局の垣根を超えた「ニッポン芸能史」クイズ番組大特集に興奮「連想ゲーム」ガッツ石松伝説の真実をご報告
「井上マサキのテレビっ子からご報告があります」第10回。ライターでテレビっ子の井上マサキでございます。この連載は日々テレビを見ていて気になった細かいこと、今のアレってアレなんじゃないのと思ったことを、週報代わりにご報告できればと思っております。どうぞよろしくお願いします。

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「ペンギンも しもやけになる。○か×か?」(第12回アメリカ横断ウルトラクイズより)

9月4日放送『たけしのこれがホントのニッポン芸能史』(BSプレミアム)は「“クイズ番組”を大特集!」。
テレビ局の垣根を越え、往年のクイズ番組をこれでもかと振り返った。

出演者はビートたけしと所ジョージ。ゲストは川田裕美とつるの剛士、そして関口宏。もうこのメンバーだけで『世界まるごとHOWマッチ』『平成教育委員会』『マジカル頭脳パワー』『クイズ!ヘキサゴンII』『クイズ100人に聞きました』『わくわく動物ランド』だもの……! テレビっ子としてご報告しないわけにいかないじゃないですか。

往年のクイズ番組映像とガッツ石松


番組前半はクイズ番組の歴史を紐解きながら、往年の名司会者たちにインタビューを随所に挟んでいく構成。『アメリカ横断ウルトラクイズ』の製作にゼロから関わっていた福留功男は「影の支配者です」と笑い、『クイズ面白ゼミナール』の鈴木健二(御年90歳!)は「あのくらい下準備の時間と労力を費やした番組はありませんでした」と振り返る。

さらに番組は『アタック25』の収録現場に密着。細部にまでこだわった問題作りの裏側のみならず、谷原章介が挑戦者たちにパネルの取り方を教えてあげる場面まで押さえていた。

クイズ番組年表は90年代に入ってからだいぶ飛んでいたところもあったが、貴重な映像に瞳孔が開きっぱなし。なかでも個人的に「まさかこれが見れるとは」という映像が「ガッツ石松の『連想ゲーム』」

数あるガッツ伝説のなかに「ガッツ石松は『連想ゲーム』をしりとりだと思っていた」があるのだ。番組内でビートたけしもこれに触れ、「『夜光虫』って答えで、海→みかん、光る→ルビーってしりとりやってた(笑)」とスタジオを盛り上げていた。とはいえ、これまでその真意が確かめられることはなかった。


これを黙ってスルーするNHKではない。アーカイブをあたり、「残念ながらその映像は残っていなかった」としながらも、1989年5月31日放送のガッツ石松出演回を見せてくれたのだ……!

【答え:どじょう】
キャプテン加藤芳郎のヒント「うなぎ」
ガッツ石松「……うまい!」

【答え:亭主関白】
加藤芳郎「お茶!」
ガッツ石松「……飲みねえ!」

……確かにしりとりではない。しりとりではないのだけど、やっぱりルールは理解していなかった。ガッツ伝説がひとつ消え、またひとつ生まれた瞬間だった。

白熱の「クイズ!クイズ番組」


ここまでクイズ番組の「制作側」について振り返ってきたが、クイズにはやはり「解答者」が欠かせない。そこで、番組では一般参加者70名によるクイズ大会「クイズ!クイズ番組」を開催。彼らのクイズ番組愛を確かめ、勝ち抜いた上位2名をスタジオに招いて決勝戦を行った。

……いま「一般視聴者」と書いたばかりなのだけど、実は「一般」どころか「猛者」ばかり。大会の問題製作にはクイズ専門誌「QUIZ JAPAN」編集部が協力しており、参加募集も編集部公式Twitterを通じて実施していた。その結果、ガチの“クイズ屋”が大集合したのである。『99人の壁』グランドスラム達成、『アタック25』優勝者など、クイズ番組好きにはお馴染みの顔がたくさん参加していた。

(ちなみに筆者も『99人の壁』グランドスラム達成者だしテレビっ子だしで、すごく行きたかったけど収録が8月で帰省の真っ最中だったため断念……)

さて、この「クイズ!クイズ番組」。
その内容は「過去のクイズ番組で出題された名作問題」が出題されるクイズ大会というもの。出題範囲は15番組に及ぶ。
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「クイズ!クイズ番組」の出題クイズ番組一覧。史上最強からIQサプリまでカバーする振れ幅!オンエアではカットされた問題も現場で全部聞きたかった……!

番組を観たことある人は「あったあった!」と身もだえ、聞いたことがない人は新鮮に問題に向き合える。そしてテレビっ子にとってはご褒美のような企画だ。せっかくなので、オンエアされた主な問題をここに紹介しておこう。

「王貞治選手の血液型はO型である。○か×か」(アメリカ横断ウルトラクイズより。正解:○)
「西武球場を地球の真ん中に見て 月から写真を撮ると 1990年当時の国連加盟国159ヶ国のうち 半分以上の国を写すことができる。○か×か」(全国高等学校クイズ選手権より。正解:×)
「人差し指一本で“Y”を作って下さい」(IQサプリより。正解:指を曲げてシワでYを作る)
「いま何問目?」(タイムショックから)
「アマゾン川で……」(史上最強のクイズ王決定戦より。正解:ポロロッカ)

「アマゾン川で」は最後まで読むと「アマゾン川で年に一度 河口から上流に向かって流れが逆流する現象を何というでしょう?」なのだが、これをクイズ王・西村顕治さんが「アマゾン川で」だけで正解した伝説の問題。
なぜ正解したか聞かれ、「アマゾン川が」「アマゾン川の」など「アマゾン川」に続く助詞で答えが変わると当時言っていたはず。アラフォー以上のクイズ好きなら「アマゾン川で」と言われたら「ポロロッカ」である。

懐かしい映像と当事者の証言で「作る側」を振り返り、クイズ好きが集まるクイズ大会で「答える側」の情熱をあぶり出す。番組全編通して至福のひとときであった。いろんな記憶のフタが開いた。

ちなみに冒頭の「ペンギンも しもやけになる。○か×か?」。正解は「×」。取り急ぎご報告したいことは以上です。

(文と作図/井上マサキ タイトルデザイン/まつもとりえこ)
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