『おかえりモネ』第8週「それでも海は」

第40回〈7月9日(金)放送 作:安達奈緒子、演出:桑野智宏〉

『おかえりモネ』の演技で納得、永瀬廉がジャニーズの若手エースである理由
イラスト/AYAMI
※本文にネタバレを含みます

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「過去に縛られたまんまでなんになるよ。こっから先の未来まで壊されてたまるかっつうの! 俺らは俺らの好き勝手やって生きていく」

【レビュー一覧】『おかえりモネ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜第40回掲載中)

百音(清原果耶)の幼なじみの亮(永瀬廉)の溜まっていた感情が爆発した。震災で多くのものを失った亮と父・新次(浅野忠信)に焦点の当たるエピソードだったこともあり、『おかえりモネ』のあとの情報番組『あさイチ』に亮を演じる永瀬廉(King & Prince)がゲスト出演。
「モネ」のエピソードをたくさん披露した。

亮は見た目もスマートで性格もスマート。女性には常に紳士的に振る舞っている。だからモテそう。でも少しだけ屈折したところがある。まずは本音を隠すのだ。でも隠しきれずにすぐ本音を吐露する。例えば、新次と揉めた日(第39回)、百音の家に泊まり、朝、縁側で百音と語り合ったときも「足元が揺れてないのが逆に気持ち悪い」と言うなり、すぐに「嘘」と笑った。それがまた女性にはキュンとなる。

素直過ぎてもつまらないし、本音を隠し続けられても翻弄される。本音と嘘を見せてくれるから距離感を間違えずに済む。

亮の本音は漁師の仕事になかなか慣れない。
父も含め漁師はガサツで、それが亮にはちょっと苦手のようである。「でもさ、海は嫌いになれないんだわ」「海に恨みはない」。漁師として生きていく覚悟はしている。それでもネガティブな気持ちがあることは否めない。

『おかえりモネ』の演技で納得、永瀬廉がジャニーズの若手エースである理由
写真提供/NHK

亮はいつも口角をちょっとあげて微笑んでいるように見える。おそらく、意識的に笑って感じよくしているのだろう。場の空気を悪くしないように笑っていることが習慣になっている。努めて明るくスマートに振る舞っているのがわかるからこそちょっと哀しく見える。でも、本音をちゃんとすぐ漏らすから、まだそこまで屈折の度数は深くない。

亮のかすかな屈折を永瀬廉は的確な測量で演じているが、完成度が高い角度が目に鋭く刺さって近寄りがたく見えないように、鋭角をふわりと薄い布で覆っているような空気を放つ。その塩梅がトータルで完璧なところがさすがジャニーズの若手エースだと感じる。

「俺らが前を向くしかないんだ」

亮も交えて、幼なじみの仲間たちが百音の部屋でまた人生ゲームをやりながら、今後の進路の話をする。

東京に出る明日美(恒松祐里)、地元に残る悠人(高田彪我)三生(前田航基)の話を聞いて、急に感極まって「過去に縛られたまんまでなんになるよ。
こっから先の未来まで壊されてたまるかっつうの! 俺らは俺らの好き勝手やって生きていく」と叫ぶ。「前」を「向くしかないんだ」の言葉が粒立って胸に響いた。

震災を体験してからいろいろ考えて、立ち止まってしまっている子どもたちの姿を見て、亜哉子(鈴木京香)は百音と未知に「好きなことしなさいね」と語りかける。

『おかえりモネ』の演技で納得、永瀬廉がジャニーズの若手エースである理由
写真提供/NHK

亜哉子は、子どもが生まれたとき、仙台で教師をやっていたが、島で子育てすることを選んだ。教師も民宿も漁業も妻や母、どんな役割も好きで楽しんで選んできたのが亜哉子。だからなのか、いつも安定した明るさを保っている。まあちょっとこのくだりは無理やりメッセージ性を感じるような気もしないではないが、状況だけ淡々と描き続けても公共放送の番組としては観る人を選び過ぎてしまう。だからこそここでメッセージを語るのは妥当であろう。

けあらしの朝

朝、百音が登米に帰る時、新次が港にいて、百音が心配して近寄ると、けあらし(蒸気霧)のなか、亮が出港していくのを見ていたという。天気の勉強をしてきた百音はけあらしの仕組みを論理的に説明できるようになっていた。

「海に恨みはないから」と言う新次。亮も新次も父子で同じことを言っていた。どんなに哀しいことがあっても海を嫌いにならないふたりにはきっと未来があるのではないか。
週の終わりは哀しいだけではなかった。
(木俣冬)

『おかえりモネ』をさらに楽しむために♪









番組情報

連続テレビ小説『おかえりモネ

2021年5月17日(月)~

<毎週月曜~土曜>
●総合 午前8時~8時15分
●BSプレミアム・BS4K 午前7時30分~7時45分
●総合 午後0時45分~1時0分(再放送)
※土曜は一週間の振り返り
<毎週月曜~金曜>
●BSプレミアム・BS4K 午後11時~11時15分(再放送)
<毎週土曜>
●BSプレミアム・BS4K 午前9時45分~11時(再放送)
※(月)~(金)を一挙放送
<毎週日曜>
●総合 午前11時~11時15分
●BS4K 午前8時45分~9時00分
※土曜の再放送

出演:清原果耶
内野聖陽 鈴木京香 蒔田彩珠 藤 竜也 竹下景子 永瀬 廉 恒松祐里 前田航基 高田彪我 浅野忠信 夏木マリ 浜野謙太 でんでん 坂口健太郎 平山祐介 塚本晋也 西島秀俊 今田美桜 清水尋也 森田望智 井上 順 高岡早紀 玉置玲央 阿部純子 マイコ 菅原小春
※登場人物のプロフィールやあらすじなど、詳細はこちら

:安達奈緒子
演出:一木正恵 梶原登城 桑野智宏
音楽:高木正勝
主演:清原果耶
語り:竹下景子
主題歌:BUMP OF CHICKEN「なないろ」


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami
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