
VRアイドル「えのぐ」年末に連続でライブを開催
YouTube配信をメインに活動するVTuber(バーチャルYouTuber)とは異なり、2018年のデビュー以降、ライブや握手会など、“現場”中心に活動を続けてきたVRアイドル「えのぐ」。魂のこもった熱いライブパフォーマンスで人気を集め、昨年の夏、バーチャル勢としては初めて世界最大級のアイドルフェス『TOKYO IDOL FESTIVAL(TIF)』に出演するなど、バーチャルアイドル界を代表するグループへと成長した。【インタビュー後編】VRアイドル「えのぐ」が新機軸のストーリーライブを開催「えのぐのこれまでが濃縮されたライブ」
今年は、2月、8月と二度のワンマンライブを大成功させただけでなく、秋に開催された二つの大規模オンラインフェスでも存在感を発揮し、9月には待望の1stアルバム『真っ白な夢の世界』をリリース。
12月26日(土)には、同じ事務所所属のバーチャル・デュオ・アーティスト「Marpril」とのツーマンライブ「ゼログラビティユニオン」をオンライン配信。そして、29日(火)にはヒューリックホール東京にて、「えのぐワンマンLIVE2020 -だからいま、ここにいる。-」を開催する。
エキレビ!では、今年最後の大舞台に向けて、ハードなレッスンやリハーサルの日々を過ごすえのぐの鈴木あんず、白藤環、日向奈央、夏目ハルにロングインタビューを実施。この前編では、改めてお互いの印象やライブに対する思いなどについて語り合ってもらった。
私たち4人が「えのぐ」という座組だとしたら、座長はあんず
──最初に、三人が一人のメンバーを紹介していく「他己紹介」をしていただきたいと思います。ライブでの挨拶の順で、まずは鈴木あんずさんはどのような方なのか、白藤さん、日向さん、夏目さんで紹介してください。環 あんずは、いつも一生懸命で努力家で負けず嫌いで……。
奈央 えのぐの大黒柱みたいな存在です。
ハル いつも支えてくれるよね。いてくれるだけで、落ち着く。
環 えのぐにはリーダーとかセンターという概念はないのですが、私たち4人が「えのぐ」という座組だとしたら、座長はあんず。
──ライブのMCでは、最後にあんずさんがファンの心を強く揺さぶる熱い言葉で締める印象があります。最初から、そういう役割だったのですか?
あんず 本当に最初の頃、1カ月に1回、新曲発表を兼ねたライブをしていた頃は、まだ全然喋れなかったので。どこかで自然とそういう役割になったタイミングがあるはずなんですけれど……。いつだろう(笑)。
環 一周年とか?
あんず あ、そうかも。(2019年4月の)一周年記念ライブ(『enogu 1st Anniversary Live 〜ARe You Ready?〜』)の直前に、二人のメンバーが休養することになったんです。
──ライブの約1カ月前に夏目ハルさん、5日前に栗原桜子さん(今年2月にアイドル活動を引退)の一時休養が発表されました。
あんず あのライブの時に、それまで閉じこもっていた殻みたいな何かを突き破れた感覚があったんです。だから、その時からかもしれません。
──次は、環さんのことを紹介してください。
奈央 環は、えのぐのムードメーカーというか。
ハル 進行が上手だから、MCの時なんかすごく助かります。
あんず なんとなく進行がゴチャっとしちゃった時にまとめてくれるのが、環ちゃん。いろいろ小さな会話や出来事を拾ってくれたり、覚えていて話を振ってくれたり。メンバーのことをすごくよく見ているんだなって印象です。
──環さんは、意識的にトークを頑張ろうと考えてきたのですか?
環 環はダンスが得意じゃないし、歌もめちゃくちゃ得意ってわけでもないんです。だから、どういう役割でえのぐを支えていけるか考えた時、MCとか、トークだと思って。あんずと同じように一周年記念ライブの前後から、テレビなどで活躍している上手な方のトーク番組を見たり、周りで起こった面白い話の内容を意識的に覚えて話すようにしたり、そういう研究のようなことを始めました。

──次は、日向さんの紹介をお願いします。
環 ひなおも、いつも一生懸命で努力家で負けず嫌いです。
ハル ストイックだよね。
環 めちゃくちゃストイック。
あんず ダンスの振りを覚えるのもすごく早いので、私たちがわからない時はすぐに教えてくれるし、レッスンやリハーサルの最中でも周りのことをすごくしっかり見てくれています。
環 私たちが振りやフォーメーションを間違えた時は、すぐに気づいて教えてくれるんですよ。目がいっぱい付いてそう(笑)。
ハル 絶対に目が5個くらい付いてる(笑)。
──日向さんは、活動の初期から、歌とダンスでえのぐを引っぱりたいと思っていたのですか?
