DEZERT 学び、闘い、そして希求した『study ♯6』

学び、闘い、そして希求する。今ここに来てのDEZERTが見せている姿勢は、まさにそれなのではなかろうか。
昨年に続いて今年も開催されたライブシリーズ『study』は、渋谷Mt.RAINIER HALL SHIBUYA PLEASURE PLEASUREを拠点としながら、DEZERTが1ヶ月の間に集中的なワンマンを行っていくもので、このたびは『study ♯5』から『study ♯8』まで続いていく4公演(つまり、昨年は『study ♯1』から『study ♯4』までが実施されたことになる)のうち、実質的には今年2本目のワンマンとなる『study ♯6』へと足を運んだ。

普段はZepp東京など、オールスタンディング形式の各地ライブハウスにおいてパフォーマンスをすることが多い彼らにとって、そもそもこの会場は全席指定のいわゆるホール仕様になっているところがまずはイレギュラーなところであり、公演ごとにアコースティックスタイルなどの実験的要素や異なる手法がとられるのもこの『study』を語るうえでは見逃せない点となる。  

今宵はいかなるDEZERTの姿を拝めるのかと臨んでみれば……通常なら開演時に鳴り響くはずのSEは流されないまま、ただひたすらに緊張感と静寂が漂う中、彼ら4人はおもむろに昨夏発表されたアルバム『TODAY』の表題曲「TODAY」を、いきなり聴衆へ向かって核心を突きつけるかのごとく奏で歌い始めることに。

DEZERT 学び、闘い、そして希求した『study ♯6』


年明けには先輩バンドMUCCとの対バンツアー『[MUCC/DEZERT[Is This The “FACT”?]TOUR 2019』で熾烈な連戦を繰り広げてきただけあって、ライブバンドとしての持ち味がますます濃厚になって来ているせいか、ここでの彼らはフロントマン千秋の説得力全開のヴォーカリゼイションといい、SORAの力強くエモーショナルなドラミングといい、Sacchanの巧みの技が冴えるフィンガリング5弦ベースといい、Miyakoのセンスフルかつ鮮やかなギターワークといい、全ての要素が渾然一体となり聴き手を深く呑み込んでゆくことになったのは言うまでもない。  

また、2曲目では昨年末あたりからライブで演奏をするようになった「新曲」をここでも披露したほか、全席指定制にも関わらず場内がスタンディング会場かのように激しく横モッシュで揺れた鉄板曲「大塚ヘッドロック」では、DEZERTの一面として絶対に不可欠なアグレッシヴで鋭いサウンドが場内を一気に大席巻。  

それでいて、6曲目の「「遭難」」ではベーシストSacchanが傍らにセッティングされたキーボードを用いることで、ピアノヴァージョンとして演奏してみせる一幕があり、ここではDEZERTの持つ“なにしろ根源的な部分で良質な音楽を追求している”ところが、わかりやすく提示されていたように感じられたのだった。

ライブ中盤ではシニカルで毒気たっぷりな内容でありながらどこまでもドキュメント性の高い「さぁミルクを飲みましょう。」と、DEZERTが十八番とするセンセーショナルな論法をもってヒトの奥底に横たわる赤裸々な欲望を暴き出す「脳姦少年」2曲が、やや久しぶりでオーディエンスに供されたことも特筆すべき部分だったと言えるはず。  

DEZERT 学び、闘い、そして希求した『study ♯6』

DEZERT 学び、闘い、そして希求した『study ♯6』


と同時に、こうしたエグいことを躊躇なく抉り出して見せるのもDEZERTのひとつの特色ではある反面、旋律と歌詞と音像のどれもにみずみずしい青春の幻影が映しだされる 「オレンジの詩」では、タイトルどおりの甘酸っぱさも堂々と放ってみせるあたり、やはりこのバンドは一筋縄ではいかない。  

しかも、彼らは別に多軸性のバンドであるというわけでもないのだ。むしろ、軸は1本でそこにブレは一切なく、DEZERTはただ純粋に、今その瞬間の自分たち自身に対して真摯でいたいバンドなのではないか、と筆者は感じている。  

