芸能人のテレビで見せる姿とはひと味違った素顔や才能が垣間見れる場として、近年InstagramやTwitter、LINE、YouTube、TiKTokといったプラットフォームに注目が高まっている。ファンクラブの距離感とも違う、独特の空間で話題のSNS。
そんなツールを巧みに使い、数カ月で驚くほどフォロワー数を伸ばしている芸人の一人が、チュートリアルの徳井義実だ。
チュートリアル徳井義実が語る現代のSNS TikTokは“縛りのない表現ができる場所”

新たなSNSも率先して使いこなし、昨年11月に投稿をはじめたTiKTokはわずか数カ月で現在フォロワー数40万人超えという驚きの数値を叩き出している。

これからはじめる人もそうでない人も、SNSを知ることは大きな課題にも感じられるが、あくまで無理なく“趣味のひとつ”としてSNSを自由に使い、自身にあったツールをきちんと選択している彼に、TikTokの活用術といまのトレンドについて話を聞いた。

取材・文/後藤千尋


最初は気負わずに持ち前の動画で投稿をはじめた


――昨年11月末に投稿された動画「過ぎ去りし日々」の投稿からわずか半年弱でフォロワー数が40万人を超えましたね。昨年行われたTikTok主催のイベント「TikTok CREATOR'S LAB. 2020 -REFLECTIONS-」でも司会をされましたが、徳井さんご自身はどのような経緯でTikTokをはじめたのでしょうか?

最初に投稿したこの動画は、TikTok用の動画ではなかったんです。友達と多摩川へサイクリングに行った時に、男2人でその辺のスーパーで売っている焼きそばを買って食べていたらドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(フジテレビ系)の映像みたいってカメラを回して。いろいろあって活動を自粛している中で崖っぷちのおじさん風な動画が面白くて、撮影したものを自分で編集して友達に送っていたんですよね。

――そうだったんですね。これはいつ頃、撮影されたものですか?

動画は2020年の3月に撮影したものなんですけど、それがスマホに残っていて、あげてみようかなって思ったのがはじまりでした。

――そこから瞬く間にフォロワー数を伸ばし、注目されるようになりましたね。このスピード間には驚きましたが、こうして“SNSを使いこなしている芸人”として取材を受けた率直な感想は?

いや、どうなんですかね!?(笑)

――投稿を見て、凄く使いこなしているなという印象を受けました。

「僕でよろしいでしょうか?」っていう感じなんですけど(苦笑)、ずっと名前を出さずにアカウント自体は持っていたんですよ。発信を始めたのは、実はあの(TikTokの)イベントがきっかけでした。


――芸人さんがVlog的な使い方で投稿しているのは新鮮でした。

徳井義実:やるんやったらTikTokらしい曲に合わせて踊るとか「そういうのなのかな?」っていうの考えもあったんですけど、「それは別にやるつもりもないしな」と思って最初は見ていただけだったんです。でも、イベントで大学生TikTokクリエイターの修一朗くんに会って、Vlog的な使い方をしてる人もおるんやってことを知って、ビックリしました。
チュートリアル徳井義実が語る現代のSNS TikTokは“縛りのない表現ができる場所”

――ショートムービーとして15秒の動画も流行ってますが、徳井さんが投稿している動画は1分間のものが多いですね。

そうですね。「1分縛りの中で何を出してもいいんか!」って思って、とりあえず動画を作ろうと思いました。

――TikTokではどんな動画を見ていましたか?

尼崎のなつみかんというクリエイターさんや、猿のピザトルの動画はもともとフォローして見ていましたね。TikTokのイベントで実際にお会いできて嬉しかったです。

――Vlogは1分間の動画に向いていますよね。

そうですね。結果論といいますか……僕は15秒で作れるものの中で自分の作りたいものは無かったので、1分間の動画になったんですよ。最初に投稿した動画は本当に友達同士の遊びで作ったものだったので、他には出していない動画です。
当時は投稿したけど、別にその時点では投稿の方向性も決まっていませんでしたね。

新しいSNSは使うけど、使うときは慎重に


――新しいSNSも率先してスタートしていましたが、SNSに抵抗感はなかったんですか?

