
現代の缶飲料は、飲む時に開栓してもタブは取れない。本体から切り離すのではなく、飲み口の奥に押し込むタイプのタブはステイオンタブといわれる。
取って飲んで、飽きるまで飛ばす
缶飲料の分離式のプルタブは、飲み物を飲んだあとの子どもの格好の遊び道具だった。タブはフタである金属片の部分と取っ手(リング)部分に別れるが、それをパチリと分解し、取っ手部分の切れ目にフタ部を挟み、取っ手を弾いて飛ばすのだ。誰がこの遊びを考えたのかは知らないが、大人から子どもまで誰もが知っていた最高の暇つぶし道具だった。
下を向いて歩けば数秒で見つかるレベル
このプルタブ、本来ならば缶飲料を購入しないと手に入れることはできない。いくら当時の缶飲料の販売価格が消費税なし100円だったからといって、小学生だった筆者はそうやすやすと購入できるはずもなかった。しかし、筆者をはじめ誰でもたくさんのプルタブを容易に入手できた。なぜなら、昔はプルタブはどこにでも落ちているものであり、下を向いて歩いていればあちこちで見つけることができるレベルだったからだ。
子どもにとってはおもちゃが道のあちこちに落ちている、そんな感覚だったわけだが、昔は缶飲料を飲むとき取ったプルタブをその場に投げ捨てる人がたくさんいたのだ。さらに、取っ手を飛ばしたあとは、金属片部分だけ手元に残る。そして、それだけ持っていても意味はない。結果的に残った金属片もその辺にポイしていた。
ポイ捨て、環境汚染でプルタブが社会問題に

足元に目をやればどこにでも見つかるプルタブ。もちろんこの状態が良しとされることなどなく、誤飲による死亡や、海岸などで怪我をするといった事故が多発するなど国内外問わず社会問題に発展した。
それから約30年、プルタブは超レアな存在に
ステイオンタブ式に完全に切り替わった今、プルタブ式の存在は忘れ去られたかに思われた。しかし、海外(特にアジア)では数こそ多くはないながらもプルタブ式の缶飲料の発見報告がTwitter等を賑わすこともあるようだ。たまに報告されるプルタブ式の缶の写真を見ると、この先もしかするとプルタブ式缶飲料が“幻のレア缶”感覚で「見つけたら幸せになれる」などと言われるようになる日がくるかも?なんて思ったりもする。
(空閑叉京/HEW)