第23週「信じたい!」第134回 9月4日(火)放送より。
脚本:北川悦吏子 演出:土居祥平
134話はこんな話
2010年、夏。
律(佐藤健)、鈴愛(永野芽郁)、正人(中村倫也)が再会。

中村倫也が表紙!
AERA (アエラ) 2018年 9/10 号
「うちはジリ貧です」(カンちゃん)
「今日は台風警戒モードでお願いします」と「おはよう日本 関東版」の高瀬アナ。
さて。律の家にせいいっぱいおしゃれして来た鈴愛。
結果「頑張り過ぎたかもしれん」と反省。
そこから、空白の2年の説明が喜劇仕立てで描かれる。
まず、正人と鈴愛が再会した時の話。
橋の上(正人)と下(鈴愛)でばったり出会ったふたり。鈴愛の中で小田和正の「ラブストーリーは突然に」がかかり、何かがはじまるかと思ったら、正人には10歳上のバリキャリの彼女アキコがいた。鈴愛はそれを「2回振られた」と表現する。
いままでは、「ラブストーリーは突然に」が主題歌である月9ドラマの代表作「東京ラブストーリー」っぽい曲がよく使われていたが、今回はホンモノの「チュクチューン♪」。劇中に使用されているコンピレーション・アルバムが作られ、小田和正(オフコース)の曲「YES─NO」も入っていることから許可がおりたのか(あくまで勝手な想像です)。
今作の功労者のひとりは、もろもろ許可どりをしているスタッフの方である。
話戻して、こんな感じだから、きっと鈴愛は律に会ったときも何かがはじまると思ったに違いない。極めて単純で思い込みの激しいヒトなのだ。
それよりなにより中村倫也が月9の俳優のような雰囲気で橋の上に立っていて、その雰囲気の作り方がすばらしい。
次に、なぜ鈴愛が五平餅の屋台を引いているか。
ヒットエンドランがホームランを目指して空振り、津曲(有田哲平)は夜逃げ。鈴愛が債権者に土下座する日々だったと再現映像。この時かかる曲は中島みゆきの曲っぽいものだった。
「半分、青い。」の功労者、もうひとりは音楽スタッフ。いろんな“っぽい”曲を作って楽しませてくれた。
あと美術スタッフ。133話は、鈴愛のこの2年の発明グッズがじつにしっかり作られていた。
まあかん袋は「わろてんか」の堪忍袋のパロディか。
「鏡よ鏡」は大納言の時、鈴愛が構想を語っていたものだ。「きれいだねえ」の声は人気声優の小野大輔という贅沢さ。しかも佐藤健が鏡に映って「きれいだねえ」と言われるのも可笑しい。
このへんの2年間のお話は、律と鈴愛がふたりだけで回想しても退屈になってしまうので、うまいこと中村倫也が入って盛り上げる。狂言回し的な役割だ。
鈴愛のことをなんでも知ってる正人(鈴愛に律の話も予備知識として耳に入れている)に「ふたりつきあってるの?」とやたら気にする律は、なんだかんだ言って鈴愛が気になるんだなあというくすぐりになる。
作り手としては中村が出てくれて助かっただろうし、中村側としても朝ドラで美味しい役で、最もウィンウィンだったのではないか。主人公のように出ずっぱりで大変でもなく、ちょっと出ていい仕事して喜ばれ知名度アップ。このドラマでヒットエンドラン的(津曲いわく「ひとつのヒットでチャンスが拡大」)なことをしたのは中村倫也だったと言えるかも。
鈴愛と律がしゃべっている、鈴愛の後方、窓辺でケータイをかけている正人をわざわざ映すところも良かった。
133話の画のクオリティは高い。セットの空間が格段に考え抜かれたからか。ロケ地の川辺もいいのか。
映像は“抜け”が勝負なんだと再認識させされる。
俺のロボット人生水の泡
夕方、4人でトランプタワーをやっている場面もゆったりしていていい感じ。青春感あった(設定では中年だが)。
ここでは、「チュクチューン」は松たか子の夫の仕事という話で、鈴愛が松たか子の唄を一節歌う。松たか子は北川悦吏子の「ロンバケ」にも出ていたし、「わろてんか」の主題歌も歌っているから使用しやすかったか(あくまで勝手な想像です)。
律「おまえの人生大丈夫?」
カン「うちはジリ貧です」
という会話から、律は「俺のロボット人生水の泡」(プラス離婚)だと絶望していたが、鈴愛の姿を見て、
少し力づけられる。
あと、カンちゃんの「地球がおうち」だから離れていても一緒理論が律を感動させる。
鈴愛も律も現実的に考えたら、かなりしょぼいことになっているが、それをドタバタの笑いで受け流す。
なんとも哀しい。でも、この人たちは負けない。しぶとく生きていくのだ。
カンの強いカンちゃん
楽しくトランプしている時、律がスケートの話をしたら、急に泣き出すカンちゃん(山崎莉里那)。
「ああいうカンの強いような極端なところあって困る」と鈴愛。
そりゃあんたの血引いとる! と視聴者の多くが叫んだことだろう。
この認識をドラマの最初から徹底させておけばよかったのに(もちろん鈴愛に対して)。
あと、カンが強いからカンちゃん? なんつって。
律がいろいろなだめて・・・カンちゃんが機嫌を直してスケートのジャンプして(また部屋の中で・・・)転んだところに何か倒れてきたのを律が助けようとして負傷。
深刻な音楽がかかって、どうなるの? で次回に引っ張る。億面なくアクシデントで引っ張るテクではあるが、そこに、
正人「ワインバルは?」
鈴愛「そこ?」
をプラスし、ベタさを払拭した脚本家の負けん気は評価に値する。
それも中村倫也がいてこそ。133話は中村倫也さまさま回だった。
あと、佐藤健のアクションが得意なところも生かされた。
この日の「アイデアしゃしん」はキノコの写真をイノシシに見立てた「ウリ坊」。毎日、ほんとうにこの投稿コーナーのクオリティは高いし、目に楽しい。
◯◯絵もいいが視聴者の違う表現を発掘したこの企画は「半分、青い。」の成果であろう。
(木俣冬)