過去4話は、1話完結でなんとか事件を解決していたが、今回は完全なるミハンチームの敗北。テーマも「サイコパスがサイコパスを育てる」という一風変わったもの。
様々な意味で、転換期となる回だった。「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」5話(毎週月曜21時〜)。

ミハンとは、9割の確率で犯罪を犯す人を事前に探し出す未然犯罪捜査システムのこと。

子供の凶行を後押しする大人



「100人に1人の割合ではサイコパスは存在する。そのほとんどは普通に社会生活を営んでいる」

「サイコパスは、恐怖や不安だったり、後は緊張しにくいんだよ。大舞台でも冷静に計算して行動することが出来る。後はなんか人を惹き付ける魅力があるんだよね」

ミハンのリーダー井沢(沢村一樹)が言った上のセリフが今話のポイントだ。


進学校に通う高校2年生の岡崎直樹(道枝駿佑)は、バスケ部のエースで成績はトップクラス。父親は文科省の次期事務次官候補と言われている人物だった。しかし、直樹は動物殺傷事件を起こしていた。

直樹に近づいていたのは、凶悪犯罪のルポ本を何冊も出版している有名ジャーナリストの川上邦明(近藤公園)。動物殺傷をしている少年少女に会い、殺人衝動をくい止めるために話を聞いているという。しかし井沢は、そんな川上が反社会的なサイコパスであるという疑いを持つ。


井沢は、小田切(本田翼)と田村(平田満)とともに川上のマンションに潜入。そこで川上が直樹の凶行の背中を押していたことに気付く。ミハン総責任者の東堂(伊藤淳史)を含めて作戦会議を行っていると、川上の部屋を盗撮していた映像に異変。カメラに気付いた川上から、ミハンチームへの呼びかけがあった。

川上「こんばんはー。捜査担当者のみなさーん。
見えてますかー?連絡お待ちしてまーす」

「絶対零度」沢村一樹、道枝駿佑、近藤公園のヤバイ奴対決凄い「サイコパスは緊張しにくい」がすべて5話
イラスト/Morimori no moRi

沢村一樹VS近藤公園「サイコパスは、どんな大舞台でも緊張しない」



悪事が警察にバレたにも関わらず、一切動揺する姿を見せない川上。近藤公園のフラットで熱のない演技が、底の見えない人物像を強調する。川上の自宅兼作業場で、井沢と川上の心理戦が開始する。

2人の心情描写の肝になったのが、川上が淹れたアイスコーヒーだ。ミハンチームの行動や現状、全てをお見通しだという旨を伝えながら、川上はたっぷりの氷が入ったグラスに、熱々のコーヒーを注ぐ。セミの鳴き声が聞こえる中、パキパキパキと氷が溶ける音が響く。川上のこんな状況でも美味しくアイスコーヒーを作るぜという平常心、また、完璧主義者ぶりが現れている。


怪しい人物が淹れた怪しいコーヒー、それでも井沢は躊躇せずに口に入れる。「うん」の一言と仕草で、その美味しさと川上への感謝を伝える。盗撮・盗聴を折り込み済みでこの場にいる川上が、毒を盛るわけが無いと信じての行動なのだろうが、井沢は井沢で異常なまでに平常心を保っている。井沢が言った「サイコパスは、恐怖や不安だったり、後は緊張しにくい。大舞台でも冷静」というセリフが、井沢自身を指しているように見えてしまう。そして本題へ。


井沢「川上さん、昔からあなたの周りでは多くの人が自殺や事故でなくなっている。で、今は動物殺傷している少年少女たちと接触して、犯行を止めるどころか、背中を押している。どうしてそんなことをしている。楽しいか?」

井沢は、調べ上げた情報をまっすぐ川上にぶつける。

川上「あなたお子さんは?もしお子さんがいないなら動物でもいい。なにか育てるべきですよ。
40歳を過ぎてから生き物を育てると気付かされることが多い。成長できますよ」


