
豪華日本人キャストも出演『唐人街探偵 東京MISSION』
掴みはOKとは、まさにこのことなり。『唐人街探偵 東京MISSION』はオープニングからスピード感のある展開に飲み込まれる勢いで映画がスタートする。置いてきぼりを食らわないように目を皿のようにしてガン見。【関連記事】妻夫木聡、自身のNGに思わず苦笑い 映画『唐人街探偵 東京MISSION』特別映像解禁
それもそのはず。なにしろこの映画、中国では今年2月の春節に公開されるや、初日に約10億1,000万元(164億円)の興行収入を記録し、公開4日間で中国最速で興行収入30億元(約490億円)突破を達成。のみならず、2019年に『アベンジャーズ/エンドゲーム』が打ち立てた全世界オープニング興行収入首位の記録もさらっと抜いて歴代No.1を獲得。文句なしの歴史的な超ヒット作なのである。


その大成功も公開される前からすでに予想されていたこと。日本では前2作が未公開だったため、いまひとつ注目度に欠けていたのだが、2015年に公開されたタイのバンコクを舞台にしたシリーズ1作目『唐人街探案』は興行収入8億2,300万元(約140億円)、舞台をニューヨークに変えた2018年の2作目『唐人街探案2』は興行収入33億9,700万元(約576億円)を記録。
となれば続く3作目も大ヒット間違いなし!と目されていたわけだが、それを軽~く上回ってしまったのが、このシリーズ3作目にして日本初上陸となる『唐人街探偵 東京MISSION』だ。
叔父と甥の凸凹探偵コンビが難事件を解決
監督・脚本を務めたのはチェン・スーチェン。名門芸術大学である中央戯劇学院を卒業し、俳優として活躍したのち2014年『北京愛情故事』(日本未公開)で本格的に監督に転向。タイのバンコクを舞台にコミカルでダイナミックなストーリー展開が大きな話題を呼んだ『唐人街探案』を足がかりに、ヒットメーカーとしての地位を確立した。
ストーリーは簡単に言うと、叔父と甥の凸凹探偵コンビが難事件を解決するというもの。今回のミッションは東南アジアのマフィアの会長が殺された密室殺人事件。
そこにタイの探偵も加わり調査を進めるなか、殺された会長の秘書が何者かに誘拐される事件が発生。秘書が密室殺人事件の鍵を握っているとにらんだ3人は誘拐犯に出された課題を次々にクリアしていくのだが、事件解決100%を誇るエリート警視正や、謎の指名手配犯も絡んできて事件は複雑化。


さらに探偵専用アプリ「CRIMASTER(クライマスター)」の事件解決率世界ランキングに載る探偵たちが、そのニュースを聞いて東京に集結し、世界探偵ランク1位で正体不明の「Q」まで登場したため事件はより混乱を究める──。

と、こんな感じで話は進んでいく。語弊を恐れずに言うと、ストーリー自体はとんでもなく凝ったものでも、意味深長なものでもない。最終的な殺人方法はちょっと意外だったが、それも『古畑任三郎』をよく知る日本人としては想定内の展開だったりする。
金に糸目をつけず撮りに撮った映像が面白い


ではこの映画の何がすごいのか。それは下品な言い方で恐縮だが、金に糸目をつけず撮りに撮った映像の面白さだ。冒頭の空港シーンしかり、銭湯シーンしかり、渋谷のスクランブル交差点のシーンしかり、とにかくもうすごいとしか言いようがない。
しかもである、この3シーンに関してはすべてセット。どれもセットで作るにはデカすぎるし、それ以前に作るか? これを……のレベル。なかでも渋谷のスクランブル交差点は本当にお見事! 交差点をスクランブルにしただけじゃだめだよ~ん、いろいろあるよ、あの交差点。

ちなみに、それらの制作エピソードを紹介すると。空港と渋谷のスクランブル交差点のシーンは、派手なアクションや多数のエキストラによる群衆シーンがあり、撮影許可が得られなかったため、イチからセットを作ることになったそう。スクランブル交差点は栃木県足利市の競馬場跡地に屋外セットを作ることになり、のべ2000人のエキストラを動員して撮影。
空港は名古屋市の国際会議場にセットを作り、銭湯は上質の木材を使用した精巧なセットを製作。総製作費65億円のうち、日本国内製作費31億円なのだとか。余談ながら、日本なら渋谷のスクランブル交差点のセット費用で映画1本作れるらしい……。


