WOWOW『がんばれ!TEAM NACS』大人の真面目なおふざけはバカバカしくてきっちり面白い

的を得たバラエティ番組『がんばれ!TEAM NACS』

大の大人が真面目にふざけ倒す。だから本気でバカバカしい。だからきっちり面白い。
『がんばれ!TEAM NACS』の楽しさはそこにある。


この番組、演劇ユニット TEAM NACSの結成25周年とWOWOWの開局30周年のダブル記念コラボレーション企画としてスタートしたのだが、回を重ねるごとに、ある意味、バラエティ番組として正しく的を射ているのかもしれないと思うようになった。

リアルな出来事のようではあるけれどドキュメンタリーとは言い切れず、どこかフィクションの匂いは漂うものの、そのつもりで観ていると、いつの間にかリアルな話に感じられ、だがやっぱりドキュメンタリーではないだろう……と思い、気づけばそのループをなぞり続けている。まぁまんまとしてやられたことになるのだが、それが妙に心地いい。ということは、つまり娯楽として正しく成立しているわけである。

WOWOW『がんばれ!TEAM NACS』大人の真面目なおふざけはバカバカしくてきっちり面白い

しかしTEAM NACS、大したチームである。
北海学園大学演劇研究会出身の、森崎博之・安田顕・戸次重幸・大泉洋・音尾琢真により1996年に結成された演劇ユニットなのだが、5人それぞれ俳優、声優、タレント、脚本家、演出家、ナレーター、歌手などで活躍する人気者。TEAM NACSとしての舞台は観たことがなくても、5人が関わった映画やドラマを観たことがない、という人はいないのではないだろうか。

そのあたりのことをちょっとだけ紹介すると──。
映画『探偵はBARにいる』を筆頭に主演作品も多くお茶の間でも人気の大泉洋、映画『ザ・ファブル』『愛しのアイリーン』など存在感のある演技が魅惑的な安田顕、映画『永い言い訳』や自ら脚本も手がけた一人芝居『ONE』で評価を得ている戸次重幸、映画『世界で一番悪い奴ら』『ひとよ』をはじめ幅広い役柄を演じ分ける音尾琢真、そしてTEAM NACSのリーダーであり「北海道になりたい」と言うほど北海道愛にあふれている主に道内をメーンに活動する森崎博之。五人五様の芸達者が揃ったチーム、それがTEAM NACSなのである。

WOWOW『がんばれ!TEAM NACS』大人の真面目なおふざけはバカバカしくてきっちり面白い

その5人が本気で遊んで番組を作ろうとし、WOWOWもそれを本気で形にしようとする。
と、ここでもしも「周年企画、コラボ企画、よくあるよねー。そう冠をつけたら、なんとなく成り立つからさー」と思ったら、大間違い。この番組制作陣の遊び方、とにかくハンパではない。

監督に抜擢されたのは映像製作を学ぶためハリウッド留学の経験もあり、緻密でエッジの効いた演出に定評のあるNHKのディレクター、堀切園健太郎『篤姫』『外事警察』などを演出)が担当。また、撮影にはハリウッドのメジャー映画で現在最も使用されているARRIのALEXA 65という6Kカメラが日本初めて使われた。

WOWOW『がんばれ!TEAM NACS』大人の真面目なおふざけはバカバカしくてきっちり面白い

そのようなスタッフと機材で番組最初の企画として撮られたのが腰砕け度も爽快なレベルに達する、音尾琢真が監督・脚本を担当した戦隊ヒーロー作品『バック・トゥ・ザ・戦隊・フューチャーズ』
音尾が学生時代から温めていた映画『バック・トゥ・ザ・フューチャ』をオマージュしている企画で、ヒーローのドクレッドを森崎博之、ドクブルーを大泉洋、ドクピンクを戸次重幸が演じ、悪役キャラクターのバフン男を安田顕が担当。さらに同じく悪役キャラクターの女帝デロリアンには、なんと吉田羊がゲスト出演している。

WOWOW『がんばれ!TEAM NACS』大人の真面目なおふざけはバカバカしくてきっちり面白い

WOWOW『がんばれ!TEAM NACS』大人の真面目なおふざけはバカバカしくてきっちり面白い

ところが音尾が撮影中に怪我をしたため(このいきさつがまたバカバカしい)、やむなく撮影は中止。新たな企画を目指して5人で会議を行い、結果、大泉洋の提案による国民的グループを目指す「オリジナルご当地ソング」制作、「NACS新メンバーオーディション」などの企画が立ち上がることになる。

