみポイントもあるけれど、男性からの過剰な要望も少なくなり、全体的にハッピーに包まれている。
初めてセックス特集を買う人もセックスに疲れてきた人も、男子も女子も、初心にかえるような気持ちでのんびり読んでみては。

(むらたえりか)

雑誌「特別付録DVD付 anan (アンアン)2018/08/15・22 No.2114[愛とSEX](マガジンハウス)