あんまりないですね。新しいSNSは使うけど、僕は慎重に使い方は気にしています。

――フォロワーが伸びたのは、どんな動画からでしたか?

料理の動画ですかね。

――これもご自身で編集まで?

そうですね。わりと一人で撮ったり編集したりするのは好きなんです。火加減とかは時間に追われながらやっていることもあるので、多少は難しいところもありますけど、単純に独身が長いので料理は慣れているし、好きですね。

――投稿されている料理のなかで、「これだったら簡単にできるよ」というものはありますか?

僕の料理の動画は撮影しながら作っていて、さらにそれを1分間に収めなきゃいけないので、ややこしい工程があるものって出来ないんですよね。だから基本的に簡単なんですよ。パスタ系は特にそうだと思いますし、スタンスとしては“一人のおっさんが自分のために料理を作っている”というだけなので、普通のおっさんでもどれも簡単にできますよ(笑)。

――簡単だけど、ビジュアルにも気を遣った料理が多いですね。動画を見ていると、パスタ選びやトッピングも勉強になります。

盛り付けは、できるだけ美味しそうに盛るようにしてます。
どうせなら見る人も「こんなんのせるんや」とか、わけわからんチャービルとかある方がなんとなく見ていて楽しいかなと思いますね(笑)。
チュートリアル徳井義実が語る現代のSNS TikTokは“縛りのない表現ができる場所”

――この動画のように音楽と映像だけのテンポの良いものもありますが、意外と一発撮りの動画が無く、初心者にもトライしやすい撮影後に音声や音楽を入れるアフレコ動画が多いですね。

そうですね。たまにデジカメを使ったりもするんですけど、ほとんどの撮影はスマホで撮ってアプリにデータをインポートして、アプリ上で最後までやっちゃうという感じですね。アプリ上でアフレコすることもあれば、TikTokのアプリの中で映像だけ作った後に、アップするときにアフレコを入れるということもあります。
チュートリアル徳井義実が語る現代のSNS TikTokは“縛りのない表現ができる場所”

――動画と音声を一気に撮ろうと思うと失敗も多いですが、このスタイルなら簡単に編集もできて動画を投稿しやすいですね。

TikTokを見てたらオススメに出てきて、どんなんか入れてみようと思って使い始めたんですけど、これも簡単で使いやすいですね。

――このキャンプ動画は実際にプライベートで行かれてるんですか?

そうですね。本当にご飯も自分が食べたいから作ってるだけで、キャンプもプライベートで行ってますね。コメントとかにも、「プロがはいってるんですか?」とか書かれることがあるんですけど、ただのプライベートですね。
チュートリアル徳井義実が語る現代のSNS TikTokは“縛りのない表現ができる場所”

――楽しんで投稿されていますね。これまでSNSを活用していなかった方も、こういった使い方であれば出来るかもという方もいらっしゃるかもしれません。


基本的には無理して始めることはないと思いますけど、興味があるんやったらとりあえずなんでもいいから動画なり文章なり、音楽なり作って発信してみたら反応くるんで、とりあえず一歩踏み出してみるのが良いと思います。反応を受けたり「こんな感じに跳ね返りあるんや〜!」みたいに分かることが単純に“楽しいな”と思うこともあります。

縛りのない表現できる場所なので、あまりにもニーズばかり気にしてもしょうがないから。

TikTokは楽しい趣味 無理なくやるもの


――タレントとして使うには、どのように活用していくのが良いとお考えですか?

やっぱり向いてる人と向いてない人は明確に別れると思うので、向いてない人はやらん方がいいと思うし、なんかモノを作るんが好きな人は表現の場のひとつとして、お金もかからないし、そんなに無茶なもの以外は何をあげてもいいわけやし、自由に表現できる場やから舞台の一つとしてやればいいと思いますね。

――徳井さんは、はじめはどうだったんですか?