奈央 もともと、歌とダンスが好きだったので、誰にも負けたくないと思っていました。でも、私もあんずや環と同じで、一周年の時に「もっと頑張らないと、えのぐが潰れちゃう」と思って。それまでも私なりに頑張ってきたつもりでしたが、そこからより強く意識を切り替えたというか、スイッチが入って。「私は歌とダンスでえのぐを引っぱるんだ!」とハッキリ意識して、それまでよりもっと必死に頑張るようになりました。

──最後に夏目さんの紹介をお願いします。
環 ハルちゃんは、影の努力家だと思う。
奈央 そうだね。
あんず たしかに。
ハル そうなの?(笑)
環 さっきまで(取材前に)ライブのリハーサルをしていたんですが、リハが始まる前とか、環や奈央ちゃんはわいわいじゃれてたりするのに、ハルちゃんは一人でポーズの研究をしていて。「あの曲のこのポーズが……」って、めっちゃ真剣に考えてました。
あんず 自分が綺麗に見える角度とかを細かく研究したりしていて、本当にすごいと思います。あと、リハーサル中に楽しくなってくると、「わーお!」みたいなアドリブを急に入れてくるんですよ(笑)。
奈央 ハルは、アドリブマシーンなんです。
環 リハではやってなかったアドリブを本番で突然入れたりしますからね。でもそれで、私たちの気持ちもさらに盛り上がって良いパフォーマンスができたりするんですよ。えのぐに火を付けてくれる存在です。
ハル やったー。えのぐの爆弾だ(笑)。
あんず 爆弾だと、みんな爆発しちゃうよ(笑)。
「これが私たちの曲なんだ」と誇らしい気持ちになった『YeLL for Dear』
──9月には1stアルバム『真っ白な夢の世界』が発売されました。ソロ曲を除き、えのぐの全曲が収録されている豪華なアルバムですが、全20曲の中で特に想い出深い曲、印象的なエピソードのある曲などを教えてください。
奈央 私は、『YeLL for Dear』に特別な思い出があります。以前、ソロ曲(「それでも。」)を出させていただいた時、作詞に挑戦したのですが、初めての体験だから行き詰まっちゃって。「もう無理だよ〜」って頭を抱えてたんです。その時にふと「YeLL for Dear」を聴いたのですが、2番のサビに<ため息つく途中で 深呼吸に変えて>っていう詞があって。そのフレーズを聴いたとき、なんか自然と、本当に深呼吸をしたんですよ。
環・あんず・ハル あはは(笑)。
奈央 そうしたら、頭の中がすっきりして「頑張ろう!」って気持ちになったというか、本当に曲からエールをもらったように感じたんです。当時は作詞のこと以外にもいろいろ悩んでいた時期だったので、「えのぐにエールをもらえた! 私、幸せだ〜」って嬉しくなって。「これが私たちの曲なんだ」と誇らしい気持ちで、そのあとも作詞に取り組むことができたんです。この話、メンバーにも今、初めて話しました(笑)。
環 すごくいい話だった〜。環は何だろう……。やっぱり、どの曲もすごく思い出があるから選ぶのが難しいんですけれど、今回のアルバムを制作するにあたって、初期の曲はアルバム用に録り直しているんですよ。だから、その頃の楽曲を聴いてると、自分たちの成長を感じられます。特に「絵空事」とかはもう全然、違っていて。「私、ちゃんと成長しているんだな」って、強く感じられました。
──意識的に何かを変えて歌ったのではなく、自然と変化していた?
