森田まさのり原作、劇団ひとり演出、間宮祥太朗主演の土曜ナイトドラマ「べしゃり暮らし」最終回。

全8話のうち、半分以上が主人公・上妻圭右(間宮祥太郎)&辻本潤(渡辺大知)以外の登場人物メインで進んでいくという、珍しい構成となっていた本作。


今回は、ようやく圭右たちメイン回! ……と思ったら最終回。

「アドリブすごい」は正しかったのか?


上妻圭右(間宮祥太郎)と辻本潤(渡辺大知)のコンビ「べしゃり暮らし」は「漫才新人グランプリ」に挑むが、先輩芸人「るのあーる」の妨害を受け、客席の女性に気を取られた辻本は圭右のアドリブについていけなくなってしまった。

圭右の初舞台である、文化祭での漫才コンテストに審査員として参加していた「るのあーる」。NMC(ニッポン漫才クラシック)1回戦では、大すべりした圭右をからかい、つかみ合いになっていた。

微妙に因縁があるようなないような関係ではあるものの、「るのあーる」がそんなに圭右たちを意識していたとは……。

普段は小学生ウケするようなあるあるネタをやっている「るのあーる」だが、今回の大会に向けて作り込んだネタを用意しており、台本通りキッチリとやっていた(1回戦から決勝まで、ずーっと同じネタでよく勝ち進めたなぁ)。

一方、「べしゃり暮らし」は台本に頼らないアドリブ漫才だからだからすごい! という対比を見せたかったのだとは思うけど、問題は、ここまでのエピソードで結局、アドリブがいいのか悪いのかという結論が出ていないということ。

そもそも、NMCの1回戦ではアドリブに頼り切った漫才で大すべりし、「漫才なめんなよ!」という話になっていたはずだ。

今回も、冒頭で養成所の講師から「お前らアドリブが全然まとまってないんだよなー」と注意を受けていた。

この「アドリブすげー!」理論、原作漫画では具体的に漫才の上手い下手を表現しづらいため、分かりやすく「すごさ」を表現するための「超人強度」的な要素だったんだと思われる。台本通りキッチリ演じるのを描いても盛り上がらないし。

しかしドラマ版では逆に、どこが台本でどこがアドリブなのか演じ分けてくれないと、何がどうすごいのか伝わらない。

いちいち観客から「これ、アドリブだよ!」とか言われないと分からないアドリブだったら、もっと他の「すごい」表現方法があったんじゃないだろうか。

最終回「べしゃり暮らし」原作感動エピソードを散りばめつつも消化不良のまま終了。ペース配分が残念だった
イラストと文/北村ヂン

とにかくペース配分が残念だった


圭右のお笑いスキルが単なる「学園の爆笑王」なのか、それとも天才的センスを持っているのか、その辺もハッキリしないまま最終回を迎えてしまった。

元・芸人として、コンビを引っ張ってきていたはずの辻本が、いつの間に、

「上妻と俺とやったら釣り合わへんのです。俺とおってもあいつに迷惑がかかるだけなんですわ……」

なんてことになってしまったのか。今回は「るのあーる」の妨害のせいで気が散ってただけじゃん……。

これまで、「ねずみ花火」だ「デジタルきんぎょ」だと、他の芸人のエピソードを取り上げてきたせいで、圭右たちのお笑いスキルがどんなもんなのか言及する時間がなくなってしまったとしか思えない。

おそらく劇団ひとりの演出意図としては、ひとりの天才を描くよりは、お笑い芸人を目指す圭右と辻本の目を通して、様々な芸人の生き様を描く「芸人ってみんな素晴らしい!」みたいな群像劇をやりたかったのだろう。

「べしゃり暮らし」最後のネタで、これまでの各芸人のエピソードを絡めたネタが披露されるという流れはキレイだったが、ネタを妨害したり、女を騙してキスをしたりしていた「るのあーる」が何の罰も受けず、辻本と元・相方の静代(小芝風花)恋もどうにもならず、意味ありげにずーっと圭右のそばにいた幼なじみ・奈々(堀田真由)も最後までただの観客扱いというのは色々と消化不良。

例のごとく、「ニップレス」が1回戦通過できたのは色仕掛けしたおかげ疑惑→(3分後)そんなことなかったでーす。「べしゃり暮らし」決勝進出ならず→(5分後)追加で合格できましたー……など、展開が早すぎて感情がついて行けない問題も。

原作漫画のいいエピソードを寄せ集め、いいドラマ感は漂っているものの、どうにもこうにもペース配分が間違っている、おしいドラマのまま終わってしまった。

これからの時代のコンパクトなドラマ作り


本作は全8話で最終回を迎えた。

昔は、1クール12話というのがドラマの基本だった(2クール24話放送するドラマも多かった)。それが、いつの間にか10話くらいが基本となり、最近では7〜8話で終わるドラマも目立ってきた。


視聴率的にコケた時のダメージを抑えるため、長いドラマがやりづらくなっているという事情もあるようだが、短いなら短いなりに、第1話からキッチリ伏線を張って、最終回で気持ちよく回収するなど、コンパクトなドラマ作りが求められていくだろう。

「べしゃり暮らし」終了後に、「おっさんずラブ」のシーズン2が告知されていたが、今後は短期の連ドラで様子を見ながら、調子が良ければシーズン2、シーズン3……と続けていくようなパターンが増えていくのかも知れない。

「べしゃり暮らし」もそのパターンを見据えて、圭右たちの高校時代編だけで全8話、みたいな構成でもよかったんじゃないだろうか!?
(イラストと文/北村ヂン)

【配信サイト】
Tver

「べしゃり暮らし」(テレビ朝日)
原作:森田まさのり「べしゃり暮らし」(集英社)
脚本:徳永富彦
演出:劇団ひとり
音楽:高見優、信澤宣明
撮影:小林元
オープニングテーマ:Creepy Nuts「板の上の魔物」
主題歌:B'z「きみとなら」
漫才監修:ヤマザキモータース、小林知之(火災報知器)
漫才協力:太田プロダクション
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:浜田壮瑛(テレビ朝日)、土田真通(東映)、高木敬太(東映)
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