『ワイルド・スピード』最新作が"いつものやつ"すぎて嬉し泣き 偉大なるマンネリの面白みを味わえ!
(C)2021 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

ワイルド・スピード、シリーズ9作目。堂々たる本数になった最新作『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』は、シリーズが長年かけて積み上げてきた蓄積をフル活用した、偉大なるマンネリの面白みを味わう一本である。


【関連レビュー】『ワイルド・スピード ICE BREAK』は小学生並みの発想でできている、最高だ

マジで「いつものワイスピ」、今回もクルマと腕力で不良が世界を救う!

スタート当初はストリートレースを題材にした映画だった『ワイルド・スピード』シリーズだが、シリーズを重ねるうちに4~5本目あたりから作風がガラッと変貌。ヴィン・ディーゼル演じる抜群のドライビングテクニックとカリスマ性を誇る男ドミニク・トレットと、彼を中心にした仲間たち(劇中では"ファミリー"と呼ばれる)が、世界的危機に根性と腕力とドライビングテクニックで挑むのが定番の展開となった。その辺にいる不良が世界的な陰謀と戦う、「チンピラスパイカーアクション」とでも呼ぶべき一大シリーズになっている。

『ワイルド・スピード』最新作が"いつものやつ"すぎて嬉し泣き 偉大なるマンネリの面白みを味わえ!
(C)2021 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

ということなので、実のところ今回も内容は「いつものやつ」である。なんか超すごいハイテクを駆使した発明品(今回のハイテク発明品は「全世界のコンピューターネットワークをハッキングして思うままに操れる装置」である)が悪い奴に狙われ、世界を救うために速い車に乗ったドムと"ファミリー"が大暴れする。

「地雷が炸裂するより速く地雷原を走れば死なない!」みたいなクソバカアイデアが炸裂するし、「クルマは空を飛ぶ」というのが常識になっているのも今まで通り、いたって平常運転である。

『ジェットブレイク』のサブタイトル通り、今回はジェットエンジンがそこそこ重要(ついでに書くとタイトルを『マグネブレイク』にしたほうがよかったのではないかというくらい"磁石"も重要)。前回はとうとうクルマで潜水艦にも勝利したファミリーが今回はどこまで走っていくのか、まあなんかタイトルからちょっと読めるような気もするけど、そこも見どころだ。

今回の『ジェットブレイク』、シリーズが積み上げてきた蓄積を大いに感じさせる内容となっている。なんせ、ストーリーを進める主要登場人物に、新規キャストがほぼいないのだ。物語のキーとなるドムの弟のジェイコブ(この作品はワイスピなので"主人公の弟"がシリーズ9作目になってからいきなり登場する)が一応新規キャラクターであり、演じるジョン・シナも初登場だが、それ以外はもう完全にいつメンである。

『ワイルド・スピード』最新作が"いつものやつ"すぎて嬉し泣き 偉大なるマンネリの面白みを味わえ!
(C)2021 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

シリーズが9本目にもなると、もうすでに以前出てきたキャラクターを再登場させるだけで充分間が保つようになっているのが凄まじい。シリーズの人気キャラクターでありながら、すでに死んだことになっていたハンが再登場することは早くから発表されていたが、今回はハン以外にも「お前も出てくるのかよ!?」と言いたくなるような懐かしい面々がゾロゾロ登場。


なんせ今までシリーズに登場したキャラだけでも相当な人数になっているので、ドムたちが「あいつに手を貸してもらおう」と言って出かけていけば、準"ファミリー"の彼らが快く協力してくれるのである。新キャラを頑張って考えなくても、過去のキャストが再登場しただけで即面白くなるというのは、これだけシリーズを重ねた映画ならではの特権だろう。

『ワイルド・スピード』最新作が"いつものやつ"すぎて嬉し泣き 偉大なるマンネリの面白みを味わえ!
(C)2021 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

"いつものやつ"を作り続けたからこそたどり着いた、マンネリの面白さ

シリーズを重ねたからこそ発生するこういった面白みが、『ジェットブレイク』には随所に盛り込まれている。例えばワイスピの定番シーンである、「空中に吹っ飛ばされた仲間をボンネットで受け止める」というくだりなんかは、出てくるだけで面白い。今回もドムの妻であるレティが盛大に吹っ飛んでそれをドムがボンネットで拾い、そしてフロントガラス越しにドムとレティの目があう……というシーンがあるのだが、これがもうあまりにもいつものワイスピすぎて、見ているだけでちょっとグッときてしまうという謎な心理状態に……。そう……ワイスピのボンネットは優しさでできているから……。



