『半沢直樹』土下座土下座…土下座野郎!出世したいだけ伊佐山の土下座8連発と半沢の栄転にスカっと 4話
イラスト/ゆいざえもん

今回も名言連発 『半沢直樹』4話

日曜劇場『半沢直樹』(毎週日曜 よる9時〜 TBS系)第4話(8月9日放送)は、原作小説の『ロスジェネの逆襲』完結編。セントラル証券の若手・森山(賀来賢人)浜村(今田美桜)、IT界の寵児・スパイラルの瀬名(尾上松也)たちは“ロスジェネ”。上の世代が作った荒れ野で割を食う彼らへの半沢(堺雅人)のメッセージが語られる感動回。


だが、それよりやっぱり、大和田(香川照之)伊佐山(市川猿之助)たちと半沢の、飛沫が激しく舞いそうなほど怒鳴り合う熱いバトルのカロリーが高過ぎて、そこしか記憶にない。でもがんばって振り返ってみる。

親会社・東京中央銀行による子会社・セントラル証券虐め。この闘いの終止符を打つため、半沢は「行くか、静岡」と森山と二人、富士山の麓に向かう。そこには、美しい富士山と今回の事件の鍵を握る電脳雑技団の子会社・電脳電設があった。

電脳雑技集団、財務担当・玉置克夫(今井朋彦)の父・玉置社長(高橋長英)の作ったコイルネジの出来の良さに注目する半沢。さすが、町工場の生まれ。根っこはものづくりの心でできている。こうして社長の懐に入っていく。半沢と森山が橋の上で富士山を背景にして語り合う画が妙にいい感じであった。

画といえば、この回、コロナ禍でソーシャルディスタンスを意識した撮影方法を採るようになったらしく、最後の審判的な横並びのシーンが増えた。いよいよ半沢の出向が決まりそうと語るとき、森山、渡真利(及川光博)、半沢、刈田(丸一太)とか、智美(井川遥)の小料理屋でも森山、渡真利、半沢の3人横並びで食べていた。
渡真利と半沢が隣り合わせで飲みながら情報をやりとりしているのはコロナ以前からか。

半沢と大和田が手を結ぶカタルシス

画の話はともかく、東京中央銀行からセントラルに出向させられ、さらにまた島流しにされそうな半沢だったが、「人事が怖くてサラリーマンがつとまるか」と東京中央銀行と電脳雑技集団との黒い関係を暴いていく。「悪党は電脳だ」「もはや銀行と証券が争っている場合じゃない」と判断する。結果、あの大和田と手を結ぶことになるところがこの回の最高のカタルシス。その原因は伊佐山の裏切りであった。

第一話の冒頭、伊佐山は尊敬する大和田に大恥をかかせた半沢を許さないと復讐に燃えていたが、大和田から副頭取・三笠(古田新太)に乗り換えたふりをして暗躍しているうち、本当に三笠派になって大和田を裏切っていて、大口の帝国航空の案件に大和田を外して伊佐山だけが入り込んでいた。

例のだだっ広い役員会議室で語り合う大和田と伊佐山の会話を盗み聞きする渡真利。

「ここで半沢に土下座して」
「あんたのせいだ、あんたがした土下座のせいだ」
「くだらん土下座のせいだ」
「つまらん土下座のせいだ」
土下座
土下座がすべてを潰したんだ」
土下座のせいでどれだけ泥水飲まされたか」
土下座野郎

伊佐山、「土下座」8回連発。この話を渡真利が半沢たちに逐一報告しているかと思うと笑える。

結局、伊佐山は大和田を人として尊敬していたわけではなく、出世したかっただけであった。

『半沢直樹』土下座土下座…土下座野郎!出世したいだけ伊佐山の土下座8連発と半沢の栄転にスカっと 4話
第5話は8月16日放送。画像は番組サイトより

「自分のことばっかだよ」「理不尽すぎる。やってられません」と苛立つ森山に、「じゃあ戦え」と発破をかける半沢。敵が漠然としているという森山に、「いちばん厄介なのは敵が自分自身のときだ」と言う。
そんなとき「剣道でいえば“自分の型”を持っていること」が大事であると剣道の精神を例に諭す。