環 最初はレコーディングの経験が全然なかったから緊張もあったりして。でもそれからライブでかなり歌い慣れたし、録り直しするにあたって自然と雰囲気も違うというか、全体的に口角は上がり気味で、「楽しい!」みたいな感情で歌えました(笑)。
ハル ハルは、「絵空事」が大好きです。歌詞も楽曲も前向きで背中を押してくれる感じがするので。それに、さっきみんなが話してくれた1周年ライブの中でも三人が歌っていて。落ちサビに、ひなおが歌う<絵空事はきっと形になる>というフレーズがあるのですが。そのパートってもともとはハルがひなおとハモるんですけれど、そのライブではあんたま(あんず&環)の二人が代わりにハモってくれていて。客席の側からの光景を観た時、「ハルも早く復帰して、えのぐをもっともっと大きいグループにしたい! 今は絵空事かもしれないけれど……。きっと形になる! なるよねーー!」って思いながらリアルに泣きました(笑)。
環・奈央・あんず あはは(笑)。
ハル 本当に勇気をもらった曲で、この曲に支えてもらいました。今もその時の記憶が残っているので、聴いても歌っても前を向ける。ハルにとっては、そういう曲です。
あんず 私もやっぱり、どの曲もすごく好きなのですが……。歌う度に、特に成長を感じるという意味で「Brand new stage」が……。
奈央 わかるわかる
ハル うん、すごいわかる。
環 けっこう課題曲だよね。
あんず すごくキーの高い曲なのですが、私はファルセット(高音に対応する発声技術)が苦手で。最初にレコーディングした時は、サビとかも全然歌えてなかったし、ライブでもファルセットを使わずに地声で歌ってたんです(笑)。でも、みんなで歌うんだからそれじゃダメだと思って、レッスンで意識的にファルセットを使うようにしたら、徐々に歌えるようになって。
さっき、環ちゃんがアルバムで録り直した曲の話をしていましたが、「Brand new stage」もそのうちの1曲で。それで、課題だったサビも録り直しさせていただいたんです。あの頃はうまく歌えなかった曲が、今は歌えるようになってるって、すごく嬉しかった思い出があります。
「えのぐのライブがいちばんすごい!」と思ってもらいたい
──えのぐは、デビュー以来、本当に数多くのライブのステージに立ってきました。昨今の社会情勢的にオンラインライブも増えてきましたが、リアル会場でのライブとオンラインライブの違いなど、ライブについて改めて感じることはありますか?
環 環はライブを、応援してくれる方たちへの恩返しだと捉えていて。私たちがステージでいっぱい輝いて、楽しいとか嬉しいとか様々な感情を表現することで、「ありがとうございます」という感謝の気持ちを伝える場だと思っているんです。それに、ステージから客席のみんなのいろいろな表情が見えて……。その度にパワーをもらっています。
でもオンラインのライブだと、そういうみんなの顔が見えないので。正直「ちょっと寂しいな」とは思っていて……。もちろん、オンラインでもコメントとかは見えるし、ライブの前後で応援のメッセージやライブの感想を下さる方もいらっしゃるので、皆さんの気持ちは伝わってくるんですけどね。
この情勢がいつまで続くかわからないし、会場とかオンラインとか関係なく、今まで以上に強く自分の感情を届けたり、みんなの思いを受け取ったりできるようになることは一つの課題。今後の成長にも繋がると思うし、前向きに捉えています。
奈央 ひなおは、会場でライブをやる時にみんなの顔をたくさん観て覚えておいて。それでオンラインの時は、覚えたみんなの顔を思い浮かべて、「今、盛り上がってくれているんだろうな」なんて想像しながらパフォーマンスをしてます。だから、オンラインと会場で感覚的な違いはあまりありません。
ただ、会場で観るライブとオンラインで観るライブの違いって、映画館で観る映画と家で観る映画の違いに似ていると思うんです。おうちだと、何か他のことをしながらもライブが観られるじゃないですか。ひなおは、それが寂しくて(笑)。私たちがライブをしている間は、私たちのことをずっと観ていてほしいんです!
環・あんず・ハル うんうん(笑)。
奈央 だから、家で観ている人を飽きさせないライブをするにはどうしたらいいかは、すごく考えています。例えば、観ている人が忙しくなるように「コメント、いっぱいしてください!」って煽ったりとか(笑)。会場でやるライブはもちろんですが、オンラインでも、みんなの心をもっと釘付けにしたいと思っています。ネットサーフィンとか、させません(笑)。
ハル ハルの場合、会場とオンラインの違いはあまり考えてはいなくて、「ライブはライブだから」というスタンスで、 同じように楽しくやろうと思っています。
それで、ハルにとってライブがどんな存在なのかなって考えたのですが……。愛情表現の場なのかなって。普段は、言葉足らずなところがあるし、ちゃんと言うのも恥ずかしいけれど、ライブは感情をさらけ出せる場所だと思っていて。会場やオンラインで観てくれているえのぐみさん(ファンの愛称)も、あんずも、ひなおも、環も。みんなに対して、大好きって普段はあまり言えないけれど、ライブでは言えるというか。
環 その気持ちを歌に込めたりね。
ハル そうそう。ライブなら伝えられるんです。気持ちを伝えられたら、ますますえのぐみさんやメンバーのことを好きになるし、「ハル、ちゃんと伝えられた!」みたいな感じで自分のことも好きになれるので、すごく幸せな世界かなって(笑)。
あんず このような情勢ではあるのですが、私たちは今年、特にライブをたくさんやらせてもらってきて。会場でやるライブとオンラインのライブでは、感情や熱量の伝わり方の違いを少なからず感じたりもしたのですが……。でもどちらであってもライブは本当に楽しいので、どうしたら今まで以上に熱い想いを届けられるか。今年は特に、強く考えてきました。
私は、どんな形態であっても、「えのぐのライブがどこよりもいちばん楽しいし、いちばんすごい!」と思ってもらいたい。そして、もっとたくさんの人に私たちのことを知ってほしいし、好きになってほしいんです!
──いろいろな活動をしている中でも、やはりライブで「えのぐってすごいんだ」ということを知ってほしい?
あんず はい。とにかく、ライブを観てほしいです! YouTubeの生放送とか、普段の私たちの様子ももちろん知ってほしいのですが……。私たちはアイドルだから、歌って踊って、最高な気持ちとか景色をみんなと共有したい。応援してくださる方々、メンバー、スタッフさん。えのぐに関わるすべての人と一緒に、もっともっと上を目指したいと思ってライブをしています!
【インタビュー後編】VRアイドル「えのぐ」が新機軸のストーリーライブを開催「えのぐのこれまでが濃縮されたライブ」
ライブ概要
『ゼログラビティユニオン』【日時】2020年12月26日(土)
【時間】19:00〜(開場18:45〜)
【会場】ニコニコ生放送(Marprilチャンネル)
【出演】えのぐ(鈴木あんず、白藤環、日向奈央、夏目ハル)、Marpril(立花鈴、谷田透佳)
【チケット料金】
3,500ニコニコポイント(税込 3,500円)
【販売期間】
2020年11月28日(土)12:00〜2021年1月16日(土)23:59
※2021年1月16日(土)23:59までタイムシフト視聴が可能
『えのぐワンマンLIVE2020 -だからいま、ここにいる。-』
【日時】2020年12月29日(火)
【時間】<第一章>13:30〜(開場12:30〜) <第二章>19:00〜(開場18:00〜)
※時間は状況により変更になる場合あり
【会場】ヒューリックホール東京
【出演】えのぐ(鈴木あんず、白藤環、日向奈央、夏目ハル)
【チケット料金】
<通しチケット>8,000円+ドリンク代 <指定席>4,800円+ドリンク代
※第一章、第二章いずれか一方の指定席
※予定枚数終了次第発売終了
チケット販売サイト(イープラス)
【配信チケット料金】
<通しチケット>7,000ニコニコポイント(税込7,000円)
<第一章>3,800ニコニコポイント(税込3,800円)
<第二章>3,800ニコニコポイント(税込3,800円)
配信チケット販売ページ
【販売期間】
2020年11月30日(月)10:00〜2021年1月27日(水)23:59
※2021年1月28日(木)23:59までタイムシフト視聴が可能
丸本大輔
フリーライター&編集者。瀬戸内海の因島出身、現在は東京在住。専門ジャンルは、アニメ、漫画などで、インタビューを中心に活動。「たまゆら」「終末のイゼッタ」「銀河英雄伝説DNT」ではオフィシャルライターを担当した。にじさんじ、ホロライブを中心にVTuber(バーチャルYouTuber)の取材実績も多数。
@maru_working