アニメ『BANANA FISH』(→公式サイト)。
「第22話 死の床に横たわりて」が今日12月6日(木)25:05より、フジテレビ”ノイタミナ”ほかで放送。
Amazon Prime Videoで毎話フジテレビ放送開始1時間後より配信予定。
「バナナフィッシュ」虐待の傷は癒えないけれども「こういうものにもうお前は支配される必要はない」21話
「spoon.2Di」 vol.40表紙。原作をダイジェスト的に進めていながらも、ツボをしっかりおさえてくれた回。アクションシーン多めでハラハラ度高し

人間性が欠如した軍人


原作の15巻中盤から16巻をまるまる1話に詰め込んだ回なので、カットと圧縮量がものすごい。
しかし、アッシュの心の動きに焦点を絞りつつ、要所要所でアクションがきっちり描かれており、物語もきっちりまとめられているので見ごたえがある。

原作の16巻は「戦争」を描いていた。
フォックス大佐の部隊との戦いでは、アッシュ・シン・ケインらのギャング集団の立て籠もり組が戦闘訓練を行い、戦略を立てて大人たちに勝利しているほどだ。

この部分はアニメではまるまるカット。「戦争」ではなく、フォックス大佐部隊の「蹂躙」としての描写が強まった。
アサルトライフルを構えた兵隊の群れに対して、拳銃一本で戦うアッシュの姿。今までいくら百発百中の天才っぷりを見せてきても、さすがに今回は無謀にしか見えなくなっている。フォックス部隊がいたずらにギャングを嬲り殺したシーンはアニメでも残されており、冷酷さはきっちり描かれた。

今までアッシュと対峙していた、オーサーや月龍、そしてディノは、それぞれに確固たる意思を持った人間だった。卑怯かどうかも含め、それぞれに感情があった。
しかしフォックスは純然たる殺人鬼だ。
合法的に人を殺せるから傭兵しているような、すっきりするほどの悪役。武装力の点で極端に上回っている状態で、余裕すら見せながらねじ伏せてくる。

フォックスはTwitterなどの感想で、ものすごいヘイトを集めていた。と同時に「ブランカほど恐ろしく見えない」という意見がちらほら見られた。
ブランカはアッシュが「絶対勝てない」と感じている師匠。純粋に強いからなのもあるが、人間の器が大きすぎて、何をやっても見透かされてしまう感がある。
一方フォックスは、人間性が極端に欠如している。ゆえに、なんでもする厄介な相手だ。両者の「脅威」のベクトルは全く別だが、アッシュが苦手なのはブランカの方なのだろう。

アッシュの解放


アッシュとマックスが過去の少年売春・児童ポルノのデータを奪いに行くシーンは、かなり綿密に描かれていた。
特にアッシュが過去の恐怖を吐露するシーンでは、フラッシュバックした映像が追加されているほどだ。
アッシュ「お前たちはゲラゲラ笑いながら俺たちをレイプしたよな、あのときのシャッター音が今でも聞こえるんだ」
アッシュのトラウマは深い。
冷静な彼でも、そこを突かれるとあっという間に動揺してしまう。

マックスは彼の受けた性的虐待に対しての、理解者の1人だ。
以前アッシュが重要なデータを持ち出そうとした時、マックスは彼の心中を察して見逃し、仕事をクビになったほど。アッシュもそれに関しては、今回申し訳ない気持ちでいた様子を見せている。

マックス「もう忘れろ。いや、忘れられるもんならとっくにそうしてるよな。だったらもう思い出すな。こういうものにもうお前は支配される必要はないんだ」
アッシュが、自分が過去に撮影された性的虐待の写真を証拠に使えばいいと言った時、マックスは黙って燃やした。
アッシュが自分のポルノ写真を持っていたフロッグを殺そうとした時、止めたのもマックスだ。トラウマ絡みの怒りで人を殺しても、心の傷が深くなるだけなのを理解していたんだろう。
今回のラスト、人質に取られた時も、生命をかけてマックスはアッシュを救おうとしている。
マックスも、無償の愛でアッシュを受け止めている存在だ。


散々な目の繰り返しではあるが、ケイン、シン、マックス、そしてエイジなど、アッシュのことを信頼している人間はかなり増えてきた。ブランカのように苦しみを理解している人間もいる。アッシュはすでに、孤独ではない。
だからこそ、シンの苦しみが深くなってしまうのが辛い。アッシュの後を追いかける彼の心中が以降重要になるが、今までのシンの描かれ方がとても丁寧なので、期待したいところ。

(たまごまご)
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