『24 JAPAN』現馬(唐沢寿明)、朝倉麗(仲間由紀恵)、研矢(上杉柊平)にイライラ 10話
イラスト/AYAMI

※本文にはネタバレがあります

新たな登場人物が続々登場『24 JAPAN』10話

どんなに気が急いていても、他人の車を盗んでも、シートベルトは忘れない。最低限の交通ルールを守る男・獅堂現馬(唐沢寿明)

【前話レビュー】六花と菫 ふたりの母親の子を想う気持ちの強さ描く9話

『24 JAPAN』(テレビ朝日系 毎週金よる11時15分〜)第10話は午前9時〜10時。
現馬は車に乗って、妻・六花(木村多江)と娘・美有(桜田ひより)が捕われている場所に向かう。

頼りは、六花が隠し持った市来(山口大地)のスマホからの逆探知。スマホを失くしたと躍起になって探しにくる市来からスマホを隠し通せるか、見つかっちゃうのか、ハラハラしどおしの1時間だった。ハラハラのほかにイライラもあって、それが絡み合い、言いしれない快感が得られる金曜深夜。

逆探知はいつも飄々としているマイロ(時任勇気)が担当している。彼と半目しあっていた明智菫(朝倉あき)は自殺を図り、病院に搬送されたものの、出血多量で死亡。残された子供のことを思って胸が痛そうな顔をするマイロ。懸命に逆探知して、だいぶ場所が絞れてきて、くねくねした山道を通った先の、工場地帯……というところまでわかったが…スマホが痛恨の電池切れ。

このスマホをめぐるやりとりで、これまで何もしていない研矢(上杉柊平)がついに役に立つ場面があるが、それももつかの間、最終的に、視線をスマホの隠し場所に向けてしまったがために……という残念な結果に。ここがイラっとした。はたして、研矢が活躍するときは来るのだろうか。

イライラするもうひとりは、朝倉麗(仲間由紀恵)
朝7時から投票がはじまっていると、カーラジオからキャスターの声がするなか、夫・遥平(筒井道隆)の運転で麗が向かったのは、とある施設。そこでは子どもたちの発表会が行われるのだ。

“朝倉麗は選挙とは関係なく、純粋に昔との関係を大事にする”ことはイメージ的に悪くないので誰も反対できない。でも、暗殺犯に狙わられているときに子供たちのいる施設に行って、彼らが巻き込まれたら……とは考えないのだろうか。

時間が経過して、登場人物の行動範囲が広がってくると、んんん? と思うことも増えてくる。

あんなに自分が死んだことを明かしたくないからと姿を隠そうとしていた伊月(栗山千明)も菫が亡くなった途端、みんなの前に姿を表して、指示出ししている。緊急事態だからとはいえ、CTUの人たちが全然驚かず、ごく普通に対応しているし。

重大な局面で私的な話をし始める現馬

最もイラッとしたのは、現馬。検問に引っかかって、車からいったん降りた現馬が車の下に隠れて、警官の追跡を逃れるターン。車と地面のあの狭いところに横たわりながら、六花と電話で会話するのだ。

最初は、六花たちのいる場所のヒントになることを聞き出しているのだが、そのうち感極まって「家族より大切なものなんかほかにない」と感情的な話になる。しかも、現馬とスマホを中継しながら聞いている伊月が複雑な表情をするという。こんな切羽詰まったときに極私的な愛憎が渦巻いちゃっているのである。


まあこういう、国家的危機から家族の危機まで大小あれど、人間が追い詰められて頭のなかがぐちゃぐちゃになっていくごった煮感が『24』に不思議な力強さをもたらしているのではあるが。

六花「やつがくる」
現馬「やつが? 誰がくるんだ?」

市来「おまえ誰だ」
現馬「お前こそ誰だ」

『24 JAPAN』現馬(唐沢寿明)、朝倉麗(仲間由紀恵)、研矢(上杉柊平)にイライラ 10話
次回11話は12月18日放送。画像は番組サイトより

大事な妻子を捕えている人物が気になる現馬。市来と六花は9話で言えないことになっている。だからこそ、電話でのやりとりがハラハラ。夫と聞いて、市来が秘密をしゃべってしまわないだろうかと気になる〜。枷に枷が加わっているからこその密度。さらに、現馬と六花が一時的に別居してそのときに伊月と付き合って……という複雑な事情もある。人間ドラマとして面白くできている。

この回、現馬はツッコミどころ満載。菫の残したメールから、テッド福井(飯田基祐)という人物が浮上し、彼の経営する会社に現馬が向かうのだが、10時に会社を出るという情報を聞いて、エレベーターでまず社長室階に上がり、行き違ってしまい、ぜえぜえしながら階段で降りる。

地下駐車場に車を待たせてあるのだから、下で待っていればいいのにと思うのは短絡的だろうか。1階かもしれないしってこと? でも1階には車が停まってなかったし。
しかも、友人のふりして名も名乗らずに電話をかけてきても、わりとのんきな対応をされるのも、都合良過ぎる気が。秘書の舌打ちは良かった。

こんなふうに、この回は話を動かすためにいささか苦戦している印象だったが、テッド福井をはじめとして、村上淳演じるアンドレ林栗田芳宏演じる小菅霧島れいか演じる小畑緑子など、新たな登場人物が続々出てきて、盛り上げる。

栗田芳宏はTBSの日曜劇場『危険なビーナス』にも出ているからドラマファンにもおなじみになってきているかもしれない。舞台俳優で、演出も手掛け、能楽堂を使ったシェイクスピア劇など意欲的な試みを行ってきた才人であり、ちょっと出てきて朝倉と話しただけで、得も言われぬ深みが出た。

絶対、危うい感じを見せてくれるであろう村上淳という期待感もあるし、何をしでかすかわからない栗田芳宏という期待感も、どちらも良いものだ。

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Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami

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番組情報

テレビ朝日系
『24 JAPAN』
毎週金曜よる11:15〜

番組サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/24japan/
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