←【レビュー】『愛の不時着』あらすじ 岩ちゃんも「キュンキュンした！」 男性もハマるのはヒロインが強いから
この春、『愛の不時着』とともにNetflixのチャート上位を賑わせた韓国ドラマが『梨泰院クラス』だ。
『サム、マイウェイ～恋の一発逆転!～』『キム秘書はいったい、なぜ?』など、数々のラブコメ主演で人気の俳優パク・ソジュン。大ヒット映画『パラサイト』の石をくれるオッパ（お兄さん）や、日本でも中島健人と平野紫耀のＷ主演でリメイクされるドラマ『未満警察 ミッドナイトランナー』の原作映画『ミッドナイト・ランナー』主演など、幅広い作品に出演するイケメン俳優の彼が、特徴的なイガクリ頭で主人公のパク・セロイに変身。
やられてもやられても敵に立ち向かうセロイの姿は、「韓国の半沢直樹」とも例えられたが、高校時代からの因縁を引きずり、小さな居酒屋から業界トップを目指すという15年にもわたる壮絶なビジネス復讐劇は同世代の男性たちの共感も集め、『愛の不時着』同様、日本でも男性がだだハマりし、人気芸人、トレンディエンジェル・斎藤司のように、セロイの髪型をマネする人も多発。
『梨泰院クラス』は、芸人界隈での盛り上がりもすごく、EXIT・りんたろー。は、挿入歌「Someday，the Boy」を韓国語で熱唱してTikTokで公開したり、千鳥・ノブはイラストをしたためたり、オリエンタルラジオ・藤森慎吾は自身のYouTubeチャンネルで、次長課長・河本、スピードワゴン・小沢、平成ノブシコブシ・吉村らと「梨泰院クラスリモート座談会」を開催。サバンナ・高橋も自身のYouTubeチャンネルのオンライン飲み生配信で、今田耕司、千鳥・ノブ、ダイアン・津田と「梨泰院クラス最高！」と絶賛した。
原作は、人気ウェブマンガ。ドラマのシナリオも、原作者チョ・グァンジン自身が手がけている。
セロイの人生は壮絶だ。その波乱は、高3から始まる。警察官を夢見ていた正義感の強いセロイは、転校初日に大手外食チェーン「長家（チョンガ）」の御曹司、チャン・グンウォン（アン・ボヒョン）のいじめを戒めたことをきっかけに、退学させられてしまう。
獄中で「長家」への復讐を誓ったセロイは、出所後、7年かけて貯めた資金を元手に、梨泰院に念願の居酒屋「タンバム」を開業するが、梨泰院で因縁の父子と再会し、小さな居酒屋と韓国有数の大企業とのバトルが始まる。
踏みつけられても、何度でも立ち上がるセロイ。「人は信念を持って生きなければいけない」という父の言葉を胸に、どんなにピンチが訪れても正義感と信念は決して曲げずに真正面から戦い、仲間を見捨てず、いつもまわりに気遣いながらもビジネスを拡大していくその姿に、『半沢直樹』『下町ロケット』など日曜劇場が大好きな人は、必ずハマるはずだ。
物語にはもちろん、下剋上の復讐劇だけでなくロマンスもある。セロイをめぐる恋のライバルは、天才少女チョ・イソ（キム・ダミ）と、初恋の相手オ・スア（クォン・ナラ）のふたり。どちらも一筋縄ではいかない、芯のある女性だ。
ガールズグループHELLOVENUS出身のクォン・ナラが演じる初恋の人スアは、美人で気が強く、頭も良い。セロイ因縁のバカ息子グンウォンも、高校時代からスアのことが忘れられないというモテキャラだ。セロイの父を本当の父のように慕い養護施設で育ったが、自分の欲望のためにセロイ一家を裏切り、「長家」会長の支援で大学へ進学、卒業後は長家の戦略企画室長としてバリバリ働くキャリアウーマンとなる。セロイが梨泰院に店を開くことにこだわったのは、スアとの思い出の地だったからだ。
そして、もうひとりが「タンバム」のマネージャーとしてセロイのビジネスを支える、チョ・イソ。正統派美人というより、個性派のイソは、「できないことがない」と言われるIQ160超の天才少女だが、ソシオパス（反社会性パーソナリティ障害）で、自我が強すぎる一面も持ち合わせている。高校時代に偶然出会ったセロイのまっすぐさに一目ぼれして、名門大学入学を放棄し、「タンバム」のマネージャーとして就職。インスタフォロワー76万人というインフルエンサーの人気と経験を活かし、ひん死の「タンバム」を一躍人気店に引き上げた。
