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「いだてん」第0話として観ると更に傑作、市川崑の傑作映画「東京オリンピック」

       
「東京オリンピック」は、大会公式の記録映画として制作された。それゆえ、映画の中核になるのは、当然ながら競技の模様である。しかし、この映画で面白いのは、むしろ競技から“はみ出た”部分であり、それこそが本作を傑作たらしめているように思う。

たとえば、陸上の女子800メートル決勝では、優勝したイギリスのパッカーという選手がゴールを切ったあと、その先にいた一人の男性に駆け寄って抱きつく。それは彼女と一緒にオリンピックに出場した婚約者であった。一方、女子80メートルハードル決勝では、レース直前から選手たちを追う。なかでも活躍が期待された日本の依田郁子は、口笛を吹いたり側転したりと、余裕のようでもあり、努めて自分を落ち着かせているようにも見え、本番を控えた選手の心情をうかがわせる。依田の結果は5位と、惜しくもメダルには届かなかった。実況のアナウンサーの「依田、ダメ」の一言が無情に響く。

開会式が快晴になったことはよく知られるが、それでも会期中には雨や曇天が案外多かったことも、この映画を観るとわかる。陸上競技では、雨のなか、係員たちが懸命にスポンジでトラックにたまった水を吸い取る光景が見られた。競歩も雨のなかでのレースとなり、両足が地面から離れてはいけないなどといった厳しいルールもあいまって、あきらかに苛立ったランナーが、ゴールするやテープを手で引きちぎったのが印象深い。

作中では、東京オリンピックの名シーンとしていまだに語り草の、女子バレーボールも当然ながら出てくる。決勝で日本チームが念願の優勝を決めた瞬間には、歓喜する選手たちの様子とは対照的に、ベンチで一人、呆然としながらも感慨に浸るかのような監督の大松博文のカットが差し挟まれ、そこでかかる不穏な音楽(黛敏郎作曲)とあいまって監督の孤独を感じさせる。市川崑が後年語ったところによれば、優勝の瞬間、選手が自分たちだけで抱き合ったりするなか、大松がぽつんと一人で立っているのに気づくや、市川はとっさにカメラを覗き、助手に「(フィルムを)まわせ! まわせ!」と怒鳴ったという(市川崑・森遊机

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