「スカーレット」10話「ええなぁ」「ええなぁ」子役が良すぎてもう少し見たかったけど戸田恵梨香にも期待
連続テレビ小説「スカーレット」10話。木俣冬の連続朝ドラレビューでエキレビ!毎日追いかけます

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連続テレビ小説「スカーレット」 
◯NHK総合 月~土 朝8時~、再放送 午後0時45分~
◯BSプレミアム 月~土 あさ7時30分~ 再放送 午後11時30分~
◯1週間まとめ放送 土曜9時30分~
「スカーレット」10話「ええなぁ」「ええなぁ」子役が良すぎてもう少し見たかったけど戸田恵梨香にも期待

『連続テレビ小説 スカーレット Part1 (1)』 (NHKドラマ・ガイド)

第2週「意地と誇りの旅立ち」10回(10月10日・木 放送 演出・中島由貴)


10回のラストに、15歳になった喜美子が自転車で坂を疾走というか重力に従って勢いよく下っていく。
戸田恵梨香、いよいよ登板である。
待ちに待った瞬間だったが、こんなにも川島夕空演じる喜美子が退場することが惜しくなるとは、ドラマがはじまったとき思いもよらず動揺している。

「なつぞら」でもなつの幼少時を演じた粟野咲莉が愛おしかったが、川島夕空ほどではなかった。というのは、粟野は、草刈正雄とのコンビプレーがよかったのと、あくまで、草刈演じるおじいさんをはじめ、北海道の大地や酪農の魅力を活かす存在だった。ところが川島は、すでに喜美子として主体的に生きていた。
川島家の家事もやっているし、父親の意地を理解してしまうし、女の意地も知ってしまう、そして女友達との濃厚な情をキスという形で交わしてしまった。わずか10回の間で、こんなにもしっかり役を作りあげた川島夕空への花道か、水橋文美江はとてもいいエピソードを贈る。

赤い手袋が手に入った


「赤い手袋」(ミトン)だ。
父・常治(北村一輝)が手に入れてきたものの借金問題で手放さざるを得なくなり、引き取った大野(マギー)がわざと道端に落として、喜美子に拾わせようと計画したものの、警官に拾われてしまった「赤い手袋」。
結局、大野が警官に話したらしく、落とし主がくれたと喜美子のもとへとやって来た。
警官と喜美子のやりとりを大野が隠れて祈るように見つめている姿もほのぼの。

直子(やくわなつみ)と喜美子は「ええなぁ」と大喜び。
「ええなぁ」が何度も繰り返されると、顔がほころんでしまう。
これ、「べっぴんさん」の大急の小山が「うわ〜となる」ものを作ってと言っていたとき(69回)を思い出した。
「うわあ」とか「ええなぁ」とか喜びの声というのは気持ちのいいものだ。


子供たちが、「ええなぁ」と赤いミトンに顔を埋めているのを見ると、このまま、子供時代をもう少しやったら違う話になってしまいそうだが、それでもいい気がしてしまった。朝ドラも大河も子役時代は本編感に欠け視聴意欲が沸かない人もいるというので、早めに終わる傾向があるが、いま、これだけしっかりした子役がいるのだから、子役が主体のドラマがあってもいいのではないか。さすがに大河でそれは難しいと思うが、朝ドラでは女の一代記にこだわらず、「マルモのおきて」のような子供が主役のドラマを考えても良い気がしないでもない。まあ半年は長いかな。

ところで照子はどうしたか


赤い手袋をもらって喜んだあと、喜美子が照子のことを心配する。
「照ちゃんも手袋ちゃんとしてるやろうか」という心配の仕方にきゅんとなる。
そのあと、冬休みに入って近所のひとり暮らしのおばあさんの洗濯をするバイトをしているとナレーションが語られるので、照子がみつからないまま何日か経過するというヘヴィな話になったかと思ったが、同じ日らしい。
おばあさんから人さらいにあうとどうなるか、じつにおそろしい話が語られ、心配でたまらなくなった喜美子が神社にお参りに行く。
そこでまた水橋先生の料理上手さが発揮され赤い手袋が機能する。大根の葉っぱまでしっかり使い切る。

