様々な伏線を回収した中盤の山場の6話を終え、一度まっさらな状態になった「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」(毎週月曜21時〜)。7話はクライマックスに向けてキャラクターの心情の変化や新たな伏線が張られ、キレイにまとまった1話完結回。
特に役者個人が輝いた回だった。

ミハンシステムとは、9割の確率で犯罪を犯す人を事前に探し出す未然犯罪捜査システムのこと。
「絶対零度」「だぁかぁらぁ〜!」本田翼、横山裕のアクションに確かなバックボーンを見た7話
イラスト/Morimori no moRi

どうしても6話に比べると


田村(平田満)の最後の言葉「ミハンを必ず実現させてください」。その意思を受け継いだ東堂(伊藤淳史)は、田村とミハンチームの関わりを削除し、捜査再開を決めた。今回ミハンシステムが危険人物にあげたのは、実態の掴めない麻薬組織に属している疑いがある新谷啓一(小柳友)。麻薬密売組織のボスである謎の人物・喜多野との繋がりも含め、捜査は開始された。

物語の焦点は、「喜多野が誰なのか?」ということ。
新谷は、妻の涼子(青野楓)と一緒に団地で暮らしており、上の部屋には、母親から虐待されているユキオ(山城琉飛)という少年が住んでいた。別居中のその父親らしき冬樹(長谷川朝晴)、涼子と密会していた男など、登場人物はそこそこ多めで、1話完結にしては人間関係が若干複雑。だが、怪しすぎるキャラクターたちのなか、1人全く触れられないという逆に怪しい人物がいたため、「喜多野が誰なのか?」という謎解き目線での楽しみは薄かったように思える。まぁ、前回の6話が盛り上がりすぎていたので、ある程度の失速感が出てしまうのは仕方のない事と言えば仕方のない事なのかもしれないが。

本田翼、横山裕、沢村一樹、アクション3連発


見所となったのは、役者個々。アクションが好評の本田翼(小田切役)のお相手は、初めての女性、青野楓(涼子役)だった。今までは男性に侮辱された経験を持つキャラ設定から、「女VS女を舐めた男」という図式で戦ってきた本田翼だったが、青野楓にも十分過ぎるほどの対比要素があった。


青野楓は、12歳で黒帯を取った本物の空手経験者。役柄の涼子もその裏設定があるのか、キレイで力強い空手を駆使していた。対する本田翼は格闘技経験無し。小田切にも無い。しかし、1話で格闘技経験を問われた際の「普通に地元で」というセリフからは、小田切には喧嘩経験が推測される。

「だぁかぁらぁ〜!!向かいの棟に越してきた川島だよぉ〜!!!」
涼子に「あんた何者?」と尋ねられ、侵入捜査時に使った「川島」という偽名を名乗り飛びかかる小田切のセリフだ。
会話の芯をわざと外すも、感情をむき出しにする様は、まるで「ビー・バップ・ハイスクール」のようでヤンキー感を強める。

技も何もなく、ただただ突撃する小田切。それを空手の技で華麗にいなし、的確に蹴りをいれる涼子。「私強いでしょ?」といわんばかりに冷笑を浮かべれば、小田切は髪を振り乱し、蹴られながらも強引にしがみつく。おそらくどんな格闘技のマニュアルにもないようなデタラメな打撃で小田切がペースを奪うと、最後は頭突き2発で仕留める。涼子の蹴りを何発もキレイに受けている粗さが、逆に小田切の強さを引き立てている。


今話は珍しく山内(横山裕)のアクションシーンも。スマートな見た目の横山裕からは少し意外だが、山内は警察らしく柔道を使った。適度に打撃を織り交ぜ、隙を見て掴みかかる。そこからは投げて締めての実に警察らしい戦い方。アイドルだからと回し蹴りなどの派手でカッコイイ技よりも、こちらも警察というバックボーンを生かしているため、気持ちよく見ることが出来る。

続いてミハン捜査に後ろ向きだった南(柄本時生)だ。
体格にも恵まれず見るからに弱そうな南は、虐待されている少年・ユキオを助けるために単身敵の元へ。素手で掴みかかり、一方的にやられてしまうが、その行動には、肉体よりも心的強さがあった。

そこに登場するのは、ミハンのリーダー井沢(沢村一樹)。警察特有の武術・逮捕術というやつだろうか、銃を持った相手ももろともせず、圧倒的な強さでスマートに相手を取り押さえた。

井沢から垣間見えた復讐心


しかし、スマートなのは戦いだけ。悪を眼の前にした井沢は、殺された家族への思いが込み上げてきたのか、「なぜだ?なぜ?なぜお前のようなクズばかり生き続けるんだ!」と珍しく激昂。
前話で自分が殺人犯の疑いをかけられても冷静だった男が、殺された家族のことが頭をよぎると豹変してしまう。

良いように捉えれば他人の為に怒れる男。しかし、見方を変えれば、自分のことを全て諦めてしまった単なる復讐鬼。自分についてはひたすら無関心で、失ってしまった家族についての悔恨に支配された悲しい男だ。

井沢の闇が改めて浮かび上がった第7話。ラストで井沢の家族が巻き込まれた事件と、過去の「絶対零度」シリーズの主役・桜木泉(上戸彩)の事件が関係していた可能性も発覚した。今話放送の8話は、復讐がテーマっぽい。
(沢野奈津夫)

「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」

月曜 21:00〜21:54 フジテレビ系
今晩の放映時間直前までTverで6話配信

キャスト:沢村一樹、横山裕、本田翼、柄本時生、平田満、伊藤淳史、上戸彩 ほか

脚本:浜田秀哉
演出:佐藤祐市、城宝秀則、光野道夫
主題歌:家入レオ「もし君を許せたら」