セロイにとっても欠かせないビジネスパートナーとなっていくイソは、「タンバムを韓国一にして、必ずセロイを幸せにする！」と公言。セロイにされる「頭ポンポン」は、イソにとっての魔法だ。
お金や権力に屈せず、ひたすら愛と向き合うイソの姿に共感する女性も多く、韓国ではイソの個性的なツートーンボブヘアやストリートファッションがブームになるほどの人気となった。
そんな強烈なイソを演じきった女優、キム・ダミは、現在25歳。本格的なドラマ出演は同作が初となり、一躍注目株として躍り出た。
果たしてセロイは初恋を貫くのか、それともイソの押しに負けるのかは、ドラマでご確認を。また、セロイだけでなく、登場人物たちが「全員片思い」という切なさも本作の見どころの一端になっている。
主人公セロイは、中卒の前科者。イソも天才だがソシオパス。ほかにもタムバムには元ヤクザでセロイのムショ仲間のチェ・スングォン、ジェンダーに秘密を抱えるマ・ヒョニ、愛人の子として兄と差別されて育ったチャン・グンス、アフリカ系韓国人ハーフのトニーなど、マイノリティが集まっている。しかし、そういう人たちが集まるのも梨泰院という街なのだ。
作中に梨泰院の飲食ビジネスの顔として登場するホン・ソクチョンは、韓国芸能人で初めて同性愛者であることをカミングアウトしたタレント。実際に、梨泰院を何件もレストランを経営している彼が、本人役で出演しているのもドラマのスパイスだ。人気タレントとして活躍していたホン・ソクチョンがカミングアウトした2000年当時の韓国は、今よりもはるかにLGBTに不寛容で、その告白で彼はすべての仕事を失った。彼が地上波の番組に再び出演できるようになったのは、実に7年もあとのことだったが、その失業期間にタイ料理を初めて韓国に持ち込み、梨泰院にエスニックをはじめ何軒ものレストランをオープンさせたという人物だ。そういうバックボーンも知ってドラマを見ると、また違う見方ができるかもしれない。
ドラマでは、タンバム従業員それぞれの物語もクローズアップされている。社会的マイノリティといわれる登場人物たちが、差別を絶対に許さないセロイの元で成長していく姿は、多様化を唱える現代を象徴する新しい青春群像劇。これも、『梨泰院クラス』ならではだ。
また、K-POPファンの間では、ドラマのサウンドトラックも話題となった。今や世界的なアーティストとなったBTSのメンバーVが、ソロとして「Sweet Night」よいう曲を歌っているからだ。Vはセロイを演じたパク・ソジュンとドラマ『花郎＜ファラン＞』で競演し、仲が良いことも知られている。VにとってドラマOST曲は『花郎＜ファラン＞』に続く2曲目となるが、自身が出演していない作品には初、しかも作詞、作曲と、歌だけでなくプロデュースにも関わった曲を提供している。アコースティックギターに乗せたVの低く甘い歌声にも注目だ。
（坂本ゆかり）
Netflix
『梨泰院クラス』
2020年
1シーズン（16話）
出演／パク・ソジュン、キム・ダミ、ユ・ジェミョン
大都市ソウルの中でもひと際ホットな街で、小さな飲み屋を開店させた前科者の青年とその仲間たち。成功をつかむため、大物相手に無謀ともいえる戦いを仕掛ける。
視聴ページ：https://www.netflix.com/jp/title/81193309
イラスト／おうか
信念を曲げないまっすぐな男、パク・セロイに共感
この春、『愛の不時着』とともにNetflixのチャート上位を賑わせた韓国ドラマが『梨泰院クラス』だ。
『サム、マイウェイ～恋の一発逆転!～』『キム秘書はいったい、なぜ?』など、数々のラブコメ主演で人気の俳優パク・ソジュン。大ヒット映画『パラサイト』の石をくれるオッパ（お兄さん）や、日本でも中島健人と平野紫耀のＷ主演でリメイクされるドラマ『未満警察 ミッドナイトランナー』の原作映画『ミッドナイト・ランナー』主演など、幅広い作品に出演するイケメン俳優の彼が、特徴的なイガクリ頭で主人公のパク・セロイに変身。
