土門 「警察学校の教官ですか?」
藤倉 「先方は腕の立つ強行犯の刑事を欲しいと言ってきてる。内示には まだ時間がある。
断るにしろ受けるにしろ、考えてみるいい機会じゃないか?」

のっけから土門薫(内藤剛志)に異動が打診された、12月5日放送の『科捜研の女』(テレビ朝日系)。「異動」「卒業」を主軸に捉えると、様々なやり取りが印象的な光景に思えてくる23話だった。

土門に独り立ちを促された蒲原が覚醒


まずは、蒲原勇樹(石井一彰)の台頭にフォーカスしたい。親友でありライバルだった元刑事・火浦義正(升毅)が事件に関わっていると知った土門は、今回の事件から外れることを自ら希望した。

土門 「このヤマはお前に任せた」
蒲原 「いや、何言ってるんですか。土門さんがいなきゃ……」
土門 「いつまで俺を頼る気だ。お前もいいかげん独り立ちする頃だろ。な?」

単に刑事としての独り立ちを促しているのか、色々な意味でのバトンタッチを意味する会話だったのか。今思うと、スルーしにくいやり取りである。

蒲原は蒲原で、土門の期待にきちんと応えた。火浦が営む古本屋で見つけた紙の燃えカスが気になる彼は「復元できますよね!?」と日野和正所長(斉藤暁)に威圧感を与えにいったのだ。マリコ直伝の目力ビームを披露し、どんどんマリコ化していく蒲原(ちなみに石井一彰は東宝芸能で沢口靖子の後輩)。「蒲原がメインキャストなら、こんなシーンがこれから頻出する?」と想像させる一場面だった。


さらに、榊マリコ(沢口靖子)を呼び出す際、「よかったら付き合ってもらえませんか?」と勘違い必至のセリフをカマし、マリコを変な表情にさせてみせたし。「もう、土門さんの部下には収まらない」という、彼なりの強い意思表示だっただろうか?

「土門さんについて知らないことが多い」と表情を曇らせるマリコ


今回、マリコは土門の過去を周辺人物に聞きまくった。例えば、土門の妹・美貴(加藤貴子)には土門の元妻・有雨子(早霧せいな)について質問している。

マリコ 「奥さんの有雨子さんは今、どこで何をしてるの?」
美貴 「知らないんですか!? あっ、そっか……。お兄ちゃん、自分から話すわけないか。お兄ちゃんと別れた2年後、病気で亡くなったんです」

美貴からしても、土門の過去をマリコが把握していないのは意外だったらしい。さらに、マリコは刑事部長・藤倉甚一(金田明夫)にも土門について質問した。

マリコ 「刑事部長は土門さんが休暇を願い出た理由をどうお考えですか?」
藤倉 「鑑定結果の報告ではなく、個人的な相談に来たのか?」

事件のキーマンは有雨子だと睨む蒲原は「土門さんの奥さんのこと、何か知りませんか?」とマリコに尋ねた。しかし、マリコは首を横に振る。
「私も土門さんのこと知っているようで、知らないことが多いのかも……」

蒲原も美貴も藤倉も「マリコなら土門のことを知っている」と決めてかかっている。でも、土門のことを知っているようで実際は知らない。そんな自分を思い知り、終始切なげな表情のマリコ。
土門の気持ちがわからないから切ないのだ。このドラマのキャッチコピーは「あなたはまだ、榊マリコを知らない」だが、マリコからすると「あなたはまだ、土門薫を知らない」だった。
「科捜研の女」土門卒業のフラグが立ちまくった23話。いつもの“去る去る詐欺”で終わるのかな不安
イラスト/サイレントT

マリコが土門の過去を掘り起こしたことで、自ずと土門の人となりを紹介する内容になった今回。まさに、土門回だ。22話は、『科捜研の女』にとってターニングポイントにあたるエピソードになるだろうか?

はっきり言って、土門の卒業フラグは『科捜研の女』の恒例行事だ。人呼んで“去る去る詐欺”。でも、土門ももう57歳だし、内藤剛志は64歳である。一般社会では定年に差し掛かっており、現役刑事としてはきつい年齢だ。

次回予告を観ると、制服を着て警察学校で教鞭をとる土門の姿があった。さらに「土門刑事、新たなステージへ」というテロップまで……。こんな煽りを受けた我々は、不安な気持ちのまま今夜放送の24話へ臨むことになる。
できることなら、屋上で語り合うマリコと土門を今後も見続けていたい。
もちろん、23話で恒例のどもマリデートは行われなかった。
(寺西ジャジューカ)

木曜ミステリー『科捜研の女』
ゼネラルプロデューサー:関拓也(テレビ朝日)
プロデューサー:藤崎絵三(テレビ朝日)、中尾亜由子(東映)、谷中寿成(東映)
監督:森本浩史、田崎竜太 ほか
脚本:戸田山雅司、櫻井武晴 ほか
制作:テレビ朝日、東映
主題歌:今井美樹「Hikari」(ユニバーサル ミュージック/Virgin Music)
※各話、放送後にテレ朝動画にて配信中
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