『プロミス・シンデレラ』第9話 早梅が成吾に喝! 凶悪な菊乃に挑む壱成もハードボイルド
イラスト/ゆいざえもん

※本文にはネタバレがあります

※次回最終回のレビューを更新しましたら、エキレビ!のツイッターにてお知らせします


早梅・壱成・成吾それぞれの覚悟『プロミス・シンデレラ』第9話

キスのあと、早梅(二階堂ふみ)の小さな頭を壱成(眞栄田郷敦)のごつい手が抱えて、「テメーは俺のことだけ見とけよ、バカ女」と強気な発言。早梅は顔がとろり、うるり。『プロミス・シンデレラ』(TBS系 火曜よる10時〜)第9回は弟のように見ていた壱成を意識してしまった早梅の葛藤。
おりしも悦子(三田佳子)が旅行で屋敷を空けてふたりっきりに……。でも早梅は悩む。なにしろ10歳違い。出会った頃なんて完全に「おばさん」扱いだったから。

【前話レビュー】『プロミス・シンデレラ』お姫様抱っこVS山賊抱っこ♡早梅のハートを射止めるのはキスした壱成か

『プロミス・シンデレラ』第9話 早梅が成吾に喝! 凶悪な菊乃に挑む壱成もハードボイルド
(C)TBS

女性が10歳年上は恋のハードルだろうか。火10時ドラマでは『中学聖日記』という10歳差恋愛の成功例がある。
放送開始時は中学生(岡田健史)と教師(有村架純)の恋愛だったため、倫理観の高い視聴者が引き、中学生と大人の恋愛の是非が物議を醸すことになったものの、高校生になると気にならなくなり、むしろ熱狂的に盛り上がった。

『プロミス・シンデレラ』は高校男子と成人女性、しかも教師ではないので問題なしであろう。年齢差を気に病むのは早梅だけ。精神年齢は早梅と壱成、同じくらいに見えるから。

お屋敷にふたりきり。各々の作った食事を食べる。
早梅は料理が斬新かつ雑、壱成は祖母仕込みで巧い。この差もまたふたりをある種近づけていく。

『プロミス・シンデレラ』第9話 早梅が成吾に喝! 凶悪な菊乃に挑む壱成もハードボイルド
(C)TBS

『プロミス・シンデレラ』第9話 早梅が成吾に喝! 凶悪な菊乃に挑む壱成もハードボイルド
(C)TBS

その後、ふたりきりの屋敷で「抱きしめていい?」「いいけど」「それ弟に向ける顔じゃなくね」などと言ういちゃいちゃ展開になるも、壱成は紳士的だった。躊躇する早梅に無理やりなんてことはしない。待つ。本当に大事な人には人は礼儀正しく優しくなるのである。


凶悪で厄介な菊乃

問題は他にある。早梅が高校時代、思いを寄せていた成吾(岩田剛典)が早梅をいまだに想っていること。成吾を想う菊乃(松井玲奈)が早梅にいやがらせを仕掛けてくることである。これだけならよくある恋愛ものの当て馬が成吾で、ヒロインのライバルが菊乃というところで収まるのだが、『プロミス・シンデレラ』の個性的なところは、菊乃がイジワルはイジワルでも、すべて成吾と早梅が結ばれるためにやっていることである。

『プロミス・シンデレラ』第9話 早梅が成吾に喝! 凶悪な菊乃に挑む壱成もハードボイルド
(C)TBS

『プロミス・シンデレラ』第9話 早梅が成吾に喝! 凶悪な菊乃に挑む壱成もハードボイルド
(C)TBS

菊乃の思考は独特過ぎる。高校時代、成吾と同級生で彼に想いを寄せていたが、早梅がいたので諦めた。整形して芸者になって旅館かたおかの仕事も請負い、3年前から成吾とも関係をもっていたが、早梅の存在をチェックしていて、夫(井之脇海)と別れるように仕向ける。