やられてもやられても敵に立ち向かうセロイの姿は、「韓国の半沢直樹」とも例えられたが、高校時代からの因縁を引きずり、小さな居酒屋から業界トップを目指すという15年にもわたる壮絶なビジネス復讐劇は同世代の男性たちの共感も集め、『愛の不時着』同様、日本でも男性がだだハマりし、人気芸人、トレンディエンジェル・斎藤司のように、セロイの髪型をマネする人も多発。
『梨泰院クラス』は、芸人界隈での盛り上がりもすごく、EXIT・りんたろー。は、挿入歌「Someday，the Boy」を韓国語で熱唱してTikTokで公開したり、千鳥・ノブはイラストをしたためたり、オリエンタルラジオ・藤森慎吾は自身のYouTubeチャンネルで、次長課長・河本、スピードワゴン・小沢、平成ノブシコブシ・吉村らと「梨泰院クラスリモート座談会」を開催。サバンナ・高橋も自身のYouTubeチャンネルのオンライン飲み生配信で、今田耕司、千鳥・ノブ、ダイアン・津田と「梨泰院クラス最高！」と絶賛した。
原作は、人気ウェブマンガ。ドラマのシナリオも、原作者チョ・グァンジン自身が手がけている。
日本版になったマンガのタイトルが『六本木クラス』ということからもわかるように、梨泰院（イテウォン）は、ソウルの夜の街。大使館や米軍基地があり、外国人が多く集まる繁華街だ。この梨泰院に、セロイは小さな居酒屋「タンバム」（甘い夜）をオープンさせる。
セロイの人生は壮絶だ。その波乱は、高3から始まる。警察官を夢見ていた正義感の強いセロイは、転校初日に大手外食チェーン「長家（チョンガ）」の御曹司、チャン・グンウォン（アン・ボヒョン）のいじめを戒めたことをきっかけに、退学させられてしまう。
絶大な権力を持つ「長家」会長と、典型的な財閥2世のバカ息子との悪縁はそれだけに留まらず、ふたりのせいでセロイは愛する父を失い、刑務所にまで入れられ、警察官への夢も絶たれてしまう。
獄中で「長家」への復讐を誓ったセロイは、出所後、7年かけて貯めた資金を元手に、梨泰院に念願の居酒屋「タンバム」を開業するが、梨泰院で因縁の父子と再会し、小さな居酒屋と韓国有数の大企業とのバトルが始まる。
踏みつけられても、何度でも立ち上がるセロイ。「人は信念を持って生きなければいけない」という父の言葉を胸に、どんなにピンチが訪れても正義感と信念は決して曲げずに真正面から戦い、仲間を見捨てず、いつもまわりに気遣いながらもビジネスを拡大していくその姿に、『半沢直樹』『下町ロケット』など日曜劇場が大好きな人は、必ずハマるはずだ。
何度フラれても負けないヒロイン、なんと登場人物は「全員片思い」！
画像は番組配信ページより
物語にはもちろん、下剋上の復讐劇だけでなくロマンスもある。セロイをめぐる恋のライバルは、天才少女チョ・イソ（キム・ダミ）と、初恋の相手オ・スア（クォン・ナラ）のふたり。どちらも一筋縄ではいかない、芯のある女性だ。
ビジネスでは強気にグイグイ攻めるセロイも、恋愛には不器用でオロオロしてしまう。そんなギャップも共感するポイントだろう。
ガールズグループHELLOVENUS出身のクォン・ナラが演じる初恋の人スアは、美人で気が強く、頭も良い。セロイ因縁のバカ息子グンウォンも、高校時代からスアのことが忘れられないというモテキャラだ。セロイの父を本当の父のように慕い養護施設で育ったが、自分の欲望のためにセロイ一家を裏切り、「長家」会長の支援で大学へ進学、卒業後は長家の戦略企画室長としてバリバリ働くキャリアウーマンとなる。セロイが梨泰院に店を開くことにこだわったのは、スアとの思い出の地だったからだ。
