今日19日、21時より日本テレビ「金曜ロードSHOW!」で「バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2」が放送される。

劇中でドクが2015年10月21日を「30年後の未来世界」だと言う場面が出てくるが、その“未来”だった2015年10月21日にエキレビ!に掲載したオグマナオト氏によるレビューを再掲する。
(日付などは当時のまま掲載)。

『バック・トゥ・ザ・フューチャー2』のワールドシリーズはなぜ「シカゴ・カブス対マイアミ」なのか
バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2/ジェネオン・ユニバーサル

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マーティ「ここ、どこさ? 今、いつなの?」
ドク「カリフォルニアのヒルバレーを稼働中だ。時間は午後4時29分。10月21日水曜日、2015年のな!」
マーティ「2015年だって!? 未来にきてるの?」

とうとう、その未来が現実となってやってきた。

1989年公開の映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』(以下、BTTF2)。この映画のなかでは「現代」が“1985年10月”、「未来」が“2015年10月21日”として描かれている。
つまり、今日2015年10月21日がBTTF2 における「30年後の未来世界」なのだ。

BTTF2と「スポーツの過去・未来」


この「未来と現実世界の邂逅」にあわせるように、ホバーボードや自動靴ひもスニーカーなど、BTTF2で描かれていた技術の進歩はどうなった? といった検証記事を目にすることが多い。

その一方で見過ごしがちなのは、この映画の鍵は「未来技術」以上に「スポーツ」が握っている、ということだ。宿敵ビフは未来から持ち帰ったスポーツ年鑑を使って財を築き、パラレル世界となる「荒廃した1985年」を作り出している。

この「スポーツの過去・未来」を象徴的に語るために描かれているシーンがある。2015年、時計台前での乱闘劇直後のマーティ(マイケル・J・フォックス)の次の台詞だ。

「カブスがワールドシリーズで優勝!? しかもマイアミに!?」

このマーティの驚きにはふたつの意味がある。

ひとつが、優勝とはとことん縁がないシカゴ・カブスがワールドシリーズを制したこと。そしてもうひとつが、マイアミに野球チームがあることだ。

シカゴ・カブスと「ヤギの呪い」


シカゴ・カブスは、球団創設が1871年という、MLBのなかでも歴史ある球団のひとつ。ただ、ワールドシリーズ(※MLBのナショナルリーグとアメリカンリーグの優勝チーム同士による年間王者決定戦)にはとことん縁がない。

MLB黎明期の1907・08年にシリーズ連覇を果たして以降、ワールドシリーズには7回出場して全て敗退。1945年以降はワールドシリーズへの出場すらできていない。

劇中で1985年を生きるマーティにとって、シカゴ・カブスとは「40年間ワールドシリーズとは無縁の弱小チーム」を意味する。
そんなカブスが世界一になったから驚いたのだ。

カブスが優勝できない、というエピソードは、MLB好きにとっては「ヤギの呪い」として語られるほどの定番ネタだ。映画とは少し離れるが、ここで「ヤギの呪い」について書いておきたい。

1940年代、シカゴ・カブスの本拠地リグレー・フィールドには、いつもペットのヤギを連れて球場入りし、声援をおくる熱狂的なカブスファンがいた。ところが、1945年のワールドシリーズ、シカゴ・カブス対デトロイト・タイガースの第4戦に限って、球団側は今まで問題にしていなかったヤギの入場を拒否したのだ。

このことに激怒した男は、「2度とここでワールドシリーズがプレーされることはないだろう」と言って球場を後にした。
すると、この言葉がまるで予言であったかのように、カブスはここから3連敗してワールドチャンピオンを逃してしまう。そして70年たった今でも、ワールドシリーズはもちろんのこと、リーグ優勝もできないチームになってしまったのだ。

このエピソードを知っておくと、劇中でのマーティの怪訝な表情がより理解できるはずだ。

「マイアミ」になぜ驚くのか?


では、もう一方の「マイアミ」について。

マイアミのチーム、といえば、イチローが所属するマイアミ・マーリンズが思い浮かぶ。だが、カブスと違い、映画のなかで具体的なチーム名は言及されていない。なぜなら、1985年時点でマイアミにはMLBチームが存在しないからだ。


マーティが驚いたのは、まったく知らない球団が栄えあるワールドシリーズに出場していたから、にほかならない。

これは日本に置き換えると、2045年にタイムトラベルしてみたら「新潟の球団が日本シリーズに出場し、負けていた」という感じではないだろうか(なんか、ちょっとありそう、という点も含め)。

実際にマイアミにMLBチームができたのは1993年のこと(※当時は「フロリダ・マーリンズ」)。ただ、球団創設後わずか5年でワールドシリーズを制覇するという、カブスとは対称的な好成績も残している。

ちなみに、シカゴ・カブスとマイアミ・マーリンズはどちらもナショナルリーグ所属。リーグ再編がない限り、この先も映画のようにワールドシリーズで対戦することはありえない。


いずれにせよ、制作陣は最新VFXに頼らず、「シカゴ・カブス対マイアミ」という台詞だけで“意外性のある30年後の未来”を描いた、というわけだ。

2015年、シカゴ・カブスの「未来」は?


で、現実世界が面白いのはまさにここからだ。

2015年10月21日現在(※日本時間)、シカゴ・カブスはワールドシリーズ出場をかけた「ナ・リーグ優勝決定シリーズ」を戦っている。ここで4つ勝てば、1945年以来、70年ぶりのワールドシリーズ出場を果たすことになる。

この原稿を書いている時点ではニューヨーク・メッツに2連敗中。またしても「ヤギの呪い」に屈するのか。それとも、「カブスがワールドシリーズで優勝!?」というBTTF2の予言が現実となるのか。

映画ファンも野球ファンも、この先の「未来」に注目だ。
(オグマナオト)

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