1. 正しいことを正しいと言えること
2. 組織の常識と世間の常識が一致していること
3. 一生懸命働いた人が報われること

こんな当たり前のことが守られない社会。「仕事は客のためにするものだ。ひいては世の中のためにするもの」なのに私利私欲に走る者たちがなんと多いことか(チコちゃんのナレーション風)。

「自分のためにした仕事は内向きで卑屈で醜くゆがんでいく」と半沢は言う。どんなに腐った社会になっても、森山たち、若者に正しく生きてほしいと半沢は志を伝えるのであった。

半沢、晴れて栄転。だが、半沢の鬼退治はまだまだ続く――。

大きな敵に敗れ、出向させられる覚悟で後輩に言葉を残した半沢だったが、大和田と共闘することに成功。大和田の車の前に立ちはだかり、「エンジン切れ!」と大迫力。「どっちなんだ!」と凄み、「明日の役員会議で発言させていただきたい」と天王山の役員会議に出席することに。押しの強さと悪運の強さが半沢直樹。


こういうときの堺雅人は声がお腹から出ていて肝が座って見える。剣豪感醸す堺に香川照之がギャンギャンわめいて負け犬感を出すことでよけいに堺が強く見える。香川照之はものすごく目立つが、その一方で巧みに堺雅人を上げてもいるのである。そこが名優である所以。

役員会議で半沢は稟議書に重大な欠陥があると指摘、電脳雑技集団の都合の悪い事実――粉飾があったことを暴き立てる。役員たちざわざわざわ。

「ゴミ扱いしているのではありません。ゴミだと申し上げているのです」と声をあげる半沢。このセリフがSNSでは盛り上がっていた。「ゴミじゃなーい!」と反発する伊佐山。猿之助もまた滑稽な小物感を出して、堺雅人の凛々しさを際立たせている。伊佐山に土下座させようとする三笠。
でも三笠にも隠し事があって……。

香川を犬とすれば、猿之助は名前からして猿、残りのキジは、唯一力を抜いてバランスをとっている古田に当てはめてみよう。この3人が堺――桃太郎を全力で盛り上げるといった構図が浮かび上がってくる。

三笠「見てなーい」
諸田「ガーン」

ここも笑えた。

諸田役の池田成志は小鬼みたいで、頭取北大路欣也は閻魔様とかえらい神様みたいで、善人による悪者退治というエンタメの基本構造のなかで、俳優が各々の役割を正しく演じている。彼らの大きな演技、そこにつく大仰な劇伴につい流されてしまうが、冷静に考えると、たくさんの人を巻き込んでひどい目に合わせ、一部の者たちだけが利益を貪るような悪事が、結局、盗み聞き(録音など)でバレてしまうほどの迂闊さで成立していることへの呆れと憤りを禁じえない。でもこれが社会でまかりとおっている事実が虚しい。だからこそ、半沢直樹が闘って悪の鼻を明かし、視聴者の気持ちを楽にしてくれる。

「看板を失っても輝きつづけるのが真に優秀な人材」であると頭取は諸田、伊佐山、三笠に電脳への出向を命じる。そして島流しにあうことを覚悟していた半沢は、東京中央銀行に返り咲くことになった。

がしかし、半沢は帝国航空再建計画という大きな案件を任される。これは大和田が狙っていたものだが、なぜか半沢に譲ってしまうのだ。
頭取のおかげで生きながらえているのだから「恩返しだよ」と歌舞伎調に言う大和田。犬のふりした悪魔っぽい。そういえばメフィストフェレスは犬に化けていたっけ。

それには第二次改造内閣も関わっていて……。今度は国家権力と闘うことになる半沢直樹。柄本明、段田安則、江口のりこ、木場勝己、石黒賢、山西惇 等々、またまた怪優たちが集結。半沢直樹の鬼退治はまだまだ続く――。
(木俣冬)

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番組情報

日曜劇場『半沢直樹』
毎週日曜よる9:00〜9:54

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/hanzawa_naoki/
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