10月28日に放送された『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)。主役は北澤尚(戸田恵梨香)だが、間宮真司(ムロツヨシ)にとっても大恋愛。
それを痛感した第3話だった。
「大恋愛」眼の前の愛しい男の名を呼ぶ戸田恵梨香、固まるムロツヨシ。ムロの大恋愛が始まる3話
イラスト/Morimori no moRi

真司の大恋愛がこれから始まる


真司がいつの間にか尚のことを「尚ちゃん」と呼んでいる。尚の病気を知らされた瞬間が境だ。覚悟が言葉に表れた。

自分の記憶がちゃんとしているかチェックするため、何か質問するよう真司にお願いをする尚。真司が出題した「好きな小説」「母の旧姓」「真司が捨てられた神社」の3つを自分が答えられなくなったら別れようと尚は切り出した。
「別れないよ。どうなっても別れないよ」(真司)

マンションの内覧の約束を尚が忘れてても真司は責めない。
 約束忘れちゃった、ごめんなさい。
真司 いいよ、また行こ。

親に捨てられ、児童養護施設で育った真司は悲しみに慣れている。苦しみの乗り越え方を知っているし、人の辛さに寄り添うことができる。

「真司と一緒に幸せを感じれるうちに楽しく過ごしたいの!」(尚)
尚には時間がない。
一緒においしいものをたくさん食べ、楽しいことをたくさんしたい。2人はビアフェスへデートに行った。楽しそうな尚が、笑いながら涙をこぼしている。楽しいことがあると悲しくなる。幸せすぎて怖い。この幸せは長くは続かない。尚の涙に真司は気付かないふりをした。

玄関に刺した鍵を忘れてしまうなど、尚の病状は急速に進行している。真司は尚の主治医であり元婚約者でもある井原侑市(松岡昌宏)に会いに行った。病院で見た医師としての侑市の出で立ち。経済的にも、容姿も、コンプレックスを刺激してくる存在だった。
真司は、引っ越し屋のシフトを増やした。
貯金のない真司が尚と楽しい生活を送るためだ。その無理がたたり、真司は病院に担ぎ込まれた。

病院に駆け付ける尚。真司に無理を強いていたと気付き、尚は謝罪した。しかし、真司は全てを受け入れる覚悟だ。改めて、真司は尚に真っ直ぐな愛を告げた。
「好きと嫌いは自分じゃ選べないから、好きになっちゃったらどんな尚ちゃんだって好きなんだから」
病気と戦う上で糧にもなる、愛ある力強い言葉。目を潤ませる尚は、思わず真司に抱きついた。
「好き、侑市さん」

愛を確かめ合っているはずなのに。「好き、真司」と打ち明けるかのように、熱く「侑市さん」と口をついて出る残酷さ。真司の表情は、呼吸も心臓も止まったかのようだ。尚は呼び間違いに気付いていない。
尚の愛は真っ直ぐ真司へ向かっているのに、病がそれを阻む。誰のせいでもないだけに辛い。

病気を理解してはいるが、真司は衝撃を受けていた。侑市と過ごした尚の記憶を上書きすることはできるか。これからの尚に耐えていくことができるのか。全てを受け止める覚悟の真司の「大恋愛」が、これから始まる。

侑市にとっても大恋愛だった


訪ねてきた真司に対する侑市の態度にトゲがあった。守秘義務など真っ当なことを言っているのに、真司への敵対心がにじみ出ていた。

母・千賀子(夏樹陽子)の勧めてくるお見合い相手は、尚とかけ離れすぎていた。
「ママ、もう痩せた人は嫌!」(千賀子)
容姿だけじゃなく、人間性もだ。千賀子はわざと尚と異なるタイプの女性を探してきた気がする。お見合いを経て、侑市は尚への愛情を再確認した。


だが、侑市はあくまで医師として尚に向かい合った。クールな態度。でも、無言の優しさがにじみ出ている。
「こんな思いするんだったら、余命3カ月って言われたほうがずっと楽だった! もう生きてるのが嫌だって思ったら、先生、殺してくれますか?」
侑市を医師として信頼する尚。侑市にだけは病気への不安を口にすることができた。
「希望を捨てたら、病気に負けてしまいますよ。あなたらしくポジティブでいてください。出会った頃みたいに」
医師という立場に留まらない愛情が、侑市からこぼれ落ちた。
「もし不安なことがあったら、いつでも携帯を鳴らしてください」

侑市は尚を抱きしめたがっているようにさえ見える。でも、あくまで医師として、元婚約者として、自分を律し、尚を支えようとした。
「ひどいな、確かに。ひどいけど、好きなんだ」
これは真司の言葉であり、侑市の心境でもある。


尚は侑市の真っ直ぐな思いを受け止めた。診察を終えて帰る表情からは、強い意志を感じることができる。侑市の言葉で前を向くことができた尚。真司の存在で人間らしさを取り戻した尚。彼女にとっては、どちらも大事な男だ。

次回予告で、「僕に尚が必要なんだ」と侑市は尚に打ち明けている。侑市にとっても大恋愛だった。
(寺西ジャジューカ)

金曜ドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』
脚本:大石静
音楽:河野伸
主題歌:back number「オールドファッション」
プロデューサー:宮崎真佐子、佐藤敦司
演出:金子文紀、岡本伸吾、棚澤孝義
製作:ドリマックス・テレビジョン、TBS
※各話、放送後にParaviにて配信中
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