
2009年より少女漫画雑誌「花とゆめ」で連載がはじまるや、たちまち人気となった「暁のヨナ」。2014年のテレビアニメ化に続き舞台化もされ、その人気は止まることを知らない。
あれから1年、再び皇女・ヨナ(生駒)と専属護衛官・ハク(矢部)が、続編舞台「暁のヨナ~烽火の祈り編~」で再び冒険へと旅立つ。主演の2人に加え、ヨナの従弟で父殺しの宿敵・スウォンを演じる陳内将が、舞台へかける思いを和やかなムードの中で熱く語り合った。
編集/田上知枝(エキサイトニュース編集部)
壁にぶつかることが「楽しいな」と今は思えている(生駒)

――「暁のヨナ ~緋色の宿命編~」に続き、「暁のヨナ~烽火の祈り編~」が上演されますね。
生駒里奈(以下、生駒):つい先日、初めて通し稽古をしたのですが、昨年よりも現段階でいろいろと見えているなと感じます。今作は続編でもあるので、どんどんいいものを作ろうと一丸となって挑んでいるし、時間もまだあるので、これからさらに良くしていけると思っています。
矢部昌暉(以下、矢部):同じ続編で同じ役柄をやらせていただくことは光栄だし、僕自身は初めてのことです。だからこそ、前回よりもパワーアップしたものを魅せたいと気合が入りますね。同じ役で続編となると、役としても自分自身の成長も分かりやすく伝わるのかなと思うので。
――前回、初めて殺陣に挑戦されたとか。今回の手ごたえは?
矢部:2度目ですが、やっぱり僕の扱う「大刀」は難しいです。ハクは強い役なので、余裕があるように見せなきゃいけない。
陳内将(以下、陳内):本当に重いもん、あれ。
生駒:うん、重いね。
矢部:そうなんです。もうちょっと軽くしてほしいなって心の声が聞こえます(笑)。
陳内:前回より通し稽古を早い段階でやれてよかったなと思いますね。早い分、細かな作り込みはまだですが、全員で共有できたことは大きい。先ほど生駒ちゃんが言っていたように「より良くしたいな」という気持ちが全員に強く芽生えたことは今回の強みになると思います。ただ、僕個人としては2人で共演できるシーンがほとんどなくて……。

生駒:今、やっと一緒にいられるって感じ(笑)。
陳内:ほんと、寂しいんですよ。どっちかがお客さんみたいな立場で観ることになるから。
全員:爆笑
――前作と比べ、演じるにあたっての心構えや意識に変化はありますか?
生駒:前回はヨナという役を通して、声の使い方を勉強したり、殺陣をやったり、自分的に難しいことに挑んだことで経験値が一気に上がったなと思っています。だから、(今回は)少し余裕が持てるのかなって。壁にぶつかることは人間、何かしら生きていてあるけど、それが「楽しいな」と今は思えています。
矢部:僕は、前回の「ヨナ」に出させていただいたとき、芝居そのものの経験もそんなになくて。演出の大関真さんにビシビシと鍛えていただきました。「ヨナ」を皮切りにいろんな舞台に立たせていただけるようになったので、そういう意味でだいぶ変わりましたね。
生駒:まーくん……矢部くんを「まーくん」と呼ばせてもらっていますが、前回より確実に余裕があるなって思います。私もですが前回は、殺陣とか“ひーひー”言ってた(笑)。
矢部:言ってたね(笑)。
生駒:まーくんはすごく真面目なぶんいろいろ考えて追い込んで、自分のなかで爆発させちゃう。だから前回はすごく苦しそうだなって思ったけど、今回はそんなことないのかなって。

矢部:前回は正直、何が何だか分からない中でやってたし、思いっきり僕の中で爆発していましたね。今回も大変ですが、今回は「こうしたらいいんじゃないか」というのは自分の中にあって。爆発させてるけど、まだ今回のほうが対応できている気がします。
陳内:1年前、昌暉の頭に「?」マークがいっぱいある姿も知ってるから、演出家の方からの指示などに「はい、分かりました」ってすぐに応えているのを見て、1年でこんなに成長するんだと驚きますね。僕としては、今回新たに加わるキャストもいるので、スウォンとしてどう作品に関わればいいだろうかと頭を悩ませる部分もあります。
また、前回はストーリーを全うすれば見えてくるスウォンの真の姿があったと思うのですが、今回は心と裏腹な表情、セリフを言うことも。そのまま言ってはいけないし、作りすぎても作品としてバランスが崩れるのが難しい。それによって、役者として成長できる機会なのでありがたいなと思いますね。
矢部にとって、ちゃんじん(陳内)は芝居の師匠
――前作では原作の1~7巻までを描き、今作では8~13巻までの物語になると伺いました。闘うシーンから幼少期まで幅広く描かれている本作で、見どころはどこになりますか?
生駒:基本的に全て、と言いたいです。今回は、ヨナが一段階成長している物語だと思います。「強くなきゃいけない」というのが根底にありつつ、ヨナ1人では強さは足りないし、どうやったらみんなの心を動かせるのか……そういうところを深めたいですね。
矢部:前回は「強くてカッコいいハク」のイメージ通り、ほぼほぼ戦ってばかりでした。今回は戦うシーンもあるんですが、ヨナに対する思いや、スウォンへの現在、そして過去の思いも描かれています。身分を隠して行動するシーンでは、ハクの少し面白いところも見られるのかなと。より人間らしい、人間味のあるハクを表現できると思うので、ハクの感情をより詰めていって表現したいです。

