「孤独のグルメ」「ミスター味っ子」などグルメマンガ界のレジェンドたちが明かす舞台裏


グルメマンガは、今やマンガを語る上では外せない一大ジャンルです。東京・三鷹RIスタジオで開催されたイベント「グルメマンガ家の世界」では、出版社の垣根を越えてレジェンド級の先生たちが集結! ファンにとってはヨダレが出るほど“美味しい”トークが繰り広げられました。


この豪華なイベントが実現したきっかけのひとつは、現在盛り上がっているグルメマンガブーム。どのマンガ誌にもグルメマンガがあり、テレビ番組でもマンガ飯が取り上げられています。その魅力をさまざまな角度からファンに発信したいと企画され、どうせなら大きくやろうと1日で7名ものマンガ家さんが登場することになったそうです。

「孤独のグルメ」「ミスター味っ子」などグルメマンガ界のレジェンドたちが明かす舞台裏


グルメマンガの原作者が語る、取材の苦悩


「孤独のグルメ」「ミスター味っ子」などグルメマンガ界のレジェンドたちが明かす舞台裏

「孤独のグルメ」「ミスター味っ子」などグルメマンガ界のレジェンドたちが明かす舞台裏


出演するマンガ家さんは、作品の人気や作風のバランス、作者自身のキャラクターなどを考慮して決められたとのこと。

第1部は初顔合わせの原作者対談。『孤独のグルメ』の原作者・久住昌之先生と、『築地魚河岸三代目』の原作者・鍋島雅治先生。そして作家・心理カウンセラーの五百田達成さん、『ちびあいりんのゆるやかな日常』などのイラストレーターとしても活躍する古川愛李さんが、グルメマンガファンを代表して進行を務めました。

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(左から)五百田さん、古川さん、鍋島先生、久住先生


まず、TVドラマも人気の『孤独のグルメ』の取材秘話。舞台となるお店はネットや情報誌に頼らず、久住先生がひたすら町を歩いて「(主人公の)ゴローに食べさせたい」と感じた面白いお店を探すそう。しかもスタッフも加わり数回通って食べた後に、はじめて交渉開始するのだとか。

イベントでは久住先生による写真を見ながら、お店のどこに着目するか、立地や外観、メニュー(「冷やしハンバーそば」など謎のメニューがあったらお店の人に聞かずにまずは注文!)などのポイントについて、ユーモアたっぷりにトークが進みました。

一方、鍋島先生は学術的・歴史的に膨大な調査をするそう。特に『築地魚河岸三代目』ではテーマとなる魚を丸々一尾を買って実際に調理。
「絶対作って食べないとダメなんです」といい、科学的な情報はもちろん、その時その人に食べさせてあげたいという気持ちも大事にしているそうです。

そして鍋島先生の出身である佐世保のちゃんぽんの話に。駅前のちゃんぽんが美味しかったという久住先生の情報に、地元に詳しい鍋島先生が激しく同意し、スープの味で盛り上がる一幕も。

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握手を交わす鍋島雅治先生と久住昌之先生


他にも「取材のはずが、あまりに美味しいと写真撮影を忘れ、食べた後に気づく」、「単なる情報だけでなく、出会いや想像力が大事」など、原作者あるあるが盛り上がり、初対面とは思えない意気投合した姿が見られました。

トーク後はお宝プレゼント抽選会と記念撮影が行われて終了。イベントオリジナルグッズを購入した人への特典として、サイン会も実施されました。

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サイン会前の鍋島雅治先生と久住昌之先生

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ファンの方へサインをする鍋島雅治先生と久住昌之先生


イベントオリジナルグッズは、Tシャツ(3500円)、タンブラー(1000円)、クリアファイル&メモ帳セット(700円)。全先生の代表キャラクターが勢ぞろいしたイラスト入りです!

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キャラクターが勢ぞろいしたオリジナルグッズ


丸写しじゃダメ! 料理の絵を描くコツ教えます


第2部は仲良しの実力派作家3人組。『ひよっこ料理人』の魚戸おさむ先生、『築地魚河岸三代目』作画のはしもとみつお先生、『蒼太の包丁』作画の本庄敬先生。

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(左から)古川さん、はしもと先生、魚戸先生、本庄先生、五百田さん


舞台裏では緊張していた先生方ですが、ステージが始まると絶好調。古川さんからの好きな食べ物は何かの質問に「みそ汁」(魚戸先生)、「魚」(はしもと先生)、「白い飯」(本庄先生)と定食を完成させるほど。さすが普段から仲良しだという三人です。

原案がメインだった第1部とは対照的に、こちらは料理の“絵を描く”話題がメイン。
「単に料理を丸写しするのではなく、なんとかこの美味しさを伝えたい」、「絵のうまさ以上に食べ物への思いが大事」と話していました。特に漁師の息子である本庄先生は、舟盛りを描く際にそれぞれの刺身がどの魚のどの部位かまで気にしたとのこと。また、スタッフも食べるのが好きな人が多いなど、話題は尽きません。