僕はお笑いは一旦置いておいて、動画の編集が好きなんですよ。24歳ぐらいから自分の単独イベントの動画をぜんぶ作っていたんですよ。なので、動画作るのが大好きな楽しさもあります。でも、編集に力をいれたからといって再生回数がのびるわけではないという(苦笑)。わりと編集がんばった動画は「そんなに再生回数が行かなかったな」とかありますよ。

――そうなんですか?!

200万再生いくやつと30万再生の違いはわからないですね。やってみないとわからないこともあるし、この動画が「そんないくんや!」っていうのは、僕が麻婆豆腐食ってるのを撮影したいのに、猫がカメラの前を遮って占領するという動画でした。

――この動画、可愛いですよね。再生回数は550万回という凄い数字になっています。

チュートリアル徳井義実が語る現代のSNS TikTokは“縛りのない表現ができる場所”

これは「こじらせ飯」ていうやつの麻婆豆腐の動画の実食してるシーンを撮っていた動画の残り素材だったんですけど、残りの動画を猫が映ってるからあげてみるかってあげたらすんごい回って一番バズりました(笑)。

――Instagramでも評判の「こじらせ飯」シリーズもですが、投稿に関しては狙って投稿されているものもあるんでしょうか?

投稿しつつTikTokのトレンドをさぐると、ハプニングとかは結構好きなんやなとかありますよね。それこそ料理を失敗したやつとかはすごい、TikTokぽいっちゃTikTokぽいという。多少はTikTokを見てくれてる人の好みとかは以前よりはなんとなく掴めてきたんですけど、それでも反応ってその時々によって違うから、やっぱりわからへんし、あんまり再生回数いかせようとかバズらせようとかおもってやるのは違う気もしてますけどね(笑)。

――数字は気にせず楽しむのがやっぱり大事だし、楽しんだものが続いていくんでしょうね。

僕はそうしようと思っています。特にテレビとかやと視聴率とかは付いてくるので、長年そういう世界で仕事して戦ってきたので、TikTokではせっかく縛りのない表現できる場所なので、あまりにもニーズばかり気にしてもしょうがないなと思います。

――徳井さんの中ではTikTokって、いまどんな位置付けになってますか?

本当、楽しい趣味。無理なくやるもの!

――SNSで見ることができる顔、テレビで見ることができる顔、それぞれに良さがありますよね。4月12日にはチュートリアルさんのお笑いライブも予定されてますが、そことはまた違う良さがあるんでしょうね。

そうですね。お笑いライブを生でみるのは、やっぱりスマホでみるのとは全然違うし、なかなかこのコロナで生で見る機会が無くなったり遠ざかっている人もいると思うので、ぜひ生の面白さを見に来て欲しいですけどね。
お笑いライブはテレビの延長で、全く別物ではないと思いますけど、1時間とか1時間半とか、腰据えて二人きりで、ゆっくり見てもらえると違う部分も出てくるかと思います。

――最後になりますが、個人的に投稿された動画で面白かったのは、オカリナを吹いている動画だったんですが、「隙間風」といったコメントもありました。
チュートリアル徳井義実が語る現代のSNS TikTokは“縛りのない表現ができる場所”

この動画はいつものVlogの映像にワイプでオカリナを吹いてる映像を混ぜてみて、ちょっと変なおもしろ動画になったらいいなとおもってあげてみたんですけど、全然行かなかったですね(笑)。

――投稿するまで何が跳ねるかわからない面白さがありますね。

そうですね。でも、SNSは無理してやるもんじゃないなって思います。無理すると動画に出て、そういうのはちゃんとバレるし。楽しんでやるのが良いと思います。

■チュートリアル ライブ情報


チュートリアルトークライブ「さくら」
日時:2021年4月12日(月) 開場18:30/開演19:00/終演20:00
詳細はこちら