陳内:僕から言える最大の見どころは、「矢部昌暉がアフターライブをやる」ことでしょうね。
矢部:そこですか!(笑)
生駒:私も思った、「歌うの!?」って。超楽しみ。
陳内:僕も一緒に出たいくらいだよ(笑)。
矢部:出てくださいよ~。
生駒:スウォンの見どころは?
陣内:ギャップをお見せできるかなと思っています。威厳のある王という一面と、そうではない一面とをうまく表現できたらいいなと思いますね。「こいつに殺されるんじゃないか」というくらいの凄みと、ぽわんとした天然のような部分とのギャップを。
――ちなみに、お二人ともかなりの人見知りかと思いますが、克服できましたか?
生駒:はい。距離感は前回と全然違いますね。1年で克服しました(笑)。
矢部:前回の「ヨナ」が終わってから、いこちゃん(生駒)……と呼ばせていただいているんですが、いこちゃんが出演する舞台を見せていただいたりもしたので、慣れるのが早かったのかなと。
生駒:たいていは慣れるのに1年くらいかかります。陳内さんも慣れました(笑)。
陳内:(笑)
矢部:ただ、今回から新しく加わられた方々に対しては、いまだ人見知りを発揮しています(苦笑)。
生駒:まだ?
矢部:通し稽古でやっと、ユウノちゃん役の本西彩希帆さんと初めて話しました。
生駒:頑張って、「まーくん」って声かけたみたいです。

――それぞれをニックネームで呼び合っているのですね?
矢部:はい。陳内さんのことは、「ちゃんじん」と呼ばせてもらっています(笑)。
陳内:僕からは「まちゃ」「まちゃき」かな。生駒さんのことは、「いこちゃん」「いこたん」。舞台や稽古中は「ヨナ」とか、役名で呼ぶことも多いですね。いこちゃんは、今回はより座長らしく、カッコよくなったと感じます。ヨナという面では変わらない部分を表現もしつつ、座長としては支えなきゃ、引っ張らなきゃという意識の大きな変化がある。前回はいこちゃんの周りはお兄さん俳優が多かったんですが、今回は弟を率いてる感じだよね。
生駒:はい。今回のヨナ一行では私が一番年上。自分の弟とまーくんが同い年で、他の子たちはそれよりも下だから、ただただかわいいだけ(笑)。稽古中、M!LK(DISH//の後輩グループ)から参加している3人を私は勝手に 「M!LKボーイたち」と呼んでいるんですが(笑)、「お手本となるから、陳内さんをよく見てね」ということが多いです。声の出し方や立ち振る舞いなど、女性の私より参考になることが多いと思うので。演技についてはそれぞれが自分なりに考えて作るので、ぎりぎりまで待って、それから先輩方から教えていただいたことを伝えています。
矢部:役で僕らは幼馴染ですが、役から外れると陳内さんは役者として先輩で、年齢的にもお兄さん。ヨナは年下で守っていかなきゃいけない存在だけど、いこちゃんは実際にはお姉さん。その関係性が、面白いなって勝手に思いながら演じてますね。僕にとって、ちゃんじんは芝居の師匠なので、今回も「この人の芝居、えげつないな」って思いながら見てますし、尊敬しています。
陳内:師匠なんておこがましい。仲間、同志ですよ。

矢部:そう言ってもらえてうれしいです! でも、本読みで後輩たちが僕の隣に座っていたんですけど、向かいに座っていたちゃんじんがしゃべりはじめた瞬間、「カッケー!」の嵐でした。やっぱ、師匠はすごいなと。
生駒:稽古中もM!LKボーイたちが「カッコいい」を連発してたよ。
陳内:こんなに褒められて、もしかしたら明日死ぬのでは……。
生駒:(笑)。千秋楽までは死なないでくださいね。
陳内:その後はいいんだ?(笑)
全員:爆笑
――稽古の後などに、ご飯に行くことはありますか?
陳内:僕はお酒が好きなんですが、まちゃはお酒を飲まないので誘いづらい(笑)。今回は特に、絡むシーンもなく稽古が終わる時間も違うので行く機会がなかなかないのが残念です。寿里君や瀬戸祐介君、山田ジェームス武君とかは終わりの時間も一緒で、みんなお酒も好きなので、よくご飯に行きますね。
生駒:私はお酒を飲まないんですが、ご飯に一緒に行くことはあります。途中で眠くなっちゃうんですが(笑)、寂しくて帰りたくなくなるんですよ。
陳内:すごいね。しらふだったら僕ならすぐに寝ちゃうと思う。
生駒:演劇についての談義になることも多いので、参加はしないけど聞いてたいし、学びにもなる。面白いなって思いながら、ずっと聞いてます。
陳内:たしかによく芝居の話になるよね、アツくなる。
本番では何かブッこもうかと密かに思ってます(生駒)