このほか劇中では新宿歌舞伎町のゴジラ前広場、秋葉原の電気街、東京タワー、浜離宮恩賜庭園、浅草の仲見世、横浜中華街などのお馴染みの観光地もバンバン登場する。
道路を封鎖しての派手なカーアクションあり、日本では使われていないカメラやクレーンを持ち込んだ撮影あり、空港での圧巻のアクションシーンに至ってはワンカット撮影も厭わない。まさにとてつもない資金力を背景に実現した、大規模ロケ(撮影はコロナ禍前)あればこその映像だと思った。

香港映画界の重鎮、アンディ・ラウも友情出演
そうした見ごたえのあるアクションシーンがある半面、この映画、コメディの要素も抜きには語れない。相撲や剣道を取り入れたコミカルな乱闘シーン、探偵と組長の初顔合わせの銭湯シーンをはじめとするデフォルメされたヤクザ、アニメキャラクターやメイドのコスプレなど、笑いのツボは日本と異なる部分もあるが、十分に楽しめるものになっている。というコメディ、アクション、ミステリー、ドラマを融合させた、この娯楽作を支える出演者の顔ぶれも実に豪華。叔父と甥の凸凹探偵コンビを演じるのは中国のスター俳優、ワン・バオチャンとリウ・ハオラン。タイの探偵役にはアクションスターのトニー・ジャー。



また、2作目にも出演し、本作のメインキャラクターの1人でもある日本人のイケメン探偵に妻夫木聡(流暢な中国語にも驚かされた)。ヤクザの組長は三浦友和、殺された会長の秘書は中国でもファンの多い長澤まさみ、ほかにも染谷将太、鈴木保奈美、浅野忠信など日本を代表する俳優陣が集結し、香港映画界の重鎮、アンディ・ラウも友情出演。その出演者全員で踊るエンドクレジットの群舞も見逃せない爽快さだ。

ところで、毎回映画のエンディングで次回作の舞台を予告する構成になっている『唐人街探偵』シリーズ。今回のラストで映し出されたのはビッグベン。どうやら次回は、主人公が敬愛する名探偵シャーロック・ホームズを生んだロンドンで決まりのようだ。
(前原雅子)
作品情報
『唐人街探偵 東京MISSION』大ヒット上映中

出演:ワン・バオチャン リウ・ハオラン 妻夫木聡 トニー・ジャー
長澤まさみ 染谷将太 鈴木保奈美 奥田瑛二 浅野忠信 シャン・ユーシエン 三浦友和
監督・脚本:チェン・スーチェン
提供:Open Culture Entertainment アスミック・エース
配給:アスミック・エース
公式サイト:http://detectivechinatown-movie.asmik-ace.co.jp/
公式Twitter:@TGtantei_movie
(C)WANDA MEDIA CO.,LTD. AS ONE PICTURES(BEIJING)CO.,LTD.CHINA FILM CO.,LTD “DETECTIVE CHINATOWN3”
世界を席巻した“探偵チーム“が東京を舞台に大暴れ!
国際的に事件を解決してきたチャイナタウンの探偵コンビ、タン・レン(ワン・バオチャン)とチン・フォン(リウ・ハオラン)は、日本の探偵・野田昊(のだひろし) (妻夫木聡)から難事件解決への協力を依頼され、東京に飛ぶ。今回のミッションは、東南アジアのマフィアの会長の密室殺人事件で、犯人として起訴されたヤクザの組長・渡辺勝(三浦友和)の冤罪証明。タイの探偵で元刑事のジャック・ジャー(トニー・ジャー)も参加し解決を試みるが、殺された会長の秘書である小林杏奈(長澤まさみ)が何者かに誘拐される事件が発生。そこに事件解決率100%を誇るエリート警視正・田中直己(浅野忠信)、謎の指名手配犯・村田昭(染谷将太)も絡み、事件は複雑化。さらに、世界の探偵が愛用するアプリ「CRIMASTER(クライマスター)」の事件解決率世界ランキングに載る探偵たちが、このニュースを聞いて東京に集結。探偵世界ランキング・第1位で正体不明の「Q」の登場により、さらなる混乱が巻き起こる――。
前原雅子
フリーライター、音楽系が多い。読書、ジャンクから高級物まで広く食するお菓子、気の向いたときにする家事が趣味。