昨日、『ハケン占い師アタル』(テレビ朝日系)の9話が放送された。最終話だった。


8話のエンディングで、突如、アタル(杉咲花)は過労で倒れてしまった。占いをすると、彼女は相手の不安や苦しみ、健康状態を引き継いでしまうのだ。そうとは知らずこれまで何度も占ってもらっていたDチームの面々は、チーム内に“占い禁止令”を掲げた。

タイミングが悪い。ここに来てDチームのスタッフ全員は抱える問題が重くなってしまっている。神田和実(志田未来)と目黒円(間宮祥太朗)、上野誠治(小澤征悦)と田端友代(野波麻帆)のニューカップルは今後の付き合いについて、代々木匠(及川光博)と品川一真(志尊淳)は仕事について、そして大崎結(板谷由夏)は義母の介護問題について……。
まるで、1話に戻ったかのようである。悩みが解決しても、また別の悩みが生まれる。当然といえば当然の話なのだが。

Dチームは、アタルを当てにしたいけどできなくて苦しんでいる。一方、アタルはアタルでみんなの心の中が見えてしまう。占おうと思ってなくても察してしまうのだ。

杉咲花「ハケン占い師アタル」成長したアタルは派遣社員から「ハケン占い師」に最終回が誕生回
イラスト/Morimori no moRi

“自分にしかできないこと”に目覚めるアタル


Dチームは“豪雨災害で学校をなくした子どもたちのための卒業式”という趣旨のイベントを手掛けることになった。ところが、新しい復興支援というイベント内容に共感して主催するはずの建設会社は、趣旨を度外視した身勝手な要望を押し付けてくる。
まず、来賓の挨拶が長い。子どもたち相手に長々とゼネコンの話をしているおじさんは完全に趣旨そっちのけである。小学生の卒業式なのに、なぜ建設会社のお偉いさんと写真撮影しなければならないのか。

不満の募る子どもたちの心情をアタルは読み取る。やっぱり、占いを使わずにはいられなかった。
アタルは子どもたちを促し、今まで練習していた卒業式の呼びかけを行わせた。アタルのおかげで卒業式は感動的なものになり、イベントは何とか成功した。

満足げなDチームの中、アタル1人だけが落ち込んでいる。
「占いを使ったからです。もうしないって母に誓ったのに、子どもたちの気持ちが見えたらどうしても我慢できなくなって……」(アタル)

そんなアタルに、Dチームの面々は占いをすることを勧めた。
「やっぱり、アタルちゃんは占いでたくさんの人を救ってあげるべきよ」(大崎)
「誰も持ってない特別な能力があるのに、それを使わないのはやっぱり間違ってる」(上野)

母・キズナ(若村麻由美)に言われたことと同じことをDチームの仲間からも言われたアタルは、最後に全員を占うことにした。
前回はDチーム全員でアタルを占ったが、最終話はアタルが全員を占った。

これは、卒業式だ。卒業式イベントを手掛けたDチームが、今度は自分たちの卒業式に臨む。アタルからの卒業である。そして、アタルも“古い自分”から卒業する。だから、前みたいに高飛車な態度は取らない。

「占うとき、ずっと態度がでかかったのは、もうしないって誓ったのに破った自分に腹が立ったっていうか、皆さんに嫌われたほうが二度と占ってほしいって言われないかなって思ったからで……」(アタル)

上野はアタルに言った。
「占いはアタルの仕事だって考えたらどうかな? 例えば、通勤時間にテキパキ人をさばく駅の売店のおばちゃんとか、お客さんが欲しい物を必ず見つけてくれるデパートの店員さんとか。その道のエキスパートになるんだよ」

同僚がアタルに占いを勧める流れは、正直、あまりにもな急展開に思えた。でも、占いで人を幸せにできると知り、彼女自身が占いの意味に目覚めたのだから、これはこれでいい気がする。Dチームに入る前は占いをしたくなかったろうけど、新たな仕事として誇りを持てるようになった。アタルがDチームを卒業させただけではなく、アタルもDチームに成長させてもらっていた。

初回で、アタルは神田に「誰にでも自分にしかできないことが必ずある」と言った。やはり、占い師は自分を占えない。ブーメランとして返ってきているのだ。自分の良いところとやりたいことに、今度はアタルが気が付いた。

今回、アタルが捨てたのはサングラスだった。余計なものを見ないようにするための必需品である。それを手放すということは「見る」を選んだということ。サングラスと共に、アタルは占いへの嫌悪感と罪悪感も捨て去った。

「ハケン占い師」に転職するアタル


退社したアタルは、新しい職場を訪れた。ここの雰囲気がまた、どんよりと重い。

「皆さんを見ます。ハケン占い師アタルです」(アタル)
派遣社員というより、今度は占い師としてアタルは会社に訪れたようだ。

ドラマが始まる前、タイトルを見た時点で筆者は「占い師が色々な職場に出向き、社員を占う作品か?」と予想していた。最終話で、アタルは本当にそういう人になった。タイトル通り、アタルは「ハケン占い師」に“転職”した。つまり、このドラマは「ハケン占い師アタル」誕生までを描くストーリーだった。

1話ごとに1人を占って成長させ、最後は自分の身の振り方が決まるという流れ。特別、突飛なことをしているわけではないのに、目が離せず毎回刺さるドラマだった。居心地のいい作品の、居心地のいい最終話だったと思う。
(寺西ジャジューカ)

木曜ドラマ『ハケン占い師アタル』
脚本:遊川和彦
主題歌:JUJU「ミライ」(Sony Music Associated Records)
音楽:平井真美子
ゼネラルプロデューサー:黒田徹也(テレビ朝日)
プロデューサー:山田兼司(テレビ朝日)、山川秀樹(テレビ朝日)、太田雅晴(5年D組)、田上リサ(5年D組)
演出:遊川和彦、日暮謙(5年D組)、伊藤彰記(5年D組)
制作協力:5年D組
制作著作:テレビ朝日
※各話、放送後にビデオパスにて配信中