先週放送された5話の視聴率はストンと落ちて7.8%。せっかく上がったのに……うーん、まぁ、落ちたら落ちたでしょうがないじゃん!(川合くん風)。

志尊淳は「おそ松くん」?
「ロワン ディシー」が雑誌の名物コラムに取り上げられると根拠なく言い始めるオーナーの黒須仮名子(石原さとみ)。そういえばメモを取っている客がいたな……と、従業員一同が覆面記者の話題で盛り上がる。
ところが、覆面記者だと思った男、大岡山(竹中直人)は、再就職先を探していた一流ホテルのサービスマンだった。だが、就職依頼を取り下げるという。
「無礼を承知で申し上げますが、あまりに次元が低すぎる! お粗末だ!」
「特に、接客係の態度はお粗末以外の言葉が浮かばない」
ガツンと言われてしまった仮名子。大岡山の言葉を聞いて、「僕たち、おそ松くんってこと?」と笑うコミドランの川合太一(志尊淳)。問題意識も危機意識もゼロ。怒った仮名子は、シェフドランの伊賀観(福士蒼汰)に川合くんを特訓するよう命じる。
「川合くんは今のままじゃ、給料泥棒よ!」
かくして、伊賀による川合くんへの特訓が始まったのだが……。
今週の「生首演出」チェック
イノセントな笑顔がキュートな川合くんはどこまでも無能だった。特訓の成果は多少出たが、まだまだ「お粗末」と言われても仕方のないレベル。その上、映画の試写会で特訓をサボってしまう。
そこへやってきたのがサービスマン志望の笑顔がさわやかな青年、峰和彦(小関裕太)。川合くん不在の中、ソツなく楽しそうに仕事をこなしていく。
あっさり峰の採用を決定し、川合にクビを通告する仮名子。経営者としての判断は正しいと思う(バイトでも1週間前には通告しなければいけないんだけど)。
「川合くんの存在意義は、仕事とは別ではないかと」
「ここは仕事の場でしょ?」
しかし、仮名子は判断を伊賀に一任する。ソムリエの山縣(岸部一徳)と店長の堤(勝村政信)は伊賀のフォローをするけど、基本的には無責任(いつものこと)。さぁ、川合くんの運命はどうなる……?
今回の「生首演出」は1分過ぎ、14分過ぎ、14分過ぎ、19分過ぎ、20分過ぎ(「諦観」とのコンボ)、20分過ぎ、24分過ぎ、25分過ぎ、36分過ぎ、37分過ぎ、37分過ぎ、39分過ぎ、40分過ぎ(長い)、41分過ぎ、42分過ぎ。監督の木村ひさし氏から回数のノルマでも課されているのだろうか?
「生首演出」ともに目を引いたのがテロップ演出だった。「0.5人前」「令和の破壊王 川合太一」などなど。石原さとみの指の先に「Loin d'ici」という文字が出るというのもあった(それを勝村政信がモップで消す)。
さらに志尊淳と福士蒼汰のお面を被った男2人がプロレスをするという演出も。
ドラマのトレンドに逆行する川合くん
結局、川合くんの価値を心のどこかで認めている伊賀は、仮名子の「完璧なものばかりじゃ、つまらないでしょう?」という言葉にすがる形で峰くんの採用をやめて、川合くんのクビを回避する。
川合くんが何か手柄をあげて、みんなに存在理由が認められてからクビを回避するのではないというところがちょっと面白い(手柄をあげるのはクビの回避が決定してから)。そういう具体的なことではない、言葉で表せないような存在価値が彼にはあるということだろう。ただ、視聴者にはわかりにくい展開だったかもしれない。
このエピソードは二重の意味でストレスフルだった。一つは、無垢で可愛らしい川合くんが周囲から叱られ、立場を脅かされるというストレス。もう一つは、川合くん本人が明らかに無能で察しが悪い(つまり、コミュニケーション能力が著しく低い)というストレスである。
昨今のドラマはストレスフルな展開は禁物だ。事件モノなどでは仕方がないが(最後に解決するというフォーマットがあるので視聴者も耐えることができる)、普通のドラマではストレスフルな展開はなるべく避けられるようになった。
もう一つ、昨今のドラマではチートな主人公がトレンドである。チートとまで言わなくても、有能な人たちがチームを組んで、テキパキとトラブルを処理するストーリーが好まれる(視聴者にストレスを与えないから)。
そういう意味で、川合くんは逆チートともいえる人物である。川合くんの言葉に表せないような魅力を存分に発揮できればよかったのだが、生首演出やプロレス演出が幅をきかせているのでなかなかつらい。だから視聴率がストンと落ちてしまったのではないか、という読みである。チョイ役のゲストは豪華なんだけどねぇ……(真鍋かをりの出番は本当にあれだけなんだ)。
川合くんが無能なのはぜんぜんOKだから、上品でスマートなコメディーが見たいと思う今日この頃。6話は今夜10時から。
(大山くまお)
「Heaven? ~ご苦楽レストラン~」
出演:石原さとみ、福士蒼汰、志尊淳、勝村政信、段田安則、岸部一徳、舘ひろし
原作:佐々木倫子 『Heaven?』(ビッグスピリッツコミックス刊)
脚本: 吉田恵里香
音楽:井筒昭雄
主題歌:あいみょん 「真夏の夜の匂いがする」
演出:木村ひさし、松木彩、村尾嘉昭
プロデュース:瀬戸口克陽
製作著作:TBS