「サウナを信じるな」

原田泰造主演、サウナ好きによるサウナ好きのドラマ25テレビ東京のドラマ25「サ道」(テレビ東京)がいよいよラストスパートを仕掛けてきた。「ととのう」とは何か? 「サウナを信じるな」とはどういう意味なのか? 「サ道」の根源的な部分を問いかけてきたのだ。


サウナーのナカタ(原田泰造)は突然、サウナでととのえなくなってしまった。自分をサウナに導いた師・蒸しZ(宅麻伸)と出会うことができれば再びととのえるのではないかと考えたナカタは、偶然さん(三宅弘城)が蒸しZを見かけたという西のサウナの聖地・熊本の「湯らっくす」へと旅立つ。

そもそも「ととのう」とは何なのか? あらためておさらいしておこう。「サ道」の原作者・タナカカツキが提唱しているのは、温冷交代浴だ。全国のサウナに貼られている、タナカが描いた「正しいサウナの入り方」ポスターには、「サウナ→水風呂→小休憩」を繰り返し、最後に「大きく休憩」で「ととのった~」となる。だが、ここでは「ととのう」については説明されていない。
サウナー必見「サ道」あらためて問う「ととのう」とは?別にととのわなくてもいいんじゃないか?今夜最終回

「マンガ サ道」1巻には、「じーんと身体がしびれてきて ディープリラックスの状態がやってくる」「血液が身体中を駆け巡り、脳に酸素がゆきわたる」「やがて多幸感…」「サウナトランス」「ととのったぁあああああ」と説明されていた。サウナーの「濡れ頭巾ちゃん」が2011年頃に使ったのが発祥だとも言われている。
サウナー必見「サ道」あらためて問う「ととのう」とは?別にととのわなくてもいいんじゃないか?今夜最終回

筆者もサウナが好きだが、実はうまく説明できない。サウナと水風呂と小休憩のセットを繰り返していると、「ぐわぁぁぁん」という目眩のような感覚とともに、たまらなく気持ちよくなってくる。「あ、これが『ととのった』というやつかな……」と思ったりするのだが、他の人がどうなのかはわからない。

先日、筆者の知人(同業の大先輩)がSNSに「サウナに入ったときの感想で使う『ととのう』って、なんか引っ掛かります」と投稿していた。
コメント欄では「『気持ちよかった』ではいけないのか」「なぞかけか」などのやりとりが行われていた。まぁ、たしかにこれを口で説明するのは難しい。新しい言葉をイキって使ってるんだろ? と穿ちたくなる気持ちもわかる。

名門サウナでもととのえない!


ナカタは熊本で「湯らっくす」のサウナと水風呂を堪能する。工夫が凝らされたサウナ、飲むこともできる天然水に日本一の水深(171センチ)を誇る水風呂。そして、とどめは「MAD MAX」ボタン。これを押すと、頭上から滝のような水が落ちてくるのだ。タナカカツキは「湯らっくす」のサイトの情報を見ただけで、ととのってしまったそう。

当然、ナカタもととのうはず……と思ったら、ととのえない! 西の聖地とまで言われるサウナを実名で出しておいて、「ととのえない」とはなかなか勇気のある決断だったと思う。「孤独のグルメ」で実在する名店に行ったけど、「おいしくなかった」と五郎さんがこぼすようなものである。「湯らっくす」側のビッグハートにも感心した。ちなみに、ととのわなかったときの悲しい音楽は、音楽担当のとくさしけんごによると、これまで「ととのったー」のときに流れていた曲の音符を鏡に写したものを奏でたのだという。


しかし、あらためて「サ道」を観ていると、そんなにととのわなくてもいいんじゃないか、という気にもなってくる。ととのえなくなってしまったナカタは、ちっともサウナが楽しそうじゃない。そもそも、昭和の時代からサウナに入り浸っていたおっさんたちは、ととのったりしていなかった。

もっとサウナは自由に楽しんでいいのではないか? いや、「サ道」以降のサウナーはととのってナンボなんだろうか? 視聴者が混乱しはじめたとき、ついに蒸しZが再び姿を現わす!

「人は皆、サウナの前に平等だ。サウナを信じるな。サウナを信じるな」

何を言い始めたんだ、このおっさんは。果たして、「サ道」が最終回で導く結論とは? 今夜0時52分から。
(大山くまお)

ドラマ25「サ道」
原作:タナカカツキ「マンガ サ道~マンガで読むサウナ道~」
監督:長島翔
脚本:根本ノンジ、竹村武司、永井ふわふわ
音楽:とくさしけんご
出演:原田泰造、三宅弘城、磯村勇斗、荒井敦史、宅麻伸
主題歌:Cornelius「サウナ好きすぎ」
エンディングテーマ:Tempalay「そなちね」
プロデューサー:五箇公貴 ほか
制作:テレビ東京、イースト・エンタテインメント
※放送後にTVerで配信中
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