
SixTONESが5thシングル『マスカラ』をリリース
SixTONESが新曲をリリースするたびに、表題曲はもちろんのこと、カップリング曲の充実ぶりには何度も驚かされてきた。8月11日リリースの5thシングル『マスカラ』も同様で、通常盤・初回盤Bに収録の「フィギュア」は、全編英語詞のカップリング2曲「Make Up」「Lost City」とはまた違った世界観でSixTONESの音楽を印象づける。【関連レビュー】SixTONESの新たな輪郭形作る挑戦 4thシングル『僕が僕じゃないみたいだ』全曲レビュー
メンバー登場せずとも彼らの存在を強く感じるリリック
MV<裏切らないものを僕らずっと探して生きてる>――ジェシーの歌声からはじまる「フィギュア」。続く京本大我が少し弾みをつけた歌声で惹きつけ、これからはじまる物語へと誘う。「フィギュア」の楽曲制作を手掛けたのはボカロPで、自身もアーティストとして活躍するくじら。アニメーションは「うやむや」に続いて、えむめろがアニメーションを担当。イラストは、香港在住のイラストレーター、リトルサンダーが手掛けた。
7月14日には、SixTONES公式YouTubeチャンネルにて、全編アニメーションによるリリックMV(YouTubeVer.)を先行公開。現在までに動画再生数427万回(8月10日現在)を突破している。
【視聴】SixTONES - フィギュア [YouTube Ver.]
リリックMVは、画面いっぱいに広がる海と共にサビから始まる。夕暮れの海辺に佇む一人の青年の後ろ姿。楽曲の進行に沿ってシーンが変わり、自室で頬杖をつき、窓の外を眺めながら物憂げな表情を浮かべる。一見、静かなようでいて、頭の中ではあれこれ考えを巡らせている――。
SixTONESのメンバーが登場しないMVだが、歌唱パートごとにメンバーカラーを取り入れたアニメーションで、彼らの存在が色濃く感じられる。全体的にくすみカラーで統一し、晴れない心情や楽曲の持つ優しさが投影されている。
また、歌詞には季節感を表す直接的な描写はないものの、海、Tシャツ、部屋に吊るしただるま、すいか、てるてる坊主の風鈴、すいかに金魚と、リリース時期ともマッチする夏らしいムード。

バトンを渡すように歌い継がれる心情描写
Aメロからは松村北斗、森本慎太郎、高地優吾、京本大我、ジェシー、田中樹と、バトンを渡すように心情描写を歌い継いでいく。Bメロの終わりをジェシーがサビへとつなげ、サビからは6人のユニゾン。軽やかでありながら、まっすぐで素直な気持ちが伝わってくる、温かみを感じる声の重なり。「マスカラ」で聴かせる艶っぽい濃厚な印象とはまた違う、青さを帯びた声色。両作品のコントラストに惹きつけられる。1サビ終わり、<1人、無音の部屋でゆらぐ夜>からはメッセージ性が増す。<あなたまだ十分こどもでいいんだよ>と、ジェシーが隣に座って語りかけるように歌う。
そして、SixTONESの楽曲を印象づけるラップパートへ。ポップな雰囲気のまま終わらせずエッジを効かせる。MVでもダークトーンに変わり、嘆きや心の声に迫る。
存在こそしているが中身はからっぽ、周囲の言葉や境遇によって自分を見失った、と捉えると、<Barcodes gotta be erased>一定のルールに沿ってつけられたバーコードを消去、レッテルをはがす、過去の自分を越えろというメッセージにも受け取れる。田中のラップもこれまでとは違うスタイルで、表現力の幅に気づかされる。

胸を打たれるストレートな歌詞
歌詞全体を見てみると、語尾に「~る」が多用されているのが印象的。また、悩むのも今を生きているから。まだ諦めていないからこそ、<後悔のない生き方で進もう>というストレートな言葉に胸を打たれる。目の前に広がる海、これから沈む夕陽を眺める青年。MVに登場する夕陽、歌詞の<ゆらぐ夜>の流れを踏まえれば、夕暮れ時であることがわかる。それを「黄昏時」に置き換えてみる。いまほど灯りのない昔は、辺りが暗くなると顔の区別ができない。そこで、あなたは誰?と尋ねる。そんな言葉の成り立ちに、「本当の自分は?」と内省する心情を表しているようにも解釈できる。
また、<簡単だったはずのドラマ 毎回ハズレ ガラス越しに取り替えられる>、<ショーウィンドウに並ぶ僕ら>そんなフレーズにはSixTONESがデビューを手にするまでの軌跡を重ねられなくもない。
2サビ終わりの間奏からは、鍵盤がより一層強さを増す。一歩一歩、着実に進んでいこうと、美しく力強い鍵盤の音色、様々な音の重なりからも背中を押される。
高まりをみせるラストの一節、田中の優しさを感じる歌声からはじまり、松村、京本の透き通るような美声、森本と高地の笑顔が浮かぶ歌声でつなぎ、ラストはジェシーの伸びやかな<あるがままで>で締めくくる。
SixTONESらしいエール
華々しいCDデビューから1年半。グループとして、個人としても活動を続けてきた彼ら。楽曲を通して伝わるメッセージにも深みが増す一方で、「フィギュア」は肩の力の抜き方を教わるような、SixTONESらしいエールソングだ。裏切らないもの……SixTONESが楽曲を通して、ファンにくれた音や言葉もその一つ。ライブでは時間を忘れさせるほどの惚れ惚れするパフォーマンスを、YouTubeやラジオ、バラエティ番組からは腹を抱えるほどの笑いを、そして音楽からは、彼らの好奇心を通してジャンルレスに様々な音を聴かせてくれる。
そして6人の<正しくあればいい、後悔のない生き方で進もう>や、森本の<代替不可であれよ>、ジェシーの<あるがままで>などのワードがいくつも耳に残るフレーズ。この先も、ふとしたときに浮かんでは、心の支えになってくれるのだろう。
あるがままを包み込んで、そっと背中を押してくれるような「フィギュア」。いつまでも大切にしまっておきたいSixTONESからの手紙のような楽曲だ。
(柚月裕実)
関連リンク
■SixTONESオフィシャルサイトhttps://www.sixtones.jp/
柚月裕実
Web編集/ライター。ジャニヲタ。アイドルがサングラスを外しただけでも泣く涙腺ゆるめな30代。主にKAT-TUNとNEWSですが、もはや事務所担。
@hiromin2013