早梅が成吾と結ばれなかったら周囲の人を巻き込むと早梅を脅す様子はちょっと普通じゃない。第8話の花火大会で早梅を崖から突き落とすなんて酷いことをしたのに、別日、のこのことお見舞いにやってくる。いつも冷笑のようなものを浮かべているところも怖すぎる。

ドラマにはこの手の異物が必要不可欠。主人公たちより菊乃のようなモンスター系脇役が理解不能な言動で暴れてくれたほうが盛り上がる。その点、松井玲奈はことのほか長く見える首によってミステリアスな印象を醸していい仕事をしている(壱成いわく「蛇女」)。


『プロミス・シンデレラ』第9話 早梅が成吾に喝! 凶悪な菊乃に挑む壱成もハードボイルド
(C)TBS

見ているほうは菊乃のホラー的な“怖おもしろさ”を楽しめるが、ドラマの中の登場人物にとっては厄介。早梅は成吾に「ぬるいこと言ってないでよ」と菊乃をしっかり取り締まるように厳しく言う。このときの早梅がかなりたくましく、成吾はかたなし。彼は彼で菊乃を旅館から出禁にすると宣言して、そのせいで菊乃のご贔屓客が続々旅館から離れて窮地に立たされるのだが……。

一方、壱成は積極的に行動に出て、早梅の元夫にまで会いに行ったり、ついには菊乃に直接交渉に出たりする。その前に成吾に「早梅を頼む」「兄貴への頼みごとはこれっきりだ」と言うところは今回の見せ場であろう。
愛する早梅のために凶悪な菊乃と闘う覚悟をもって歩いていく壱成はハードボイルドである。

『プロミス・シンデレラ』第9話 早梅が成吾に喝! 凶悪な菊乃に挑む壱成もハードボイルド
(C)TBS

『プロミス・シンデレラ』第9話 早梅が成吾に喝! 凶悪な菊乃に挑む壱成もハードボイルド
(C)TBS

なんかこれが恋愛じゃなくてもっと大きな題材であったら見ごたえがあるのになあと思う。恋愛だって大事だけれど、「早梅を頼む」「兄貴への頼みごとはこれっきりだ」と菊乃と相打ち覚悟みたいなセリフと壱成のシリアスな表情がラブコメの域を超越して見える。ラブコメなのだったらもうちょっと柔らかいセリフやシチュエーションを作れないものだろうか。多様性の時代だからハードボイルドなラブコメもありなのかもしれないが。

そしてまた菊乃がスタンガンを使用する。いかれ過ぎな菊乃。次回最終回、最後に笑うのは誰?
(木俣冬)

Paravi
【Paravi】『プロミス・シンデレラ』全話

松村沙友理主演オリジナルストーリー『シンデレラ・コンプレックス』独占配信<2週間無料>


【関連レビュー】岩田剛典 三代目JSBのパフォーマーながらソロデビュー、役者としても活躍するLDHの“王子”

番組情報

TBS
火曜ドラマ『プロミス・シンデレラ』
毎週火曜よる10時〜

出演:二階堂ふみ
眞栄田郷敦 松井玲奈 井之脇 海 松村沙友理 堺 小春 
高橋克実
友近 森カンナ 金子ノブアキ
三田佳子(特別出演)
岩田剛典

原作:橘オレコ「プロミス・シンデレラ」(小学館「マンガワン」連載中)
脚本:古家和尚
音楽:やまだ豊
主題歌:LiSA「HADASHi NO STEP」(SACRA MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
演出:村上正典(共同テレビ) 都築淳一(共同テレビ) 北坊信一(共同テレビ)
プロデューサー:橋本芙美(共同テレビ) 久松大地(共同テレビ)

制作著作:共同テレビ TBS

番組サイト:https://www.tbs.co.jp/promise_cinderella_tbs/


Writer

木俣冬


取材、インタビュー、評論を中心に活動。ノベライズも手がける。主な著書『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズルポルタージュ』、構成した本『蜷川幸雄 身体的物語論』『庵野秀明のフタリシバイ』、インタビュー担当した『斎藤工 写真集JORNEY』など。ヤフーニュース個人オーサー。

関連サイト
@kamitonami