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恋ってけっきょく…『プロミス・シンデレラ』最終回
早梅(二階堂ふみ)をめぐる壱成(眞栄田郷敦)と成吾(岩田剛典)の三角関係ではじまった『プロミス・シンデレラ』(TBS系 火曜よる10時〜)だが、もはや早梅と壱成エンドしか考えられない。最終回は簡単にそうなったらつまらないので、できるだけ大変そうなハードルを仕掛けてみたという感じだった。【前話レビュー】『プロミス・シンデレラ』早梅が成吾に喝! 凶悪な菊乃に挑む壱成もハードボイルド

そこで大活躍するのは菊乃(松井玲奈)。
成吾のためと言って早梅の幸せを邪魔する菊乃。早梅の夫・正弘(井之脇海)を色仕掛けで陥落させて離婚に導き、壱成と早梅がうまくいきそうになるとまた邪魔をする。菊乃のやり口は常に色気と暴力である。
スタンガンで壱成を倒し、引きずって監禁する菊乃。どんだけ力もちなんだよ菊乃。壱成のスマホから今晩は帰らないと嘘メールを送る。どんだけ悪女なんだよ菊乃。

翌朝、早梅の元に監禁されている写真を送信。そして電話をかけ、壱成を助けたかったら「そういう関係になれ」と脅す。

それに比べて早梅のいついかなる時でも毅然と清廉潔白な態度よ。きっとそれがまぶし過ぎたのだろう。菊乃は「早梅さんに汚れてほしいの」と本音を壱成に語る。それを聞いて壱成は「てめえの自己満じゃねえか」と容赦ない。
自己満足というか、自分でも何やっているのか菊乃はわからなくなっているんだろうなあと思う。暴力、色欲、狂気……今のテレビドラマではコンプライアンスの枷があってやれないことを菊乃ひとりでやっている。それを演じている松井玲奈がすごい。

じつは最初の頃、壱成もそっちの世界の人だった。ホームレスになった早梅を「飼う」なんて人権侵害なことを言って莫大な借金を背負わせ、その返済のためにゲームをやらせて楽しんでいた。なかなかに非道くて下衆い人物だった壱成は早梅の純粋な光を受けて浄化されてしまい、いまや光の国の人になった。
純粋な早梅+純粋な壱成で最強。成吾は高校の時、何もかも捨てて助ける選択ができなかったが、今の壱成ならそれができる。

「俺が18になったら結婚すんぞ」
監禁場所は「花火大会の日男の子が忘れていった虫かごの横だよ」という壱成と成吾にだけわかる暗号によって判明し、早梅が猛ダッシュして救出に向かう。「この町で俺と壱成が知らない場所はない」と言う成吾のセリフが兄弟の仲良かった時代を思い出させると同時に兄弟の復活も物語るようだった。菊乃は成吾にも「私の目の前で彼女と関係を持って」と言ってますます下衆度を上げていくが、事件ものの王道・録画&録音パターンによって、黒瀬(金子ノブアキ)が菊乃の語ったことを全部録画。逃れようのない犯罪の証拠が残ってしまうのだった。

「何がいけなかったの」とわななく菊乃。わかんないところがもうやばい。逃げ出して包丁を首につきつけ死のうとするが、とことん自虐的な彼女のことを、高校時代「醜いとも惨めだとも思ってなかったよ」と成吾は優しい。そこへ早梅が登場。ここからふたりの女の肉弾戦。いやあすごい。
ここで痛感したのは、恋ってけっきょく、野性的な本能の成せる技であり、理屈なんかなくて、少しばかりずれているものなのであるということ。人間は色欲に振り回されたりもするものなのだ。今はやさしく理知的なコミュニケーションが求められる世の中だけれど(成吾がそっちの人側なんだと思う)、実際のところ、恋とか愛とかはそんなものじゃないのではないだろうか。少なくとも人類の100%が知性的になんてなれない。何%かはがむしゃらに愛を貫くのではないか。


二階堂ふみと眞栄田郷敦はそういう人間の野性味の魅力をみごとに体現していたと思う。とりわけ眞栄田郷敦の魅力が十二分に出ていたので、彼のプロモーションドラマとしては大成功であろう。
これでめでたしめでたし。となるかと思えば、まだ22時32分。あと20分くらい残っている。
早梅は旅館かたおかを辞めて引っ越そうとしていた。


去っていく彼女を自転車で猛然と追いかけて、壱成は素敵な靴をプレゼントする。靴にはじまり靴に終わった物語。サイズが合ってないところはご愛嬌。いろいろ言っていたが、壱成の「俺が18になったら結婚すんぞ」が最強セリフだった。このシンプルな強さに人間よ、立ち返れ。
失意の菊乃を早梅の元夫が迎えにくるところにはびっくりした。成吾にも幸あれ。
(木俣冬)

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番組情報
TBS火曜ドラマ『プロミス・シンデレラ』
毎週火曜よる10時〜
出演:二階堂ふみ
眞栄田郷敦 松井玲奈 井之脇 海 松村沙友理 堺 小春
高橋克実
友近 森カンナ 金子ノブアキ
三田佳子(特別出演)
岩田剛典
原作:橘オレコ「プロミス・シンデレラ」(小学館「マンガワン」連載中)
脚本:古家和尚
音楽:やまだ豊
主題歌:LiSA「HADASHi NO STEP」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
演出:村上正典(共同テレビ) 都築淳一(共同テレビ) 北坊信一(共同テレビ)
プロデューサー:橋本芙美(共同テレビ) 久松大地(共同テレビ)
制作著作:共同テレビ TBS
番組サイト:https://www.tbs.co.jp/promise_cinderella_tbs/
木俣冬
取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。
@kamitonami