ここ数回、500円ランチがどうのこうのという話ばっかりで、「人情社長の熱血奮闘記」でも見せられているのかよ!? 状態だった本作。
樫村徹夫(仲村トオル)は、いい社長なんだろうけど、そんなことやってていつになったら130億円返せるんだよ……という気持ちになっていたのだが、やっぱり世の中はそんなに甘くなかった!
130億円の含み損を抱えて、潰れる寸前ともいえる「デリシャス・フード」だが、人気フランチャイズ・ブランドなど、部分的にはまだまだ魅力的な資産を持っている。
ここに来て、潰れる前にその「おいしい部分」をかすめ取ろうという連中がワラワラと集まってきた!

ヤバそうな連中が群がってきたぞ
ビジネスドラマということで、『半沢直樹』みたいに、ひとつの巨悪を設定して、最終的にそいつへ「倍返し」するのが目標のドラマなのかと思っていたのだが、そうではなかったようだ。
「助けてあげるよ!」という顔をして近づいてくるヤバそうな連中の嘘を見抜き、誰が本当のことを言っているのか、誰と手を組めば会社を建て直せるのか!? ……というドラマなのだろう。
今回、「デリシャス・フード」周辺に群がる連中が、何を狙っているのかというのが次々と明らかになったのでまとめてみよう。
・「デリシャス・フード」創業オーナーだった結城伸治(池田成志)
「デリシャス・フード」を持ち株会社にして、事業ごとに会社を分割し、負債も分割して負担させることによって、他社の出資を受けやすくすることを提案。
そうなったら、結城自身も出資したいとのこと。
「自分のためにこの提案をするのではありません。デリシャス・フードの社員たちのためです」
とは言っていたが「デリシャス・フード」の株を売った金で、今度は「デリシャス・フード」のおいしいところだけ買おうとしているようにも見える。
・「十和子フード」社長・岡田十和子(水野美紀)
以前より樫村に対して、やたらとフレンドリーに協力してきた十和子だが、ここにきて本音を出してきた。
8億円の支援と引き替えに「デリシャス・フード」の発行済み株式55%&経営権が欲しいという。
55%の株を8億円で……というのは、現在約2500円で取引されている「デリシャス・フード」株を、900円程度で買い取ろうということ。
あり得ないくらい安いのだが、莫大な含み損を抱えているなど、内情を知っているだけに、強気で交渉する気のようだ。
・宮内亮(椎名桔平)&大友勝次(本田博太郎)
「デリシャス・フード」とのコンサル契約を解消した宮内の会社に、「デリシャス・フード」前社長の大友がいつの間にか入り込んでいた。
大友は、「グッドバッド方式」で、会社の業績好調な部門と、負債を抱える部門とを切り離して分割し、おいしい部門を「伊坂商事」に売却することを提案。
大友は、銀行時代の先輩である「伊坂商事」の常務取締役・小沢幸太郎(竜雷太)に何やら相談していたので、「伊坂商事」が買い取った会社の社長の座でも狙っているのではないだろうか。
「デリシャス・フード」のメインバンクとも口裏を合わせており、会社分割は銀行から
も「やや強いお願い」をされており、これを拒否すれば貸付金を即時回収するとも言われている。
『奪い愛、冬』のサイコパス夫婦を思い出してザワつく
改めて振り返ってみると、ホントに大変だな、「デリシャス・フード」。社長まで参加して200円の飲茶メニューを開発している場合じゃないよ。
こんな状況の中、数少ない前向きな材料は、大株主であるファンド会社社長・山本知也(大谷亮平)の持ってきた「新潟屋」の海外進出話くらいだろうか。
その山本も、「8億なんてなめた金額で経営権をゲットしようとは……十和子にガツンと言ったるわ!」くらいの勢いだったのに、いざ十和子に会ったら、その美人っぷりに完全にヤラれてしまったようで、にやけたアホの顔に。
アナタが50億円もつぎ込んできた会社を、8億円ぽっちで買い取ろうとしている女にデレデレしている場合じゃないだろう。
余談だが、大谷亮平と水野美紀といえば、昨年、テレビ朝日で放送されていた『奪い愛、冬』で、不倫する夫とサイコパスな妻としても共演していた。
このふたりのラブ展開に、イヤな予感しかしない……!
この占い師、信用していいの!?
さて、どいつもこいつも言ってることが信用できない状態の中、社長の樫村が頼ったのは、例のごとくアヤシイ占い師(ミッキー・カーチス)!
……バカでしょ、アナタ。
占い師いわく、
「光明が差しているよ! 七味を浴びて運が向いてきたんだよ、いいことあるよ〜」
「また女難の相が出ているよ、アンタ性悪女に引っかかってるんじゃないの?」
とのことだが、明らかにどん底の状況。何が「光明」だというのか?
そして、たびたび言われている「女難」とは何のことを指しているのか?
素直に考えると十和子のことなのだろうけど、「女難」だけではなく、その他のおっさんたちも全員災難にしか見えない。
終盤、十和子のバックに、創業オーナーだった結城がついているらしいという情報が明かされていたが、十和子と結城、何を企んでいるのか!?
……というか、そもそもこの占い師、当たるの!? コイツの言っていることが一番信用しちゃダメな気がするのだが。
「夢」だ何だと甘〜いことばっかり言ってきた樫村に七味のようにヒリヒリする現実がバサバサふりかかってきた今回。
困り顔の仲村トオルを見るのがちょっと楽しくなって来てはいるものの、いい加減、「500円ランチ」とかではない、抜本的に逆境を跳ね返せるような材料も出てきて欲しい。
今のところ、誰も信用できそうにないけど、この中に真の支援者がいるのか、それとも新たな支援者が現れるのか?
(イラストと文/北村ヂン)
【配信サイト】
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『ラストチャンス 再生請負人』(テレビ東京)
原作:江上剛『ラストチャンス 再生請負人』(講談社文庫刊)
脚本:前川洋一
演出:本橋圭太
主題歌: 村松崇継「Starting over」(Climbing Records)
音楽 - 村松崇継
チーフプロデューサー:稲田秀樹(テレビ東京)
プロデューサー:川村庄子(テレビ東京)、松野千鶴子(アズバーズ)、木川康利(アズバーズ)
制作協力:アズバーズ
製作著作:テレビ東京