そして、もうひとりが「タンバム」のマネージャーとしてセロイのビジネスを支える、チョ・イソ。正統派美人というより、個性派のイソは、「できないことがない」と言われるIQ160超の天才少女だが、ソシオパス（反社会性パーソナリティ障害）で、自我が強すぎる一面も持ち合わせている。高校時代に偶然出会ったセロイのまっすぐさに一目ぼれして、名門大学入学を放棄し、「タンバム」のマネージャーとして就職。インスタフォロワー76万人というインフルエンサーの人気と経験を活かし、ひん死の「タンバム」を一躍人気店に引き上げた。
セロイにとっても欠かせないビジネスパートナーとなっていくイソは、「タンバムを韓国一にして、必ずセロイを幸せにする！」と公言。セロイにされる「頭ポンポン」は、イソにとっての魔法だ。
勝ち目のないライバルがいるのを知っていても、何度断られても、ターミネーターのごとく、あきらめずに体当たりでセロイに愛を伝え続けるという、ニュータイプのヒロインが誕生した。
お金や権力に屈せず、ひたすら愛と向き合うイソの姿に共感する女性も多く、韓国ではイソの個性的なツートーンボブヘアやストリートファッションがブームになるほどの人気となった。
そんな強烈なイソを演じきった女優、キム・ダミは、現在25歳。本格的なドラマ出演は同作が初となり、一躍注目株として躍り出た。
果たしてセロイは初恋を貫くのか、それともイソの押しに負けるのかは、ドラマでご確認を。また、セロイだけでなく、登場人物たちが「全員片思い」という切なさも本作の見どころの一端になっている。
多様化の時代は、ドラマにも反映
主人公セロイは、中卒の前科者。イソも天才だがソシオパス。ほかにもタムバムには元ヤクザでセロイのムショ仲間のチェ・スングォン、ジェンダーに秘密を抱えるマ・ヒョニ、愛人の子として兄と差別されて育ったチャン・グンス、アフリカ系韓国人ハーフのトニーなど、マイノリティが集まっている。しかし、そういう人たちが集まるのも梨泰院という街なのだ。
作中に梨泰院の飲食ビジネスの顔として登場するホン・ソクチョンは、韓国芸能人で初めて同性愛者であることをカミングアウトしたタレント。実際に、梨泰院を何件もレストランを経営している彼が、本人役で出演しているのもドラマのスパイスだ。人気タレントとして活躍していたホン・ソクチョンがカミングアウトした2000年当時の韓国は、今よりもはるかにLGBTに不寛容で、その告白で彼はすべての仕事を失った。彼が地上波の番組に再び出演できるようになったのは、実に7年もあとのことだったが、その失業期間にタイ料理を初めて韓国に持ち込み、梨泰院にエスニックをはじめ何軒ものレストランをオープンさせたという人物だ。そういうバックボーンも知ってドラマを見ると、また違う見方ができるかもしれない。
ドラマでは、タンバム従業員それぞれの物語もクローズアップされている。社会的マイノリティといわれる登場人物たちが、差別を絶対に許さないセロイの元で成長していく姿は、多様化を唱える現代を象徴する新しい青春群像劇。これも、『梨泰院クラス』ならではだ。
また、K-POPファンの間では、ドラマのサウンドトラックも話題となった。今や世界的なアーティストとなったBTSのメンバーVが、ソロとして「Sweet Night」よいう曲を歌っているからだ。Vはセロイを演じたパク・ソジュンとドラマ『花郎＜ファラン＞』で競演し、仲が良いことも知られている。VにとってドラマOST曲は『花郎＜ファラン＞』に続く2曲目となるが、自身が出演していない作品には初、しかも作詞、作曲と、歌だけでなくプロデュースにも関わった曲を提供している。アコースティックギターに乗せたVの低く甘い歌声にも注目だ。
（坂本ゆかり）
番組情報
Netflix
『梨泰院クラス』
2020年
1シーズン（16話）
出演／パク・ソジュン、キム・ダミ、ユ・ジェミョン
大都市ソウルの中でもひと際ホットな街で、小さな飲み屋を開店させた前科者の青年とその仲間たち。成功をつかむため、大物相手に無謀ともいえる戦いを仕掛ける。
視聴ページ：https://www.netflix.com/jp/title/81193309
