
第11話あらすじ 桜庭家の居候になるLの一族
三雲華(深田恭子)は、橋元エミリ(岸井ゆきの)との結婚式最中の桜庭和馬(瀬戸康史)を奪い返した。隠れ家のタワーマンションで、尊(渡部篤郎)が和馬に事の経緯を話していると、エミリの祖父、英輔(浜田晃)が部下たちとともに踏み込んで来る。英輔は和馬に結婚式場へ戻るよう命令。そして、華たち“Lの一族”は拘束されてしまった。
結婚式場に和馬が戻されると、そこは報道陣で溢れていた。後ほど詳細を説明すると報道陣をチャペルの中へ誘導した和馬は、エミリと付き添っていた巻栄一(加藤諒)に控室で語りかけた。「犯人はあなたなんです」。
タワーマンションでは、Lの一族が英輔らに拘束されている。悦子(小沢真珠)は命乞いを始め、尊に英輔の過去について知っていることを全て話すよう懇願。尊はなぜ英輔が巌を殺害するに至ったか、その経緯を知っている限り話し出した。上司の不正を黙認することで異例のスピード出世を果たした、若き日の英輔。その不正を記録するノートをLの一族に盗まれてしまい、英輔はマツ(どんぐり)を襲撃。その60年後、マツを襲った襲撃犯を突き止めた巌(麿赤兒)は英輔を脅し、英輔の命を受けた栄一が巌を殺害した。
一方、式場では和馬が英輔の部下に捕まっており、駆けつけた華が敵を撃退した。また、尊やマツたちも英輔らに追われていたが、そこに和馬の祖父・和一(藤岡弘、)が現れ、巌と和一で英輔を成敗した。
その後、チャペルで落ち合った華と和馬は愛を確かめ合うようにキス。パトカーが着く前にその場を去った華は、渉(栗原類)が製作した「てんとう虫四号」に乗って飛び立ったが、空中で爆発。実はこれは自爆で、指名手配されているLの一族は死んだと周知させることが目的だった。パラシュートで脱出していた三雲家全員は桜庭家の居候となり、華と和馬は桜庭家で幸せな夫婦生活を送ることになった。
恋敵・エミリの贖罪
最終話で描かれたのは、三雲家(Lの一族)と桜庭家(警察一家)による60年越しの新展開。マツと和一では実らなかった恋が華と和馬で実るという、幸せな着地であった。
伏線が怒涛のように回収されていく。上級国民とも言うべき英輔は、自らの口で次々に真相を明かしていった。英輔を演じる浜田晃は名悪役だ。
悪行の告白もさることながら、英輔が吐いた孫への罵詈雑言は至極不快だった。栄一が不憫だ。
「愚か者めが。お前にはもう、何も期待はせん! 二度とわしの前に顔を見せるな!」
ずっと無能扱いされ続け、ようやく頼りにされたら嬉しくなってしまい、逡巡の末に悪事に加担した栄一。その境遇を知ると、彼への同情は禁じ得ない。
そして、エミリだ。彼女は真相を突き止めた和馬を見逃さず、最後まで英輔に従い続けた。
エミリ 「やめてください。私は全て、おじいさまの指示に従っていただけです。あなたのことなど、初めから愛していませんでした……」
和馬 「ありがとうございます」
エミリの言葉は明らかに嘘で、嘘に気付いているから和馬は「ありがとう」と言ったのだ。元はただの指示でも、いつしか本当に和馬を好きになり、なのに英輔の支配から逃げられなかったエミリ。彼女なりの贖罪として「愛してなかった」と嘘をつき、華の元に向かう和馬の背を押した。孫2人の人生を狂わせた英輔は、まさしくラスボスだった。
ドラマ版『ルパンの娘』が生んだ傑作・円城寺輝
切なかったのはエミリだけじゃない。原作小説には登場しない円城寺輝(大貫勇輔)の存在は、ドラマ版『ルパンの娘』が生んだ傑作である。
毎回、同じメロディに乗せる歌詞はそのときの彼の心情を的確に表していた。11話で円城寺は叶わなかった華への想いを口にし、同時に歌って踊るだけで敵全員を撃退している。
「生まれ変わったら 華の心を 僕だけの愛で埋めてみたいよ」
今回の歌には、敵の「なんだ、お前」「何歌ってんだ!」という真っ当なツッコミが歌詞に入れ込まれた。明らかに笑いどころなのに、切ない。
もう1人の頼れる助っ人、和一がバイクに乗って現れたシーンはオマージュである。完全に仮面ライダー1号を意識している。登場時には、敵から「ヒィーッ!」というショッカーみたいな声が上がってたし。60年ぶりに和一を見たマツが乙女になり、ウルウルとときめいているのも泣ける。夫・巌の前で、彼女は初恋の相手と再会したのだ。
「あの日以来やな。こんな顔になってしもうたわ」(マツ)
ギャグドラマとばかり思っていたのに感動的。美しすぎる三角関係がここにあった。
長いキスは『神様、もう少しだけ』をオマージュ?
『ルパンの娘』は今まで、数々の映画、ドラマをオマージュしてきた。
チャペルで落ち合った華と和馬は唇を交わした。……長いのだ、2人のキスが。
和馬と別れた華は、家族とともに空を飛んだ。Lの一族はどこへ行ったのか? 何のことはない、和馬の家である。上空で死んだと見せかけて『アルマゲドン』ばりに脱出し、桜庭家に居付くという誰も予想しなかったエンディング。家族全員が和馬の元に身を寄せるなんて、これこそ大団円だ。全ての問題が解決した、いいラストだったと思う。
最後までブレることのなかった『ルパンの娘』。最終回が面白いからこその多幸感が間違いなくある。
(寺西ジャジューカ)

『ルパンの娘』
原作:『ルパンの娘』横関大(講談社文庫刊)
脚本:徳永友一
音楽:Face 2 fake
主題歌:サカナクション『モス』(NF Records / Victor Entertainment)
プロデュース:稲葉直人、荒井俊雄
演出:武内英樹、品田俊介、洞功二
制作・著作:フジテレビ第一制作室
※各話、放送後にFODにて配信中