
「まさか」のドラマ『先生を消す方程式。』
「人生にはまさかのことが起こるんです」【前話レビュー】いきなり明かされる生徒・教師の正体 考察を楽しむ餌が随所に
『先生を消す方程式。
義経、「まさか」の不死身
第2話で義経(田中圭)は大木薙(森田想)に階段から突き落とされる。「俺たちならできるよ。義経を消す方程式、立・て・よ!」と藤原刀矢(高橋文哉)が1話で言っていたが、方程式なんて関係ない。ただ、殺るだけだった。そうなったのは薙に起こった「まさか」。父が餃子チェーン店の社長を解任、会社から追放になったことで4Cのステージから堕ちざるを得なくなり、そうならないように自ら手を汚す。
けしかけたのは朝日先生(山田裕貴)。悪魔のような教師である。第1話で、ものすごく善人ふうに登場したが、ラストでまさかの悪人だったことが早くもわかっている。
義経にお弁当を手渡したり、「L・O・V・Eのラブレターですよ」とか言ったりするかわいげの裏に、とてつもなく獰猛な顔が隠されていると視聴者に織り込ませることで、視聴者はひたすら、義経逃げてーと、義経に気持ちが集中できる。
かなり古い例で恐縮だが、『8時だョ!全員集合』の「志村、後ろ! 後ろ!」的な笑いの方程式。視聴者は志村けんの後ろに危機が迫っているのがわかっていて、「後ろ! 後ろ!」とハラハラしながらテレビを観る。
『先生〜』では、義経、危ない、危ないと応援しながら私たちは観る。バラエティー番組を多く手掛ける放送作家・鈴木おさむだから、こういうエンタメのツボをよく心得ている。

「事故に見せかけて、押す! バーーーン!!」の「バーーーン!!」の発し方がやばい朝日。影で生徒をたきつけている彼と比べて、義経は気高い。そのうえ、「限界ギリギリ……嫌いじゃないです」。
今回の方程式は「人生―友達=幸せ」
階段から突き落とされて頭を打ち(田中圭、死んだ顔も迫真。目の塊具合)、骨折しながらも教壇に立ち、自分のいまのこの状態から、恋人・前野静(松本まりか)が階段から突き落とされて首の骨を折って生命維持装置によってかろうじて生き長らえていることを語る。義経は1話から続けてちゃんと方程式を書く。今回は「人生―友達=幸せ」。
「自分を捨ててまで必要な友達なんていないんだよ!! ひとりで生きろ」
人生に大切なことを生徒に教え、「はい、仲直り」と握手。綺麗な手指は義経の清らかさの現れのようで。主題歌が流れて、いい話でいったん終わりそうになるのは1話と同じ。でも、簡単に生徒が毎回、ひとりずつ、善人化するかといえば、そうではない。
そしてまた、朝日の真相が明かされる。ぼろぼろな身体で授業した義経に肩を貸して歩く朝日に「犯人はあなたですよね」と投げかける義経。「まさか」がまたひとつーー。
スピンオフも見逃せない
朝日がヒール過ぎて、滅多に観ないスピンオフ『頼田朝日の方程式。―最凶の授業―』までABEMAで観てしまった。たまたま手にいれた朝日のひとり授業の動画を見る4C。これは、義経の授業のあとに朝日がアンサー的に4Cに向けてやっている授業だった。山田裕貴が毎回長台詞を語る健闘作。
「嫌いじゃないです」の義経に対抗して、そんな義経が「嫌いです」と喚いていた。
第1話は「金銭力×行動力×知力=権力」。
「努力は無力!」「権力は真実を書き換える力があるんだよ」と刀矢に呼びかける。
第1話は「友情=需要×供給」。
「うずく〜」とか合いの手まで用意する凝り用。
「友達」は需要と供給で変わっていい。だから、義経と僕も友達だと主張する朝日。
「あの人はこの世から消されたがっている。
これを観ると、朝日が「後ろ! 後ろ!」要因ではなく、源義経と源頼朝の戦いのごとく、因縁の対決に本編でもなってきそうな気がしてくる。
最後に本編に戻って、第2話の謎。薙の家は資産もなくなったのだから、ステージを降りるどころか、学費を払えないことを心配したほうがいいのでは。
そもそも薙はなぜクラスメイトにパパ活をさせてその稼ぎを長井弓(久保田紗友)に納めていたのか。薙も弓もお金持ちなのにみみっちい稼ぎは必要なのだろうか。そして、この高校、生徒な皆、お金持ちで、パパ活なんかしなくてもホントのパパにお小遣いいくらでももらえるのではないのか。
一部は庶民で、4Cはお金があるのに庶民から上納金を巻き上げる権力者の象徴ってことなのか。格差広がる現代社会の縮図が見えてくる。
(木俣冬)
※次回3話のレビューを更新しましたら、以下のツイッターでお知らせします。
お見逃しのないよう、ぜひフォローしてくださいね。
【エキレビ!】https://twitter.com/Excite_Review
【エキサイトニュース】https://twitter.com/ExciteJapan
番組情報
テレビ朝日系『先生を消す方程式。毎週土曜よる11:00〜
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/houteishiki/