「絶対零度シリーズ」ファン待望の桜木泉(上戸彩)がついに登場。しかし、その桜木のキャラがなんだか違う。
「絶対零度〜未然犯罪潜入捜査〜」(毎週月曜21時〜)最終話。
「絶対零度」上戸彩ってこんなだった?知らないキャラが謎の理由でガンガン死ぬ!だが沢村一樹で納得最終回
イラスト/Morimori no moRi

一生懸命でまっすぐ、そんな熱血キャラだった桜木が、今作ではなんだかクール。物語の謎の部分を一手に引き受けているので、ミステリアスな雰囲気が出るのは仕方ないが、あまりにも“らしさ”がない。年齢を重ねて落ち着いたのかも知れないが、視聴者が1話から疑問に思い続けて、時間が経ちすぎて慣れて忘れてしまった「絶対零度である必要性がない」ということを改めて考えてしまう。

知らないキャラが謎の理由で死ぬから脳が追いつかない


ミステリーの最終回にしては、残された謎が少なかった。大きなものでいうと、桜木のやろうとしていることと、井沢(沢村一樹)の妻と子供が殺された理由ぐらいだろう。話としては一話完結のような形だったので、最終回も事件の説明から始まる。
しかし、これがやや複雑で視聴者を置いていった印象。

井沢と山内(横山裕)は、桜木が死んだとされるベトナムへと向かう。そこで桜木の友人で、元女刑事のグエン(フォンチー)と出会う。このベトナム人女性が、片言の日本語で事件のあらましをすべて教えてくれた。グエン、便利すぎて味気ない。

一年前、アサヒ証券の社員・谷口(斉藤佑介)は、その上司で支店長の相馬と、その娘で谷口の元フィアンセ由紀子(桜井ユキ)を殺そうとしていた。
それを知った桜木の同僚の赤川(須田邦裕)は、谷口を阻止しようと射殺するという事件が起きていた。赤川が犯罪を未然に防いだという形なのだが、この赤川も謎の転落死をしてしまう。そして翌日、死ぬ直前に赤川と電話をしていた井沢の妻と子供も殺されてしまう。そしてその一週間後、谷口に狙われたと思われていた相馬も事故死を遂げる。

グエン、谷口、相馬、由紀子が今回初登場。赤川、井沢の妻と子供も、名前や顔は出てきてはいたが、人物像は全くわからなかった。
つまり、最終回にして過去9話に出てこなかった人物で話は構成されているのだ。知らないキャラが謎の理由でガンガン死なれても、正直、脳がついていかない。

谷口について、井沢は由紀子に。そしてまたしても新登場の谷口の弟に小田切(本田翼)が聞き込み調査。これで谷口がそんなに悪い奴じゃないということがわかる。

犯罪を起こす前から桜木と赤川が動いていたことから、この事件がミハンシステムが絡んでいると井沢は推理する。
さらに桜木の証言から谷口が冤罪だったこともわかると、一連の死がすべて、ミハンシステムを作った警察の隠蔽によるものだったことに気付く。こっちは状況整理で精いっぱいなのに、井沢の脳が超人的過ぎる。僕は二回この最終回を視聴したのだが、正直、一回目はあんまり理解してなかった。

結局は沢村一樹


上記が今回の話の前提だ。かなり複雑だけど、この先は沢村一樹のマンパワーで押し切る。理解していなかった僕でも十分楽しめるほど、沢村一樹の存在感はすごかった。
というか、これだけ沢村一樹押しするなら、ストーリーをもっとシンプルにしてもよかった気がする。

自分の妻と子供を殺したミハンシステムのトップ、東堂(伊藤淳史)と対峙する井沢。怒りに震えながらも、東堂のミハンへの思いを聞く。「あなたには私を殺す権利がある」と開き直られても、井沢はどこか冷静だった。呼吸を荒げ、椅子をなぎ倒して東堂に掴みかかるも、その先にいる黒幕の存在に気付く冷静さがあった。

黒幕の町田次長からの刺客に、口封じで東堂は刺されてしまう。
間一髪で助けに入った井沢は、町田次長の元へと向かう。ここからがこのドラマでずっと描かれていたアクションシーンの集大成だ。

普段ヘラヘラしていた井沢は、戦い方もヘラヘラしていた。圧倒的な強さを誇るも、どこか相手と向き合わず、まるで合気道のようにいなしていくシーンが多かった。しかし今回は違う。東堂の血にまみれたまま井沢は、町田の元へとまっすぐ向かう。何人もの護衛に飛び掛かられるも、町田から視線を一切外さずにそれらを力強くいなしていく。今までは、パソコンをイジりながら敵をいなす。仲間と会話をしながら敵をいなすなどの余裕を見せてきたが、今回は町田をぶちのめす目的で敵をいなしていった。

町田を追い詰めると、そこからは武術ではなく、ただの暴力。部屋に閉じ込めカギをかける。荒々しく町田の頭を壁に打ち付けては、足で踏みつけ、銃口を構える。眼を見開いた初めて見せる表情ももちろんだが、所作のすべて今までの井沢とは違う。

小田切と山内が駆けつけると、井沢は、ゆっくり普段の井沢に戻っていった。

上戸彩の使い方、ミハンシステムの粗、その他だいぶ気になるところあった今作。結局は沢村一樹が見れたからいいやと納得させられてしまった。

(沢野奈津夫)

「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~」

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