WOWOW『がんばれ!TEAM NACS』大人の真面目なおふざけはバカバカしくてきっちり面白い

現在、「episode4」までオンエアされたところだが、オリジナル楽曲作りに瑛人服部隆之ヒャダインが登場したり、オーディションには武田真治が登場したりして、NACSメンバー5人と珍妙なやりとりが繰り広げられる。果たしてNACS流北海道ご当地ソングはできるのか、新メンバーは見つかるのか、まだまだ予断を許さない成り行きになりそうだ。


WOWOW『がんばれ!TEAM NACS』大人の真面目なおふざけはバカバカしくてきっちり面白い

酸いも甘いも噛み分けたアラフィフのオジサンは素敵に強力

その一方で5人それぞれの「撮休」シーンが、これまたおかしい。他の作品の準備だとのことだがパンティー選びに余念のない安田に、オシャレなオープンカフェで頭部全体に包帯を巻いた(撮影中のケガのため)異様ないでたちの音尾、かたや戸次は幼児とバギーに乗せた赤ちゃんと一緒に出てきて……と、これはこれでいろんな方向にエッジが立っている。

そして各回終了後はオンデマンドにて膨大な量の本編未公開映像で構成された『メイキング・オブ・「がんばれ!TEAM NACS」』を配信。そこで本編では出ていなかった本音、お互いに対する思いなども語られるので、5人の個性のようなものや人柄もなんとなく見えてくる。

WOWOW『がんばれ!TEAM NACS』大人の真面目なおふざけはバカバカしくてきっちり面白い

WOWOW『がんばれ!TEAM NACS』大人の真面目なおふざけはバカバカしくてきっちり面白い

けれども観れば観るほど、芝居なのか? リアルなことなのか? フェイクなのか? マジなのか? 悪ふざけなのか? といった謎は深まるばかり。普通であれば回数を重ねていくにつれ、そのどちらかがうっすら見えてくるものなのだが、どっちつかずのまま回を重ねている。そこがすごい。
さすが芸達者5人組だ。こうなったら、こちらもこのまま受けて立とうじゃないか、なんて変に頑張った気持ちになってみたりする。

というわけで、毎日曜日の23時の本編オンエアとメイキングのオンデマンド。これをセットで観ることが、なぜか翌週の活力になってきている今日この頃。やっぱり、なんだかんだ言っても酸いも甘いも噛み分けたアラフィフのオジサンは素敵に強力である。
(前原雅子)

番組概要

WOWOW
『がんばれ!TEAM NACS』

WOWOW『がんばれ!TEAM NACS』大人の真面目なおふざけはバカバカしくてきっちり面白い

出演:TEAM NACS(森崎博之、安田顕、戸次重幸、大泉洋、音尾琢真)
ゲスト出演者:吉田羊(episode1ゲスト)、満島真之介(episode2ゲスト)、瑛人(episode2ゲスト)、ヒャダイン(episode3ゲスト)

監督:堀切園健太郎、上條大輔
脚本・構成:竹村武司
制作:坪井力
プロデューサー:岡野真紀子、近見哲平、下井健一
企画:クリエイティブオフィスキュー アミューズ
制作協力:テレパック
製作:WOWOW アミューズ

番組サイト:https://www.wowow.co.jp/drama/original/teamnacs/
番組公式Twitter:@TEAMNACS_WOWOW

●放送スケジュール
episode1:7月15日(木)よる6:00
episode2:7月15日(木)よる6:30
episode3:7月15日(木)よる7:00
episode4:7月15日(木)よる7:30
episode5:7月18日(日)よる11:00
episode6:7月25日(日)よる11:00
episode7:8月1日(日)よる11:00
episode8:8月8日(日・祝)よる11:00
final episode:8月15日(日)よる11:00

※各話放送終了後、WOWOWオンデマンドでもvol.1~9を順次配信

【詳細を見る】WOWOW お申し込みカンタン!

<加入月は無料>


Writer

前原雅子


フリーライター、音楽系が多い。読書、ジャンクから高級物まで広く食するお菓子、気の向いたときにする家事が趣味。