12月8日(土)放送の、土曜ナイトドラマ『あなたには渡さない』(テレビ朝日系)第5話。
通子(木村佳乃)は、旬平(萩原聖人)と多衣(水野美紀)が半年も前に結婚していたことを知ってしまった。二人を信じたいと思い始めていた矢先の、裏切りの発覚。さらに、多衣を連れて行った薪能(たきぎのう)の会場で、通子は笠井(田中哲司)が彼の妻と歩いているのを見かける。通子に思いを寄せていることを告げ、妻とは離婚したと言っていた笠井。また隠しごとをされ除(の)け者にされていたことに、通子は怒りを感じていた。

いつまでも専業主婦で妹でお姫様だと扱われる疎外感
通子「私は鬼になっていた。この世で最も残酷で悲しい鬼に」
これまでものわかりの良い女を演じてきた通子が、ついに多衣に手をかけた。
通子「あなた、初めて会ったとき私に言ったわよね、鬼になるって。そして旬平を手に入れた。でもそれは、嘘に塗り固められた結婚。だから今度は私が鬼になって、あなたの身体を検(あらた)めるの。そうね、例えればここは関所ね。
薪能に影響を受けたのか、妙に芝居がかった台詞を口にし出す通子! 江戸時代の関所には、実際に「検め女」とか「検め婆」などと呼ばれる、女性を検査する専門官がいたそうだ。
通子は多衣の着物を脱がせる。このときも、帯を力いっぱい引っ張って「あ〜れ〜」とくるくる回るアレを、通子はやってのける。回転しながら畳に倒れ込む多衣のどうしちまったんだよ、通子さん。
「その肌は、透き通るように白く、絹のような光沢を放っていた」と、通子に言わしめた裸の多衣。通子は、多衣の裸に5,000万円の価値があると判断した。多衣を笠井と寝かせて、笠井から5,000万円をもらい、銀座に「花ずみ」の2号店を開きたいと考えていたのだ。
しかし、多衣は通子に貸し付ける6,000万円のために、すでに笠井と寝ていた。通子だけが何も知らず、笠井と自分の間には金銭のやり取りがない、きれいな関係だと思っていたのだった。
通子は、いまや「花ずみ」を立て直した敏腕経営者だ。こどもの頃からの後ろを振り向かない性格とともに、前に、前にと進もうとしている。
1話では、通子はまだ専業主婦だった。それも自分で選んだわけではなく、姑・キクと旬平によって、「花ずみ」について知ることを許されなかった専業主婦だ。
「花ずみ」を立て直しても、旬平や笠井は通子を対等なビジネスマンだとは認めていなかった。旬平は、社長である通子に「お前」とか「お袋に似てきたな」などと、まだ夫ぶるような言い方をすることがあった。笠井は、自分でも言っていたとおり、通子を妹やお姫様だと思っている。
多衣「私は、通子さんの夢を自分の夢に」
通子「結局あなたは、私から旬平さんだけでなく、笠井さんまで奪って行ったのね」
でも、思い起こせば、通子に「本当のこと」を教えてくれるのはいつも多衣だった。
旬平は「多衣とのことで、まだお前に話していないことがある」と言い、結局教えてはくれなかった。笠井は、多衣とのことがもう知れているのに「違うんだ」とか、自分の解釈を押しとおすばかり。隠しごとはするけれど、通子が乱暴でもまっすぐに向き合えばそれに応えてくれるのは、多衣だけだ。
通子も多衣も、きっとそのことに気づいている。喫茶店で、旬平と通子と多衣と3人の会社を作りましょう、と話している二人の仲の良さそうなことといったら。
多衣「あの晩、私たち喧嘩したんじゃなくて、手を繋いだんでしょ。金沢では絶対に繋げないと思っていた手を、やっと繋いだんでしょ。私はそう感じたけど。これも私の独りよがり? 泥棒猫の勝手な言い草?」
通子「私のほうも、手を繋ぐつもりがなければ、こんな話持ち出さなかったわ」
多衣「だったら、通子さんが社長になりなさい。私は、通子さんの夢を自分の夢にして『花ずみ』を手伝わせていただきます」
「花ずみ」でも、通子と多衣は仲の良さを見せつけた。「花ずみ」銀座店の板長を前田(柴俊夫)に、仲居を八重(荻野目慶子)に任せると決めた通子に、旬平は反対する。多衣は通子に加勢。立ちはだかる女二人に、逆らい続けられる旬平ではない。女子に結託されたときの、小学生男子のように拗ねる。
通子「旬平が、私たちの前から消えた」
「捜さないでくれ」という書き置きを残して、旬平はいなくなった。自分が通子も多衣も手放せなくてこうなったのに、なんて勝手なんだ。通子も多衣も、本当にこんな男が好きなのだろうか。
前から後ろから、青柳翔の不必要なシャワーシーン
一方、AbemaTVで配信中のスピンオフドラマ『あいつには渡さない』2話では、旬平がいなくなってから一年が過ぎていた。「花ずみ」は板前の矢場(青柳翔)に任され、多衣は銀座店で働いているようだ(金沢の造り酒屋の仕事はどうなっているんだろう)。
優しい多衣をイメージして、矢場は新作のかぶら蒸しを作った。多衣は、矢場に誕生日プレゼントのネックレスを渡す。ネックレスをつけてあげようと、矢場の耳元で言った多衣の「ちょっとかがんで」。「がん」の部分が鼻にかかった発音になっていて、やたらセクシー。
お礼に多衣の部屋の模様替えを手伝うため、矢場は初めて多衣の家を訪れる。矢場の股間に多衣がコーヒーをこぼし、拭いてあげようとしたところ矢場が変な声を出す。お約束だ! そして、水野美紀が「ストーリー的に全く必要性が無い」と言った矢場のシャワーシーンは、前から後ろから、結構じっくりと撮られていた。
旬平とのペアルック(あの青いスウェット!)、旬平とお揃いの歯ブラシ。一年も旬平を待ち続けている多衣の姿に、矢場はモヤモヤする。
矢場「多衣さん、もうあなたに寂しい思いはさせない。俺があなたを幸せにするから」
そう言って多衣を抱きしめたのは、矢場の妄想だった。しかし、今夜放送の6話では多衣の妊娠が発覚するようだ。父親は旬平か、笠井か、それとも矢場なのか。繋いだはずの通子の手は、多衣に振り払われてしまうのか。
(むらたえりか)
▽青柳翔・水野美紀によるスピンオフドラマ
・『あいつには渡さない』(AbemaTV)
▽本編配信サイト
・Amazonプライムビデオ
・AbemaTV
・U-NEXT
・dTV
土曜ナイトドラマ『あなたには渡さない』(テレビ朝日系)
2018年11月10日(土)より 毎週土曜23時15分から
原作 連城三紀彦「隠れ菊」(集英社文庫刊)
出演 木村佳乃、水野美紀、田中哲司、萩原聖人、青柳翔、井本彩花、山本直寛、荻野目慶子
ナレーション 菅原正志
脚本 龍居由佳里、福田卓郎
音楽 沢田完
主題歌 chay feat.Crystal Kay「あなたの知らない私たち」(ワーナーミュージック・ジャパン)
オープニングテーマ FAKY「Last Petal」(rhythm zone)
ゼネラルプロデューサー 黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー 川島誠史(テレビ朝日)、清水真由美(MMJ)
演出 植田尚、Yuki Saito
制作 テレビ朝日、MMJ