第20週「始めたい!」第120回 8月18日(土)放送より。
脚本:北川悦吏子 演出:土居祥平

NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 半分、青い。
120話はこんな話
仙吉(中村雅俊)がカンちゃん(山崎莉里那)にだけ明かした2号店の名前を聞き出そうと、鈴愛(永野芽郁)たちは躍起になるが・・・。
第二候補
8月17日(金)、「半分、青い。」がクランクアップを迎えた。通常だとクランクアップの現場をマスコミに公開するが、今回はネタバレに留意して取材を入れなかったそうだ。ネタバレとはきっと鈴愛と律がどうなるのかってことだろう。どうなるんだろう。
第二候補は「五平五升」だとわかったが、第一候補をカンちゃんは答えない。
119話で「ご」「へ」・・・その後は・・・と引っ張って120話で「五平五升」が出てきて、だがそれは第二候補であるという、引きがじつに巧い。
だが、鈴愛の「おじいちゃんがよく言ってた(言葉)」はいささかいただけない。116話で鈴愛はそれをはじめて聞いているはずで、そこから亡くなるまでの間に急速に「よく言ってた」としても、ざっくりし過ぎだろう。
6月30日まで東京新聞の夕刊に連載されていた「名作で読む発達障害 続主人公たちのカルテ」(精神科医・岩波明 著)で「半分、青い。」の鈴愛には“ADHD的な特徴が顕著にある”と指摘されていた(6月29日夕刊)。ADHDとは注意欠陥・多動性障害の略で、それが障害となることもあるが魅力にも成り得ると言われている。
はたしてドラマがそこまで考えて人物造形しているかは定かではない。
120話では鈴愛は「この世は両耳聞こえる人用にできとる。私のためにはできとらん。
とても勇気づけられる力強い台詞だが、高校生の頃から彼女はそう開き直っていたように見え、その後、とくに変わった様子もないため、ずっとドラマを見てきた視聴者としてはこの台詞があまり響かなかった。今回、はじめてドラマを見た人に向けているのかもしれない。
鈴愛は家族、律、フクロウ町の人々、ティンカーベルの人々、大納言の人々・・・とみんなにかばってもらってすごく恵まれている。片耳失聴はしていないけど鈴愛より恵まれずに悲しい気持ちで生きている人は世の中にたくさんいるので、彼女のざっくりした言動に時々いらっとなる人がいてもおかしくはない。
120話では健人が「鈴愛さん、あなたの日頃の行いには目を覆いたくなることががあったりなかったりね」と(冗談ではあるが)言い、ようやく溜飲が下がった人もいるだろう。
片耳失聴であろうと発達障害であろうと、そのハンディ以上に魅力も十分あるのだからそちらに目を向けたい。
「名作で読む発達障害」はなかなか興味深く、古今東西、小説から映画、舞台、テレビドラマの登場人物に発達障害の兆候を取り上げている。
書籍になっている前作「名作で読む発達障害」のカルテ04「妄想知覚と幻聴 芥川龍之介『歯車』」(新潮社)では「妄想知覚」は“外界からの刺激に対して、異常な意味づけを行うものであり、偶然の出来事に特別な内容がみられると確信してしまう状態”と書いてある。
120話、ココンタが転がったことを仙吉の残した言葉を明かしてはならないという警告と捉えたカンちゃんは妄想知覚を発揮したように見えた。
2号店の名前はなかなかわからない。
健人(小関裕太)がスペシャルなおやつで釣っても、カンちゃんはその手には乗らない。
カンちゃんと翼との出会い
物語において、主要人物がはじめて出会う場面は大事。作家の腕の奮い所だ。
これまで数々のボーイミーツガールを描いてきた北川悦吏子の描く、カンちゃんと翼との出会いはさすが、印象的だった。
久しぶりに律の実家に遊びに来た翼(山城琉飛)が弥一(谷原章介)が最も好きなカメラのひとつ(84年ドイツ製)をいじっていると、カンちゃんが店のドアを開け、笑った瞬間、思わずシャッターを切ってしまう。
向き合って名前を名乗り合うふたり。
弥一がそれを見て発する「あら・・・」と優しい声が効いている。
弥一はさっそく暗室で写真を現像。カンちゃんのとびっきりの笑顔が浮かび上がってくる。
暗室の不思議な儀式をやりたがるカンちゃん。翼もやりたそうだがカンちゃんに譲ってあげる。
おじいちゃん
亡くなった仙吉は写真の中で家族を見つめ表情を変え声も発する。今後もちょいちょい出てくるかも。
ノートに丁寧に記された五平餅のレシピも鈴愛に託された。
より子、登場
引っ張るといえば、律の妻・より子さん(石橋静河)。19週のおわり、20週の予告編で、より子が出てくるのはわかっていた。いよいよ鈴愛と向き合うのかという期待を土曜日のラストまで引っ張り、さらに21週に引っ張った。
(木俣冬)