「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」6話(毎週月曜21時〜)。ミスリードが多くてさすがに食傷気味だったけど、それでも沢村一樹はすごかった。


ミハンシステムとは、9割の確率で犯罪を犯す人を事前に探し出す未然犯罪捜査システムのこと。

ミスリードの副作用


法で裁けない悪を始末する必殺仕事人のような謎の人物。おなじみのように一話完結を締めていたこの犯人が、ついに今話発覚した。怪しかったのは、主人公でミハンチームのリーダー井沢(沢村一樹)だ。仕事人が悪を始末するシーンの前には必ず井沢の意味ありげなカットが入っていたし、井沢がミハンシステムに引っかかっていた事実も明らかになっていた。また、前話にいたっては川上(近藤公園)の死体の前に、井沢の後ろ姿がハッキリと映っていた。もうあらゆる角度から犯人は伊沢だった。


しかし、これだけ怪しい材料が揃っていたら、「逆に犯人ではない」になるのがミステリーの鉄則。印象操作するためのミスリードなのは明らかだ。今どきのドラマ視聴者なんて目が肥えてるのだから、これに引っかかった人なんてそうはいない。一体誰を騙すためのミスリードなのだろうか?もはやストーリーの不純物にさえ思えてくる。

ミスリードの弊害は他にもある。ミスリードがバレることによって、「犯人が伊沢ではない」の他にも、「すごく意外な人物が犯人」という予想を視聴者にさせてしまうことになる。
そうなると、過去に悲しい事件に巻き込まれ、悪を憎んでいた2番目に怪しい東堂(伊藤淳史)も犯人ではないと予測できてしまう。数少ないメインキャストの2人も候補から消えてしまうのだから、消去法で犯人はなんとなく想像ついてしまう。ここから視聴者の予想を裏切ったとしたら、それは予想外ではなく、荒唐無稽だ。
「絶対零度」バレバレ展開でも輝く沢村一樹に思考を操作される6話
イラスト/Morimori no moRi

バレバレ展開でも輝く沢村一樹


なので、次回予告にもあった井沢を重要参考人として引っ張るシーンは、バレバレの茶番だ。絶対に犯人は井沢じゃないし、どうせ新事実が発覚して急展開を迎える。登場人物たちの「井沢さんがするわけない」「真実なら大問題」などと緊迫感を煽るようなセリフには、一度聞いたことがある話を嬉々として話してくる友人のような気まずさがあった。

しかし、井沢が刑事たちに連行され署の廊下を歩くたった数秒のシーンで、その雰囲気はガラっと変わる。
まるでいつもの通勤路のごとく自然な歩き様は、怪しくも、怪しくなくもなかった。ボーっとした無表情にも見えるし、異常者特有のうすら笑みにも見える。ミハンメンバーにすれ違い様に見せた笑顔は、「大丈夫。安心しろ」にも、「僕犯人なのごめんね〜」にも見えた。

結果的に井沢は犯人ではなかったが、「井沢が犯人でもアリ」と思えてしまうほど、この演技は、ゆらゆら揺蕩っていた。今までの過剰なミスリードのようなわかりやすさが一切無く、むしろそのわざとらしさからのフレ幅が、よりふわふわした演技を引き立てていた。


そんな掴みどころのない井沢が、取り調べをしてくる東堂に対して突然「疑ってますよ」とハッキリと言い切るのだから、もう東堂が怪しくて仕方がない。こっちは東堂が犯人ではないと確信していたのに、簡単に覆されてしまう。もう僕の思考は、沢村一樹によって完全に操作されていた。

焼死の桜木がそろそろ出てきそう


謎の仕事人の正体、井沢が過去に殺人を犯していたかどうか、このドラマにおける重要な筋がスッキリ解決してしまった6話。7話以降はどこを中心にストーリーが展開されていくのだろうか。そろそろ過去の「絶対零度」シリーズの主人公・桜木泉(上戸彩)が物語に食い込んできそうだ。
桜木は焼死したということになっているが、これもミスリードだろうし。

(沢野奈津夫)

「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」

月曜 21:00〜21:54 フジテレビ系
今晩の放映時間直前までTverで6話配信

キャスト:沢村一樹、横山裕、本田翼、柄本時生、平田満、伊藤淳史、上戸彩 ほか

脚本:浜田秀哉
演出:佐藤祐市、城宝秀則、光野道夫
主題歌:家入レオ「もし君を許せたら」