上野樹里『監察医 朝顔』愛情を確かめ合うように手を握る朝顔と桑原 そして予想外の発砲事件で次回へ!
イラスト/ゆいざえもん

※本文にネタバレを含みます

サスペンス性高まる『監察医 朝顔』5話

聖奈って誰?

【前話レビュー】家庭描写ばかりで飽きてきた視聴者の心を見透かすような4話の展開、さすがです

桑原真也(風間俊介)とLINEで連絡をとっている女性が気になる『監察医 朝顔』第5話。朝顔(上野樹里)、桑原、平(時任三郎)、登場人物それぞれが、それぞれの問題に向き合っていく。

朝顔と平は、震災で行方不明になった里子(石田ひかり)問題。
平はとうとう辞表を提出し、仙ノ浦で里子を探しながら生きていく意思を固めた。朝顔は、祖父・浩之(柄本明)の秘密と心情を聞いて、心悩ませる。

桑原は、謎の若い女・聖奈(中村里帆)と会っていて……。

仙ノ浦に来ていた朝顔は行きがかり上、岩手の住人を解剖することになった。そこになぜか丸屋(杉本哲太)がいるので、東京と混乱してしまうが、ここは間違いなく岩手。青々した自然がまぶしい。ついでに朝顔の着ているTシャツも草のような緑色だった。

8年間、脳梗塞で寝たきりだった老女が亡くなったのは2日前。介護していた娘・奈々子(池津祥子)が連絡してきたのはその1日後。なぜ、通報を1日遅らせたのか……と疑問を口にする丸屋に対して、地元の刑事は旧知の奈々子をかばう。

朝顔は岩手の北上医大で解剖を行うことになったが、人手が不足しているので、恵美(平岩紙)光子(志田未来)をヘルプに呼ぶ。当然ながら、光子たちも丸屋がいることを驚くのであった。


丸屋は丸屋で、これまで半目していた伊東(三宅弘城)が突如上司になったことに戸惑い、彼なりに気を落ち着かせようとしているらしい。

解剖の結果、睡眠薬の過剰摂取。薬の管理をしていた奈々子の疑惑が深まる。

朝顔たちの解剖によって、奈々子と寝たきりの母の8年間の様々な想いが浮き上がってくる。震災から若い人が地元を出て行って寂しくなった地域で、寝たきりの母と、8年、介護し続けてきた娘との、それぞれのやるせない想いが、誰にも知られることなく消えていくよりも、こうして誰かにわかってもらえたことはよかったのかもしれない。

朝顔が向き合うご遺体の物語と、朝顔の里子への想いが毎回重なっていくのが『監察医 朝顔』。今回の朝顔は、寝たきりの母と彼女を介護してきた娘の姿から、答えのはっきりしないこと、ゴールの見えないことを、長く続けていくことの苦しみと、それゆえにどこかで終止符を打ちたくなる気持ちに向き合う。

はっきりさせたい朝顔とはっきりさせたくない浩之

そんな想いを抱えているのはこの母娘だけではない。朝顔は、浩之がそっと取っておいた、里子のものらしき歯を1本、見つける。これが本当に里子のものなのか? 調べるのは朝顔の得意ワザだが、調べたくないと浩之は言う。

「もうおしまいにしたい」「俺が死ぬまで調べるのを待ってくれないか」と頭を下げる、その深さに、浩之の抱えきれない想いの重さがのしかかる。

はっきりさせたい人もいれば、はっきりさせたくない人もいる。

帰宅した朝顔は平と桑原に浩之の想いを伝える。
それでも平の、仙ノ浦に行く気持ちは変わらない。
もし自分が里子だったら探してほしいと思うだろうか……。朝顔と桑原は想いを巡らす。

朝顔の気持ち。
桑原の気持ち。
それぞれの考え方。

考え方は違っても、大切な人を忘れない、忘れたくない気持ちは同じ。ふたりは愛情を確かめあうように手を握り、ふたりの大事な娘・つぐみ(加藤柚凪)の眠る寝室へ――。

上野樹里『監察医 朝顔』愛情を確かめ合うように手を握る朝顔と桑原 そして予想外の発砲事件で次回へ!
第6話は12月7日放送。画像は番組サイトより

朝顔と桑原はこんなにもわかりあっているように見える。にもかかわらず、桑原は朝顔に内緒で、やたら露出度の高い服を着ている謎の若い女・聖奈と連絡をLINEで取り、実際に会ってもいた。

お茶の間をざわつかせた桑原発砲事件

ある日、朝顔が、医学部生・熊田(田川隼嗣)を送る会で盛り上がっているとき、桑原は雨のなか聖奈と向き合っている。そして、「銃を捨てろ」と発砲――。

予告では「万木家最大のピンチ」「桑原が殺人事件の容疑者」と煽る。
朝顔と里子の問題もはっきり解決したわけではないにもかかわらず、今度は桑原に問題が勃発か。聖奈って誰? あまりに唐突で、過去回、見逃している? と焦ってしまった。

これまで、折坂悠太が<ここに願う、願う>と厳かに歌う鎮魂曲のような主題歌「朝顔」(Less+Project.)がいい感じに流れる、ゆるやかな遺された者たちの祈りの世界だった『監察医 朝顔』がにわかにサスペンス性が高まるわけは、異例の2クール放送予定だから、視聴者に刺激もなくてはいけないというところであろう。

みごとに、SNSは、なんの前触れもない、桑原発砲事件にあたふたした。その前に、平が「気をつけてな、いろいろと」と桑原に意味深に言っていた言葉も気になる。

なまじ、桑原を演じている風間俊介が、いい人に見えてがらりと豹変する役が巧いものだから不安になるのである。雨のなか、銃を撃ったあとの表情は迫真だった。

Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami


番組情報

フジテレビ『監察医 朝顔』
毎週月曜よる9:00〜

公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/asagao2/

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