そして即興で絵を描く「ラクガキ対決」も開催。お題は第1部の久住先生と鍋島先生からのリクエストで「コンクリートミキサー車から出てくる、人生最後に食べたいもの」。制限時間3分というハードな条件にも関わらず、スラスラッとペンを走らせる姿に会場から感嘆の声があがります。

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ラクガキ対決

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本庄敬先生による「コンクリートミキサー車から出てくる、人生最後に食べたいもの」は『とろろめし』

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魚戸おさむ先生による「コンクリートミキサー車から出てくる、人生最後に食べたいもの」は『ラーメン(小学生の頃食べた90円のラーメン)』

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はしもとみつお先生による「コンクリートミキサー車から出てくる、人生最後に食べたいもの」
は『プリン』(?)


お宝プレゼント抽選会ではこの色紙に加え、先生方のご厚意により約半数の参加者にプレゼントが当たるという太っ腹な企画が。記念撮影タイムでもファンからの要望に応える姿が印象的でした。

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魚戸おさむ先生、はしもとみつお先生、本庄敬先生の3ショット


料理対決の原点はここにあった!


第3部はグルメマンガの元祖と、そのパクリを公言するいわば師弟関係のようなおふたり。「料理対決」の原点といえるマンガ『包丁人味平』のビッグ錠先生と、『ミスター味っ子』の寺沢大介先生が出演しました。ちなみに約100名のお客さんのうち半数が3部通しての参加でした。

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(左から)古川さん、ビッグ錠先生、寺沢大介先生、五百田さん


「『味っ子』の料理対決は『味平』が元でした」と謝る寺沢先生でしたが、むしろ『ミスター味っ子』は料理系バトルマンガの後継者であり、ここからジャンルが確立されたと話が展開。


そしてビッグ錠先生からはどうやって『包丁人味平』を生み出したのか、当時の貸本マンガ・青年誌登場などの時代背景、職人をテーマとしたマンガの魅力、そして西部劇的な対決が元のエンタテイメントだったという創作秘話が語られました。

「ラクガキ対決」は、第2部の魚戸先生・はしもと先生・本庄先生によるお題「寒い時に食べたい、海の弁当」にて実施。こちらもスラスラッと仕上げます。

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寺沢大介先生による「寒い時に食べたい、海の弁当」。七輪で魚介を焼いてお酒を飲みたいそう

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ビッグ錠先生による「寒い時に食べたい、海の弁当」。トンビに狙われながら湘南の海で食べる『クラゲ弁当』


しかし、五百田さんから追加のお題として「ビッグ錠先生は味っ子、寺沢先生は味平。互いのキャラを描いてください」が伝えられると、先生方からは悲鳴が、逆に客席からは歓声があがりました(笑)。

さらにマンガに出てきた料理を、ファンが実際に作った動画や写真をみんなで鑑賞する「再現料理」のコーナーもあり、応募された『ミスター味っ子』のホーレン草の冷やし中華や、ビッグ錠先生の『一本包丁満太郎』の三大珍味のおにぎりなどが紹介されました。再現料理は「#0804マンガ料理対決」のハッシュタグで見ることができます。

また、実はファンのみならず同業の先生方も多く来ていたこのイベント。第2部の本庄先生のアシスタント先であった石川サブロウ先生や、マンガ飯料理家の梅本ゆうこさんも来ていました。

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石川サブロウ先生


お宝プレゼント抽選会では、寺沢先生からは『将太の寿司』の連載300回記念テレホンカード、ビッグ錠先生からは個展の際に作ったポストカードと、まさにお宝が次々に登場!

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寺沢先生の記念テレホンカード

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ビッグ錠先生の希少なポストカード


最後に、寺沢先生があらためて尊敬するビッグ錠先生についての憧れを熱弁。曰く、ビッグ錠先生が拓いたグルメマンガは、日常でありながら同時にぶっ飛んでいるというすごい世界を描いたものであり、自身が描く際も「ビッグ錠先生ならどう描くか」を考えていたとのこと。

そしてビッグ錠先生からは、こんなにグルメマンガの世界の広がりは想像していなかったという話に加え、読者をはじめ原作者の牛次郎さんなど色々な方への感謝が述べられました。


「孤独のグルメ」「ミスター味っ子」などグルメマンガ界のレジェンドたちが明かす舞台裏
ビッグ錠先生と寺沢大介先生の2ショット


「グルメマンガ」とは単なる料理を描いたものではなく、人間ドラマが根底にあるんだなあと感じさせられました。主催者によると反響が大きければ第2回も検討しますとのこと。まさに「おかわり!」が欲しくなるイベントでした!

(高柳優/イベニア)
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