大事な手袋を神社に忘れてとりに戻ったところで、照子が怪しい男に追われているところを目撃、さっそく習ったばかりの柔道で助けようとするが、丸熊陶業の陶工だった。家出した照子を迎えにきたのだ。照子の家出の理由は不明。
ほんとうの人さらいも捕まった。そのニュースを聞くということでラジオもそこで役に立つ。慶乃川(村上ショージ)が引退して草津に行くという話で「草津」も回収された。なくても困らないがあっても困らない。無駄がない仕事とはこういうことだろう。

喜美子はしっかり者として描かれてはいるが、人さらいのことをよくわかっていなくて、神社でお参りするとき、
「照ちゃんがはようみつかりますように」「(足で三味線が)うまく弾けますように」と祈るのがなんとも微笑ましい。

照子の母役・未知やすえと喜美子の母・富田靖子が子役相手だとやや若いおばあちゃんみたいに見えるのだが、戸田恵梨香と大島優子の母としてならちょうどいいのだろう。富田靖子は産後の肥立ちが悪くて不健康な感じがよく出ている。
さあ、いよいよ戸田恵梨香のターン!  辻のたぬきまで大きくなっていた。
(木俣冬 タイトルデザイン/まつもとりえこ)

登場人物のまとめ


川原喜美子…戸田恵梨香 幼少期 川島夕空  主人公。空襲のとき妹の手を離してトラウマにしてしまったことを引きずっている。 漢字が読めなかったが、勉強してすぐ読めるようになった。
絵がうまい。
川原常治…北村一輝 戦争や商売の失敗で何もかも失い、大阪から信楽にやってきた。気のいい家長だが、酒好きで、借金もある。にもかかわらず人助けをしてしまうお人好し。丸熊陶業で働く。
川原マツ…富田靖子 地主の娘だったがなぜか常治と結婚。体が弱いらしく家事を喜美子の手伝いに頼っている。あまり子供の教育に熱心には見えない。
川原直子…桜庭ななみ 幼少期 やくわなつみ 川原家次女 空襲でこわい目にあってPTSDに苦しんでいる。それを理由にわがまま放題。
川原百合子…福田麻由子 昭和22年時、まだ赤ちゃん
熊谷照子…大島優子 幼少期 横溝菜帆 信楽の大きな窯元の娘。「友達になってあげてもいい」が口癖で喜美子にやたら構う。
兄が学徒動員で戦死している。
熊谷秀男…阪田マサノブ  信楽で最も大きな「丸熊陶業」の社長。
熊谷和歌子… 未知やすえ 照子の母
大野信作…林遣都 幼少期 中村謙心 喜美子の同級生 体が弱い。
大野忠信…マギー 大野雑貨店の店主。信作の父。戦争時、常治に助けられてその恩返しに、信楽に川原一家を呼んでなにかと世話する。
大野陽子…財前直見 信作の母。川原一家に目をかける。
慶乃川善…村上ショージ 丸熊陶業の陶工。陶芸家を目指していたが諦めて引退する。喜美子に作品を
「ゴミ」扱いされる。
草間宗一郎…佐藤隆太 大阪の闇市で常治に拾われる謎の旅人。
医者の見立てでは「心に栄養が足りない」。戦時中は満州にいてそこで何かあったらしい。喜美子の良いところと悪いところを指摘して影響を与えながら、ふらりと信楽を出ていってしまう。

工藤…福田転球  大阪から来た借金取り。  幼い子どもがいる。
本木…武蔵 大阪から来た借金取り。


脚本:水橋文美江
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
音楽:冬野ユミ
キャスト: 戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、佐藤隆太、大島優子、林 遣都、財前直見、水野美紀、溝端淳平ほか
語り:中條誠子アナウンサー
主題歌:Superfly「フレア」
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