川上は調べ上げられたことな百も承知。動物殺傷している少年少女たちの背中を押したことを前提として、その喜びを語り、共感を求める。

伊沢「殺人者が殺人者を育てるとでも言いたいのか?」

この言葉を言い終わると、井沢はアイスコーヒーのストローを加える。グラスに滴る水滴が、伊沢の代わりに汗をかいているよう。

川上「実に興味深い人だな。あなた、人を殺したことがありますね?」

この言葉でセミの鳴き声が消える。衝撃的な発言に、盗聴していたミハンチームの表情が凍り付く。しかし、伊沢は否定しない。動揺するメンタルをつなぎとめるように、ストローを噛みしめる。

川上「殺人経験のある刑事なら難敵だ。岡崎直樹を止められるかどうか見ものですね。さて、彼は誰を殺しにいったのかな。あなたならわかるはずだ。殺人者の気持ちが」

川上は、勝ち誇ったようにストローを口に差し込み、コーヒーを吸い込む。それに合わせて伊沢もコーヒーを吸い込む。同じ行動をして心理的に川上になりきろうとしたのかもしれない。そして井沢はストローを口から離し、グラスでテーブルを叩く。

井沢「文部科学省だ」

直樹の父親が勤めるのは文部科学省。井沢は、川上と直樹の心理を読み取ることに成功した。しかし、これが読み取れてしまうということが、川上の言うように伊沢が精神異常者、殺人経験者だという指し示しているようにも見える。

直樹、冷静に凶行。川上、冷静に仕事


すぐに文部科学省に駆けつけたミハンチームだったが、直樹はすでに冷静に凶行に及んでいた。入館時の金属探知機で、ポケットのコインが反応したように見せて警備員を欺き、中のソファで堂々と3Dプリンター銃を組み立てる。そして、無差別に人を射撃するが、表情は平穏。時折笑顔を見せるが、動揺も高揚もしていない。スムーズに弾を入れ替える様が、井沢の「サイコパスは、どんな大舞台でも緊張しない」という言葉を思わせる。

直樹「あぁ、やっと殺せた」

父親を射殺すると、ミハンチームに囲まれた直樹は、躊躇無く自分の首をかっさばき、命を捨てた。

動揺するミハンチーム。そこにシャッター音が聞こえてくる。カメラを構えた川上が現れた。

川上「彼に約束したんですよ。最高の記事にしてあげるからね」

自分の予定通りの結末を迎え、自分の予定通りに川上は仕事を行う。今話のクライマックスに見えた直樹の暴走をあっさり上回る異常性を見せつけた。

川上もったいなすぎる


もはやラスボス。それくらいの存在感だった川上だが、このドラマ恒例の謎の仕置き人の手により、あっさりと命を落としてしまう。川上がたった1話の使い捨てキャラで、今度もっと凄みのあるキャラクターがドンドン出てくるのなら良い。だが、正直これを越えるのは難しい気がする。

脚本の段階で川上はここまでラスボス感のある存在では?近藤公園が予想以上に良すぎ結果では?そんな裏側を想像してしまうほど、ここで川上がリタイアするのはもったいなさすぎる。

今話は、初めてミハンチームの完全敗北で幕を閉じた。最後に出てくる謎の仕置き人の正体は、どう見ても井沢であるように演出された。今話放送の第6話は、井沢が川上殺しの重要参考人にとして引っ張られるそう。ミハンチームの解散もほのめかされ、6話にしてまるで最終回のような予告。もう今後の展開なんてまるっきり予想出来ないが、テンションの高い回になることは間違いなさそうだ。

(沢野奈津夫)


「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」

月曜 21:00〜21:54 フジテレビ系
今晩の放映時間直前までTverで4話配信

キャスト:沢村一樹、横山裕、本田翼、柄本時生、平田満、伊藤淳史、上戸彩 ほか

脚本:浜田秀哉
演出:佐藤祐市、城宝秀則、光野道夫
主題歌:家入レオ「もし君を許せたら」