思えば、この『study』というライブのタイトルともつながる楽曲「「教育」」には、以下の一節がすでに4~5年前に発売されたあの時点で織り込まれていたではないか。<「未来」よりも「今」を叫ばせて>と。
それは、のちに彼らが「TODAY」という名曲を生み出したこととも当然のように1本の軸で連動していると考えられる。

「じゃあ、最後に1曲。また“study”しましょう」  

いつもであればライブの中にメッセージ性の強いMCをそこそこの長尺ですることも多い千秋。しかし、この夜の彼が客に対して投げ掛けた直接的な言葉は随分と少なかった。きっと、言葉よりも音楽そのものにまずはアドバンテージを持たせるという試みを、ここでの彼はしていたのだろう。それだけに、最後に「オーディナリー」を歌いだす前に彼が発したこの一言は、ここからさらに『study ♯8』まで今回のライブシリーズが続いていくことを意味するだけではなく、DEZERTとDEZERTを支持し集う人々にとってこの学びが、いかに肝要なものであるかを物語っていたように思うのだ。  

DEZERT 学び、闘い、そして希求した『study ♯6』


来たる4月3日には『TODAY』以降初の音源となるシングル『血液がない!/Call of Rescue』を発表し、その後には4月から6月にかけ全国ホールツアー『血液がない!』が行われることも決定した今、それを目前にしたDEZERTが『study』の中でここからどれだけのことを学び、時には自らの葛藤と闘いながら、よりバンドとして希求していくことになるものとは何なのか。ここはぜひとも、飽くなき向上心をもって学習と習得を続けているDEZERTのリアルタイムな動向を、皆さまにもご自身の眼と耳と心と頭をフル稼働したうえで、しかとご確認いただきたい。
(取材・文/杉江由紀)


セットリスト


1. TODAY
2. 新曲
3.「軽蔑」
4. 大塚ヘッドロック
5. infection
6.「遭難」
7. さぁミルクを飲みましょう。
8.「擬死」
9. 脳姦少年
10. オレンジの詩
11.「教育」
12. doze.
13.「切断」
14.「ピクトグラムさん。」
15. オーディナリー

リリース情報


Double A Side Single
『血液がない! / Call of Rescue』
2019.04.03リリース

【血液盤(初回限定生産)】CD+DVD
DCCL-229 / ¥2,000(税抜)
※初回特典:DEZERT 2019 TOUR “血液がない!”ツアー案内状封入/“血液がない!”リリース記念プレミアムライブ優先先行申し込み券封入
[収録曲]
1. 血液がない!
2. Call of Rescue
3. Stranger
<DVD>
DVD 2019 01.30に行われた恵比寿LIQUIDROOM公演のライブ映像(4曲収録予定)

【レスキュー盤(初回限定生産)】CD+DVD
DCCL-231 / ¥2,000(税抜)
※初回特典:DEZERT 2019 TOUR “血液がない!”ツアー案内状封入/“血液がない!”リリース記念プレミアムライブ優先先行申し込み券封入
[収録曲]
1. 血液がない!
2. Call of Rescue
3. Stranger
<DVD>
Call of Rescue MV+血液がない MV+おまけ映像

【通常盤】CD
DCCL-233 / ¥1,200(税抜)
[収録曲]
1. 血液がない!
2. Call of Rescue
3. Stranger

ライブ情報


【DEZERT 2019 TOUR “血液がない!”】
2019年4月19日(金)日本橋三井ホール
2019年5月3日(金・祝)札幌サンプラザ
2019年5月6日(月・祝)新潟市音楽文化会館
2019年5月8日(水)仙台銀行ホール イズミティ21(小ホール)
2019年5月10日(金)名古屋市芸術創造センター
2019年5月11日(土)大阪エル・シアター
2019年6月1日(土)岡山 さん太ホール
2019年6月2日(日)福岡 都久志会館
2019年6月22日(土)日本橋三井ホール

【ダブルラリアット2019】
出演:DEZERT / アルルカン
2019年3月16日(土)名古屋 ダイアモンドホール
2019年3月17日(日)大阪 umeda TRAD
2019年3月28日(木)東京 新宿BLAZE

■DEZERT オフィシャルサイト
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