――皆さん、心身ともにどっぷりと作品の世界観にのめり込むことも多いかと思いますが、気分転換や頭の切り替え法は?
陳内:ゲームですね。
矢部:たしかに、休憩中ずっとやってますよね。「いつお芝居のことを考えるのかな」って不思議なくらい。僕は、休憩中も台本や役のことを考えてないと、「うわー!」ってなるから、「ちゃんじん、すっげーな」って。
陳内:(頭のスイッチを)オフにしたいんだよ。
生駒:なるほど~。
矢部:前回は「モンスト」を勧められてやり始めて、今回は「ドラクエウォーク(ドラゴンクエストウォーク)」を勧められて、僕もやってます(笑)。
陳内:お薦めすると必ずやってくれるよね。でも、途中で飽きてやめちゃう(笑)。かつて、僕も壁にぶち当たったとき、切り替えが難しくて空回りしていたことがあったんです。落ちるところまで落ちて、いいアイデアが1つも出ないとか、苦しい時期もありました。追いつめられて「ああどうしよう」ってときに、ふと、ゲームしたらいいんじゃないかなと。いっそのこと別のことをしてみたんですよ。固定観念ってなかなか捨てられないと思うけど、(僕にとっては)ゲームが助けになってるかな。
矢部:そうなんですね。僕は、風呂に入って髪を洗っている最中も、ふとセリフをしゃべったりしてるんですよ。それくらい、のめり込んでしまって……。
陳内:それじゃ、口に泡が入っちゃうよ。
全員:爆笑

生駒:私も少し前までそうだったけど、やめました。家では何もしないようになった。文字通りの「無」。天井見上げて、なんもしない(笑)。
矢部:すごいなぁ……。今、舞台稽古と並行してDISH//のツアーリハーサルもやっていて、それによって自然に切り替えができている部分はあります。例えば芝居でちょっと行き詰まっていてもメンバーに会うとリフレッシュできますし、その逆もあります。片方の悩みを、もう一方の仲間と他愛もない話をしているときに突破するヒントが見つかったりするんです。すごくありがたい環境にいるなと思いますね。
――音楽活動での歌や踊りの経験が、お芝居に生かされることはありますか?
生駒:私は、基本的にないです。見る「目線」も全然違いますし、出す形も全然違うので別ものですね。
矢部:僕は、どっちも“ライブ”、生という感じは僕自身の感覚では近いと思っていて。お客さんから伝わる熱量とか、演者同士の熱の交感は近いと思うし、「生」の醍醐味かなと思います。


――では、最後に読者の皆様へメッセージをお願いいたします。
生駒:続編ということもあり、アニメや漫画のファンは、続きが気になるなと思っている方もいると思います。前作や原作ファンの方はもちろん、今回初めてご覧になる方も一緒に楽しめる舞台になっていると思いますので、劇場にぜひお越しください。お待ちしております。
矢部:観ていて面白いシーンがあったかと思えば、ぐっとくるシーンもあるので、女性も男性も楽しめる作品だと思います。いろんなドラマ、感情が詰まっている作品なので、ぜひ楽しみにしていただけたら嬉しいです。

生駒:私は個人的に、稽古で「陳内さん演じるスウォン、面白いな」「いい意味でふざけてられていいな」って羨ましく思って見ていたんです。ヨナは役柄的にふざけられないなぁって、うじうじしながら(笑)。
陳内:アドリブというか、台本にない部分を演じてみたんですよ。そういうところも舞台ならではの面白さではありますね。
生駒:なので、ヨナも本番では何かブッこもうかと密かに思ってます。そちらも期待していてください(笑)。
【フォトレポート】舞台『暁のヨナ~烽火の祈り編~』囲み取材・ゲネプロ(※画像40点)
公演概要
舞台『暁のヨナ~烽火の祈り編~』

2019年11月16日(土)~11月23日(土)EX THEATER ROPPONGI
【原作】草凪みずほ(白泉社『花とゆめ』連載中)
【脚本】早川康介
【演出】大関 真
【出演】生駒里奈 矢部昌暉(DISH//) 陳内将 熊谷魁人
塩崎太智(M!LK) 曽根舜太(M!LK) 山中柔太朗(M!LK) 堀 海登
山田ジェームス武 釣本 南 瀬戸祐介 本西彩希帆(劇団4ドル50セント) 武智健二 寿里
【チケット】暁シート¥11,000(特典付き)、一般席¥8,000
【チケット取扱い】チケットぴあ、ローソンチケット、e+、カンフェティ、CNプレイガイド、セブンチケット、楽天チケット、アニメイトオンラインショップ
企画協力:白泉社
主催:舞台「暁のヨナ」製作委員会