いよいよ上戸彩が登場。一応死んでいるということになっていたが、誰も信じてないし驚いてもいないけど、やっぱりワクワクする。
「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」
毎週月曜21時〜)9話。

ミハンシステムとは、9割の確率で犯罪を犯す人を事前に探し出す未然犯罪捜査システムのこと。
「絶対零度」最終回だけ観ても絶対楽しめる、だって上戸彩も高橋努も姿だけで背景がわかる超キャッチー9話
イラスト/Morimori no moRi

高橋努と沢村一樹の悲しい関係


最終回手前の第9話は、3人のアクションからスタート。小田切(本田翼)は豪快で荒々しい前蹴りや金的攻撃で相手を悶絶させ、山内(横山裕)は警察らしく払い腰やデスクを使っての飛びつき腕ひしぎ十字固めの柔道技、そして井沢(沢村一樹)はパソコンをイジリながら余裕で相手をいなすという圧倒的強者っぷりを見せつけ、詐欺集団を一掃した。ミハンチームが活躍してますよーというだけの描写。1クールを通して、アクションが好評だったことから作られたシーンと思われる。

今回ミハンが弾き出した危険人物は、SPで警護科のエース石塚辰也(高橋努)。
なんでも、殉職した親友の嫁と娘が拉致され、国家公安委員長の滝本健三(山田明郷)を殺せと脅されているらしい。脅されて人を殺そうとしている人をミハンシステムが探知出来るが、脅している側の人間を探知出来ないという不思議は不思議のままで。

この設定が、大切な人を守るために殺人を決意する石塚と、それを止めるためにピストルを用意する井沢という悲しい関係性を生んでいる。

なんて便利なのだ、高橋努!


「今作は、説明が短いおかげで展開が早い」みたいなことをこのレビューで何度か説明しているのだが、制作側にとって高橋努という役者の説明不要具合は、めちゃくちゃ便利だったのではないだろうか。

地域の子供たちに柔道を教えていた。SPではなく、もう1つの表情を表現するにはうってつけのシーンだ。しかし、そこには物語を進めるための情報と小田切(本田翼)の柔道着姿があっただけで、石塚の本当の表情が見えるシーンはほとんどなかった。
子供に向かって、「おい!もっと速く!諦めんな!」とかなんとか厳しいことを言ったあと、「よくやったな」と優しい笑顔を見せる。そんなシーンがないにも関わらず、そんなことをしそうだなと、高橋努のゆっくりとした口調と歩調と表情、それと警護科のエースという情報だけで、石塚がどんなキャラクターなのかが簡単に想像出来る。なんの説明も無かったが、ほとんどの視聴者に、「寡黙で一見怖く見えるが人に優しく自分に厳しい人」という印象を与えたに違いない。

なんて便利なのだ、高橋努。時間を割かなくてもちゃんと視聴者に印象を残す。連ドラのゲストで高橋努が登場、これで面白くなかった記憶がない。


上戸彩!出てくるだけでとりあえずみたい!


便利という意味とはまたちょっと違うかもしれないが、このドラマにおいて桜木泉(上戸彩)の存在も特別だ。説明無しで、人の興味をを引く力を持っている。

「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」は、過去の「絶対零度シリーズ」の主人公・桜木泉の存在を無理矢理ボカしていた。1〜2話で「死亡」ということになってはいたが、視聴者も「どうせ生きてるパターンでしょ?」とわかりきっているし、制作側も「別に騙させないのは知っている」というバレるの前提のミスリード。もはやお約束のような雰囲気で、“実は生きていた”桜木泉が9話のラストで登場。井沢に向かって銃を構えた。


これの何が便利なのかって、その伏線の無さだ。普通こういったミステリー系のドラマなら、9話までにこれでもかというくらい伏線を張って謎を残し、10話への“引き”を作る。しかし、この「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」の最終回には、その“引き”が桜木泉しかないのだ。最初から張っていた伏線、「謎の暗殺者」「井沢の殺し」などは、全て回収され、最終回というクライマックスを、お約束のようにバレバレの「桜木泉が実は生きていた!」だけに託す。

これで十分最終回を見たいと思わせることが出来ているのは、「シリーズ物なのに主役が別人」というトリッキーな試みと、上戸彩という女優の魅力に他ならない。もう出てきただけでワクワクしてしまう。


伏線がほとんどないということは、最終回だけ見ても内容がわかりやすいということ。9話で11.3%と最高視聴率を記録したが、まだまだ伸びそうだ。
(沢野奈津夫)

「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」
月曜 21:00〜21:54 フジテレビ系
今晩の放映時間直前までTverで9話配信

キャスト:沢村一樹、横山裕、本田翼、柄本時生、平田満、伊藤淳史、上戸彩 ほか

脚本:浜田秀哉
演出:佐藤祐市、城宝秀則、光野道夫
主題歌:家入レオ「もし君を許せたら」