2018年放送の前シリーズで、特別感すら覚えるほどインパクトの強かった異常者のお話。
本作に登場するミハンシステムとは、あらゆるビッグデータから未然に犯罪を犯しそうな人物を特定するシステム。警察の秘密組織である「未然犯罪捜査班」(通称・ミハン)はこれをもとに事件を未然に防ごうと奮闘する。

殺してみたい女性のイメージにピッタリだったんです
進学校に通う17歳の高校生・浅井航(清水尋也)が、接点のない専業主婦・松永由貴(足立梨花)をバラバラにするという衝撃的な事件が発生。公安部部長の曽根崎正人(浜田学)は、ミハンシステムが浅井を探知できなかったことを井沢範人(沢村一樹)のせいにして追い出そうと画策する。統括責任者の香坂朱里(水野美紀)は、ミハンチームとしては珍しい「起きてしまった事件」を調べ直すことを決める。
そもそもなのだが、ミハンシステムが"全ての危険人物を探知することができる"ということに驚き。"数多い凶悪犯罪のうちのいくつかを探知する"くらいの認識でずっと観ていた。「そんなに優秀なシステムだったらなぜ……?」と前話で簡単に騙されたシーンがチラつくが、前提として、ミハンシステムは思っている以上に優秀なコンピューターらしい。
「殺してみたかった、人を。何度も何度も頭の中でイメージしました。興奮した。
前シリーズでインパクト抜群の異常者を演じた近藤公園。どうしてもそこがチラついてしまうのだが、航役の清水尋也もなかなかの雰囲気。死んだ目と、少しずつ感情が滲み出る語り口は、ステレオタイプに異常者だ。「殺してみたい女性のイメージにピッタリ」そんな考え方があるなんて知らなかった。
しかし、近藤公園が演じた前シリーズの話は、主人公の井沢もそうなのではと疑わせる演出に加え、「サイコパスは100人に1人の割合で存在する」「サイコパスは緊張しない」「サイコパスがサイコパスを育てる」など、視聴者に明確な目線を持たせて、考えさせられるテーマを設けてくれた。その点、今回はステレオタイプ過ぎるというか、雰囲気物過ぎるというか、なんかちょっと普通だった。
腑に落ちないまま見続けていると、それもそのはず、なんと「航は異常者ではなかった」という展開が待っていた。こっちが勝手に期待してしまっただけなのだが、ちょっと肩透かしを食らった感じだ。しかし、清水尋也は、別の方向性ですごかった。
186cmの高身長でぬぅっと立つ姿はちゃんとヤバイ奴に見えたのに、演技だったとバレた後や、回想シーンでは、気が弱そうな普通の少年に見えた。同じ髪型で同じ制服を着て全く違う印象を与えてくれるのだから面白い。
足立梨花も"夫からDVを受けて自殺を考える人妻"がハマっていた。

一番絶妙な人物の死?
スポーツカメラマン・篠田浩輝(高杉真宙)は、立ち位置が絶妙だ。ハッキリとは明らかになっていない悲しい過去を持ち、カウンセリングに通い、さらに心に傷を負った小田切(本田翼)と恋仲になりつつある。要素がなんかフワっとしている。
そんな篠田が何者かに襲われた。死んだのかどうかはまだハッキリしていないが、事件に巻き込まれたのだ。
今作は、井沢が数週間先に起こす「射殺事件」の真相が少しずつ明らかになっていく……という作りなのだが、本格的に何かが動き出したのは初めてのこと。クライマックスに向けて、何かのトリガーが引かれた感じですごく良い。
しかし、ちょっと難解なのが、襲われた篠田がどんな人物かいまいちハッキリしていなかったところだ。小田切に近づく姿がすごく怪しくも見えたし、ただのさわやかイケメンにも見えた。悲しむべきなのか、ただただ驚くべきなのかがピンとこない。
今後は超ヘビーな展開に?
襲った人物の動機は物語のカギを握りそうだ。篠田が小田切を撮った何気ない写真には、いつも同じ男が写り込んでいた。
その男がストーカーならば、"小田切と付き合おうとした篠田を殺した"と予想される。さらにそのストーカーが、過去に女子高生時代の小田切を襲った男だとしたら、ここから怒涛の小田切物語が展開されるかもしれない。
自分を襲った男が自分の好きな男を殺した、ちょっとヘビーすぎて観ていられない気もするが、「絶対零度」はけっこう攻めたことをするので、やりかねない。
(さわだ)
■「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」
出演:沢村一樹、横山裕、本田翼、森永悠希、高杉真宙、上杉柊平、マギー、粗品、水野美紀、柄本明
脚本:浜田秀哉
音楽:横山克
企画:稲葉直人
プロデュース:永井麗子、関本純一
演出:石川淳一、品田俊介、木村真人、小林義則
主題歌:家入レオ『未完成』