『ワイルド・スピード』最新作が"いつものやつ"すぎて嬉し泣き 偉大なるマンネリの面白みを味わえ!
(C)2021 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

もう全編こんな調子なので、シリーズを追ってきた人ならばローマンがテズにおちょくられるだけで涙腺が緩み、幼い息子ブライアンにトラクターの整備の仕方を教えるドムを見るだけで爆笑し、ドムがその太い腕で敵をぶん殴るたびにウンウンと頷くという、よくわからない反応になること請け合いである。「いつものやつ」を見せられるだけでこんなに嬉しいなんて……。

最初にこの作品は「いつものワイスピ」と書いたが、逆にここまでいつも通りの内容をシリーズ9本目になって出してくるというあたりに、製作陣のシリーズとファンに対する強い信頼を感じる。そう、我々はファミリーなのだ……!

『ワイルド・スピード』最新作が"いつものやつ"すぎて嬉し泣き 偉大なるマンネリの面白みを味わえ!
(C)2021 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

『ワイルド・スピード』最新作が"いつものやつ"すぎて嬉し泣き 偉大なるマンネリの面白みを味わえ!
(C)2021 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

この強い信頼感、知らないうちに観客もファミリーに組み込まれていた感は、やはり紆余曲折ありつつも20年かけてシリーズを展開してきたからこその味わいだろう。「クルマが空を飛び、ストリートの不良が世界を救う」というバカバカしすぎるチンピラスパイ映画を長年作り続け発酵させたからこそ獲得できた、偉大なるマンネリの安心感と面白さこそ、『ジェットブレイク』のコアなのだ。

もちろん何も知らずに「ワイスピってスキンヘッドでマッチョのおっさんがクルマに乗って暴れる映画でしょ」くらいの認識で観に行っても全然OKなのだが、個人的にはある程度シリーズを復習してから観に行ったほうが面白いタイプの映画だと思う。

というわけで長々と書き連ねたが、とにかくこのご時世に、ここまで金のかかったバカバカしい映像を、長時間集中して観るという体験は貴重だ。
大いなるマンネリの迫力と底力、現代の『水戸黄門』とでも言うべきモンスターコンテンツの最新作は、やはりぜひ映画館で味わっていただきたい。
(しげる)

作品情報

大ヒット上映中
『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』

『ワイルド・スピード』最新作が"いつものやつ"すぎて嬉し泣き 偉大なるマンネリの面白みを味わえ!
(C)2021 UNIVERSAL STUDIOS. All Rights Reserved.

出演:ヴィン・ディーゼル ミシェル・ロドリゲス タイリース・ギブソン クリス・“リュダクリス”・ブリッジス ジョン・シナ ジョーダナ・ブリュースター ナタリー・エマニュエル サン・カン ヘレン・ミレン シャーリーズ・セロン
監督・脚本:ジャスティン・リン
脚本:ダニエル・ケイシー
配給:東宝東和

公式サイト:https://wildspeed-official.jp/
(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.

Story



兄ドミニク VS 弟ジェイコブ ワールドクラスの兄弟バトル!!



ドミニクはレティと幼い息子のブライアンの3人で静かに暮らしていたが、ある日仲間のピンチの知らせを聞く。ローマンら“ファミリー”と合流したドミニクは、現場で世界中のコンピュータ・システムを操る装置を見つけるが、突如襲撃者が現れ、装置を奪っていったのはなんと弟のジェイコブだった。凄腕の殺し屋で一流ドライバーであるジェイコブは、実は某国の独裁者組織の一員で、ドミニクたちは世界を震撼させる陰謀を止めるため動き出す。対立する兄と弟…明かされるドミニクの過去…果たしてファミリーの運命は?!


Writer

しげる


ライター。岐阜県出身。元模型誌編集部勤務で現在フリー。月刊「ホビージャパン」にて「しげるのアメトイブームの話聞かせてよ!」、「ホビージャパンエクストラ」にて「しげるの代々木二丁目シネマ」連載中。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

関連サイト
@gerusea
編集部おすすめ