
※本文にネタバレを含みます
“家族”が見事な連携『監察医 朝顔』7話
『監察医 朝顔』第7話は「桑原射殺事件解決編」。朝顔(上野樹里)の夫で刑事の真也(風間俊介)が拳銃で人を射殺した容疑をかけられた。【前話レビュー】桑原にかかる殺人容疑 そして「桐谷」は存在していたのか?というミステリー展開
撃たれたのは真也が相談に乗っていた田村聖奈(中村里帆)。
いったいどういうことなのか。真也が見た、聖奈の背後で銃を構えていた桐谷は誰なのか!? 本当に彼はいたのか? とてもミステリアスな事件に真也自身が自分の記憶に不安を覚える。
真也の身内である朝顔は事実を改ざんする危険性もあるため遺体の解剖に携われず、姉の忍(ともさかりえ)も事件の捜査から外された。
法医学教室の面々は矢も盾もたまらず桐谷の遺体が見つかった場所に調査に行くが、神奈川県警に咎められる。それを見逃した検視官・丸屋(杉本哲太)も事件から外された。
朝顔は「どんな結果になろうと私情をはさむことはありません。でも、担当から外れないといけないことも理解できます」と事態を冷静に受け止める。朝顔はいかなるときも冷静だ。とはいえ、心のうちは平静ではないに決まっている。
それを察する茶子(山口智子)は解剖を光子(志田未来)に任せ、朝顔にはそのサポートを頼む。
何もできず悶々とする朝顔と忍に、法医学教室の面々も野毛山署の面々もまるで全員が大きな家族のように手を差し伸べる。光子のサポートとして遺体を調べる朝顔は忙しくなり、代わりにつぐみの面倒を忍が見るという連携。フルーツサンドを法医学教室に差し入れまでする忍。
仙ノ浦にいる平(時任三郎)は情報を聞きつけるやいなや手を回して、拳銃が盗まれた場所の防犯映像を野毛山署に届ける。
ものすごい協力体制である。それに比べて、真也を調べている監察官・五十嵐(松角洋平)の嫌な感じといったらない。聖奈に会いにいった真也に「やましい気持ちでもあった?」「なにか期待してたんじゃないか」と言ったときのにやにや顔がすごい(名演技、さすがの文学座)。
たしかに、この事件、ちょっと無理があって、真也が聖奈の相談に乗っているシチュエーションが、普通ならもうすこし配慮があるだろうところ、物語の進行上、わざと疑われそうに描かれている印象は拭えない。でも、五十嵐がひたすら嫌なヤツで、真也をねちねち追い詰めるので、五十嵐に対する嫌悪感や怒りが、真也の行動もちょっとへんだよなあと思う気持ちに邪魔をする。ナイスな連携。
ついでに書いておくと、中盤、事件のあらましを、この件に詳しくない検視官・伊東役の三宅弘城がみんなに確認するように話すところと、終盤、事件の真実を鮮やかに語る滝川管理官役の近藤芳正と、巧い俳優がしっかり聞かせるので話がわかりやすくなっていた。
そんなこんなで、野毛山署も、法医学教室も、がんばっているがなかなか成果が出ずに疲労が蓄積してきた頃、平が帰ってくる。
「大丈夫」と言われて朝顔は、「大丈夫じゃないよ」「家族だから心配するでしょ」「お母さん(石田ひかり)、ずっと心配してた」と珍しくキレる。やっぱり我慢しているのだ、朝顔は。
その後、平の枕で寝るときは「枕臭い」「嘘」を繰り返す。こんなふうに相手を困らせるように甘えられるのは父だけなのだ。ひとりになって布団をかぶりながら「硬いなあ」とつぶやく朝顔。父の枕の硬さは、父が誰にも見せていない苦労の表れだろうか。
野毛山署も法医学教室もほかに仕事がないのか、暇なのか、桑原射殺事件ばかり調べている。その結果、見事に真相が明らかになる。聖奈と桐谷の謎はここには記さないので、未見の方はオンデマンドなどで見てほしい。前述の近藤芳正の語りの巧さはここで発揮されている。それにしても、聖奈の死後の真実にはびっくりした。

真也が帰ってくるも、家族は別々に…
無事に帰ってきた真也。昨日(12月8日)は結婚記念日だった。朝顔と真也は手をつなぐ。「忘れてた?」
「いや、忘れてないよ」
真也が帰ってきた祝いの膳はうなぎ。
家族がそろった楽しい食事のあとは、平の出発の日、父と娘、ふたりで食べるそうめん。朝顔はごくごく当たり前の手つきで長ネギを切ってそうめんを茹でて、ちゃぶ台で平と向き合ってラーメンをすすりながら日常会話をする。
すすりながら会話することはタイミングなどが意外と難しいはず。テレビドラマで食卓シーンが減っていったのは、巧さが必要なわりに地味で、コストパフォーマンスが悪いからかなとも思う。何回も撮影のたびに食事を食べるのもお腹いっぱいになって大変だと聞く。
『朝顔』第1シリーズの初期は、このそうめんシーンのように朝顔と平はふたりっきりだった。改めて“家族”を強調したところで、新章は「孤独編」。父は東北、真也は長野に異動に。朝顔は孤独か。
◎第8話あらすじ
朝顔(上野樹里)が所属する興雲大学法医学教室に、新しいアルバイト学生として、医学科3年の牛島翔真(望月歩)が加わった。藤堂(板尾創路)や高橋(中尾明慶)は、また辞められたら困る、という理由から、何かと牛島に気を遣っていた。
一方、長野県警への異動を命じられた桑原(風間俊介)は、非番だった姉の忍(ともさかりえ)に手伝ってもらい、これからひとり暮らしをするマンションで荷解きをしていた。朝顔と結婚し、万木家で暮らすことになったときの思い出に浸る桑原。忍は、そんな桑原に対し、ある忠告をする。
そんな折、法医学教室に解剖の依頼が入る。海岸の岩場に倒れているところを釣り人が発見した、60代後半と思われる男性の遺体だった。崖の上に男性のものと思われる靴がそろえてあったことから、自殺の可能性が高かったが、身元がわかるようなものはなかったという。 解剖を手がけた朝顔は、死因は頭蓋骨陥没による失血死と判断するが、遺体の手と爪に褐色森林土と石灰が付着していたことや、全身を骨折している中で右手の中手骨が折れていることが気になっていた。何かを殴って折れた可能性も考えられたからだった。朝顔は、男性のワイシャツに付着していた血に、相手の血が混じっているかもしれない、と検視官の伊東(三宅弘城)に告げる。
ほどなく、教授会を終えた茶子(山口智子)が法医学教室に戻ってきた。が、朝顔から手渡された遺体の資料に目をやると、一瞬表情を変える茶子。それに気づいた朝顔は、死亡した男性のことを知っているのではないかと茶子に尋ねた。そこで茶子は、30年前に起きたある事件のことを話し始め……。
――番組公式サイトより
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番組情報
フジテレビ『監察医 朝顔』毎週月曜よる9:00〜
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/asagao2/
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木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami