SixTONES ベールを脱ぎ、世界へと波及する異色のナンバー「うやむや」
(c)Sony Music Labels

SixTONESの話題作「うやむや」

すっと息を吸い、<真っ暗に光るは太陽は つまりアイツは最高なんてことじゃないのさ相棒お近くへ> ――ブレス音を消さずに始まる「うやむや」。歌い出しはジェシー。鍵盤の音を先導するように一気に歌い上げた。


1月6日にリリースされたSixTONESの1STアルバム『1ST』通常盤に収録の「うやむや」。
【作品情報】
Lyrics:Koudai Iwatsubo、Music&Arrangement:Koudai Iwatsubo/Seiji Iwasaki、
Additional Instruments:Kuwagata Fukino、Chorus:Yuya Yamazaki、Mixed:Kiyotaka Shimizu


リリース前からこの楽曲だけ詳細情報がなく、サイトには「gsdhiaofjisabcvlkghjhb hgfvsfhiuahspgdhfdhgfd」とだけ記されていた。ベールに包まれた状態で迎えた1月7日。SixTONESオフィシャルYouTubeでMVが公開され、現在までに413万回視聴されている。

【視聴】SixTONES - うやむや(Music Video)[YouTube Ver.](from Album “1ST”)

「うやむや」の世界

アルバムのプレイリスト通りに耳にすると、明らかに違うトーン。鍵盤の上を転がるようにして奏でた音に、矢継ぎ早に言葉を紡いで乗せていく。序盤はやや平たい声色に聞こえるも、森本慎太郎の跳ね上げるようした語尾に、悩ましい様子を感じる。
<味をしめたやつのカルマ>松村北斗からはじまるBメロから一段、<うだうだくちゃくちゃ物申そう>京本大我のパートからさらにもう一段、感情を込めてサビへと進む。

歌詞は心理、心情描写が中心であるのに対して、MVでは情景描写を補うかのように世界が広がる。MVのイラストはダイスケリチャードが手掛けた。

ピンク髪のロングヘアの女性。スヌードらしきものを首に巻き、ジャケットの袖からはインナーの袖が伸びている。画面にノイズが走り、太陽、窓枠、デスクトップの画面と部屋に入る。
Aメロからはアングルが変わり、ピンク髪の男性がデスクで頬杖をつくようにして左目を左手で覆っている。

一つのフレームが出現し、枠にはデコレーションが施されている。SixTONESの「S」、「NEW ERA」を象徴する臙脂色のフラッグ。NAVIGATORポーズに雫、2019年のツアー『Rough“xxxxxx”』からはxxxxxxが。フレームの中にはストーンが散り、ひらひらと舞う赤は「JAPONICA STYLE」の花弁か。

壁には「Jungle」でメンバーが担当した動物、ライオン、コウモリ、ハリネズミ、シマウマ、クマ、トリの6つのシルエット。
ランプシェードにぶら下がるコウモリ、フォトスタンドに重ねたカードにハリネズミ、その奥にはゼブラ。マグカップにも――SixTONESに関係するアイコンが至るところに散りばめられている。ここまでくると、映像に走るノイズがタブ譜にみえて、6線、ギター、Rock…と連想が暴走する(真偽のほどは不明)。

フレームをタブレット、登場する女性をファンと見立てれば、彼らの世界に浸っているようにみえる。男性の手元も鍵盤からキーボードへと変わる様子には生演奏とDTMを。飛び交うアイコンは、SixTONESのジャンルレスを表現しているよう。


「うやむや」とは、はっきりしない様子や態度を意味する。もやもやとした胸の内……メランコリックな雰囲気でも、逃げずに現実をみつめる。静かなようにみえて頭の中はけっこう忙しい。でも、<そんなことはどうでもいいの 千を語るより I must go 脱走 うやむやで>と、居心地の良さこそ感じないが、諦めたわけでもない。

<うじうじ3日くらいどうぞ>から始まる田中樹のソロパート、<妬みはこの際ここらで>吐息交じりに放った語尾に、ケリをつけなきゃという心の変化を感じた。

間奏を挟み、高地優吾(「高」ははしごだかが正式表記)のソロパート<点は繋がれて海超え山越え>から視線をあげ、ラストのサビ前、京本大我の<うやむやで>が、これまでと違ってどこか吹っ切れた様子。


鍵盤の音色と小気味いい進行で、聴いた後はどこか爽快感が漂う。個性のはっきりした歌声、メンバーが2人ずつ声を重ね、1、2番のサビはバトンを手渡すかのように一字を重ねながら歌い継ぐ。そしてラストのサビ、6人の歌声が重なったときの一体感と厚み――アルバム、これまでのシングル、カップリング曲と並べても存在感を放つ。

元来のファン以外からも反響

「うやむや」の反響は、アニメファンやボカロファンからも寄せられた。Twitterやブログでは、初めてジャニーズのCDを手にしたというコメント、MVについての感想や考察ブログもあった。また、珍しいことに公式サイトにはメンバーの歌割りが公開されているが、今回初めてSixTONESの楽曲に触れた人向けか。


アニメーションとボカロ風の演出をフックに、本人が登場しない引き算とも呼べる仕掛け。音楽トレンドと捉えるか、日本の文化とミックスさせて世界に放ったと捉えるか。受ける印象も様々だろう。

『1ST』リリースにあたって、SixTONESのメンバーは複数の音楽雑誌に登場した。インタビューでは音楽遍歴やアルバムの選曲過程、バックグラウンドを語ったのも珍しい。ラジオ番組『Monthly Artist File -THE VOICE-』(TokyoFM / 1月10日放送回)で、高地優吾は「アルバムは自分たちの好きなジャンルを詰め込んだ」、京本大我も「どの曲もいい意味でジャンルレスで、SixTONESらしくバラエティに富んだ一枚になっている」と紹介した。

当人たちですら「緩急がすごい」「同じアーティストとは思えない」と語っている。京本が「SixTONESは自分たちの定義がない、俺らっぽくないからやろ!」と選曲スタイルを語れば、「ファンが“SixTONESらしいね”ってまとめてくれる」と高地。

「配信を!」という投稿も目にした。今後どのタイミングでデジタル配信をしていくのか展開が気になる……と、その前に「うやむや」をどんなステージ演出で披露するのか。音源、YouTubeのMVに加えて、ライブパフォーマンスという楽しみが残っている。

2021年1月22日でデビュー1周年を迎えるSixTONES。遡ること2020年1月号の雑誌のインタビューでは、「“ストーンズ”と読んでもらえるように」と語っていた。それを思えば、同一人物とは思えない注目の集め方で、2021年年始には「待ってろ、世界。」と強いメッセージを掲げたのだから頼もしい。

『1ST』と名づけたように、これがファーストアルバムであり、彼らのストーリーは始まったばかり。2月17日には早くも4枚目のシングル「僕が僕じゃないみたいだ」のリリースが予定されている。この一年を経て明確に言えるのは、SixTONESはとにかく退屈とは無縁のグループだ。

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Writer

柚月裕実


Web編集/ライター。ジャニヲタ。アイドルがサングラスを外しただけでも泣く涙腺ゆるめな30代。主にKAT-TUNとNEWSですが、もはや事務所担。

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@hiromin2013