※本文にはネタバレがあります

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『武士スタント逢坂くん!』何事にもまっすぐに、一生懸命に向き合ってきた逢坂くんが愛しすぎた最終話
イラスト/おうか

とうとう来てしましった『武士スタント逢坂くん!』最終話

ヨコヤマノブオ『武士スタント逢坂くん!』(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)が原作のシンドラ『武士スタント逢坂くん!』(日本テレビ系)。江戸時代からタイムスリップしてきた逢坂総司郎を濱田祟裕(ジャニーズWEST)が演じる。

【前話レビュー】『武士スタント逢坂くん!』男女の交わいのみが愛ではなく、春でもない――逢坂くん、愛を知る

迷子のチワワ、エレベーターに人物画を描いたビル、チーム宮上で行ったイタリアンレストラン、街で遭遇した悟流権憎羅宗則政親っぽいヤツ、慶太(山口大地)、逢坂が令和にやってきてからの出来事が走馬灯のように駆け巡った第10話。

とうとう来てしまった最終回。逢坂くん……江戸に戻らないで!

「逢坂総司郎、願いは叶ったか?」

逢坂が幼少期に出会い、圧倒された巨大な龍の絵。どこからともなく声が聞こえた……。第9話のラストで別世界へ吸い込まれそうになっていた逢坂。まさか……と嫌な予感がしていたけれど、第10話でその予感は的中した。

「逢坂はもっともっと絵を描きたかった……逢坂の絵で、喜ぶ人の顔が見たかった……」
体を縛られ、悔しさで下を向いたあの日。逢坂は江戸で禁じられていた春画を描いていることがみつかり、処刑寸前のあの時を思い出していた。

逢坂の目には逢坂にしか見えない世界が広がっていた。「そうでござったか、逢坂は自分の願を叶えるために令和に……」。江戸時代へ引き戻されそうになっていた逢坂の腕を掴んだのが宮上先生(今井隆文)。宮上先生は、単行本のおまけ漫画を描くよう逢坂に依頼する。「ただ描くんじゃない、テーマを設けさせてもらう。
『漫画と出会って』」。

宮上先生の師匠であるAEG先生も「お前の全身全霊、その全て! そのパッションを! その情熱を! どう伝えるのか…楽しみにしているぜ!」。熱い言葉と、長い舌で逢坂を激励した。可愛がり方もクセが強すぎる……!

そんな中、宮上先生も担当編集の丹内(久保田紗友)も、タイムスリップをテーマにした漫画と逢坂の事情を重ねながら心配していた。今世で逢坂の目的が達成されてしまったら、江戸に戻ってしまうかもしれない……。いつの間にかみんなの中で逢坂の存在は大きくなっていた。

緋村の奮闘

「全身全霊ありのまま……」。AGE先生の言葉をつぶやく逢坂の隣で、緋村清人(森本慎太郎/SixTONES)もその教えをつぶやいていた。

逢坂と出会って最も変わったのは緋村かもしれない。初めは逢坂に対して敵対心を剥き出しにしていた。なにせ、ほぼ裸のちょんまげ姿の男性がいきなりタイムスリップしてきたのだからそれも無理はない……。

第2話で繰り広げた逢坂との相撲対決をきっかけに、逢坂のまっすぐな漫画愛に、かつての自分にも宿っていた“昂ぶり”が蘇った。漫画を描くと宮上先生に宣言したのが第7話だった。


「今までの経験、感じたこと……自分の全てをかけてこの漫画に挑んでいます」と話す緋村。表情も初回に比べたら随分と穏やかになったことからも、迷いを断ち切って腹を括った感じ、漫画に情熱を傾け、心が満たされている様子が伝わってきた。



自分を探しにでかけたら

うまく軌道にのった緋村に対して、宮上先生のダメだしを受けた逢坂。自分を探しに行くとベランダから飛び降りた。もう誰も驚く人はいない。「行ってらっしゃい!」「これ持ってって!!」と慣れた様子で窓の外にバッグを投げる瀬戸水緒(長井短)

そうそうこれこれ、衝動的な逢坂よ! 段取り良く準備万端もいいけれど、少々極端ではあるが大人しくしちゃいられない。昂ぶってんだから!

ここから逢坂の令和での生活を逆再生したかのような出来事に遭遇する。かつては謎の壺を売りつけていた悟流権憎羅宗則政親っぽいヤツ、慶太(山口大地)は更生していた。あの壺に梅干しを詰めて1壺1000円で販売、しかも蓋つき! 慶太は逢坂に会って変わったと話す。「逢坂さんみたいにまっすぐ生きたくなったんです」。そして一粒の大きな梅干しをもらった。

逢坂はベンチに正座して梅を眺め、うんと頷いて口に運ぶ。
「うぉー」と酸っぱそうな顔。ここから、あの時助けたチワワ、エレベーターに描いた絵を思い出してビル前へ。かつてみんなで来たイタリアンレストランも、今日は丹内と2人。すると絵にサインをしてくれと店主から頼まれる。

涙を誘うような場面ではないのだけれど、春に魅せられ、令和にタイムスリップしてから必死に駆け抜けてきた逢坂。春や漫画を愛し、周囲に敬意を払い、丹内殿に恋をして……何事にもまっすぐに、一生懸命に向き合ってきた逢坂の姿を思い出すとなんだか涙が出てきた。

「丹内殿、逢坂は令和に来て新しい春をみつけ申した。逢坂総司郎はまん画に恋をしております」。江戸では身を隠すようにして描いていた春画も、令和では春もオープンに。スタイルも漫画になって、何人もの人に関わってこそ成り立つ。

「全身全霊、生まれたままの逢坂に」。シャワーを浴びて気合を入れ直す逢坂に、「できました」と原稿をみせた緋村。
タイトルは『武士スタント 逢坂くん!』。そうつながるか!

シューーー! ホースから放たれる蒸気、逢坂の全身全霊、ありのままスタイルが完成した。これまで覚えた技術を集結させて、いざ!

『武士スタント逢坂くん!』何事にもまっすぐに、一生懸命に向き合ってきた逢坂くんが愛しすぎた最終話

「逢坂総司郎、願いは叶ったか?」の問いに、逢坂は……。

「面白いよ」。デスクで寝落ちした逢坂にそっとやさしい声をかけた宮上先生。タイムスリップしてきた逢坂をさらっと受け入れて、とりあえず服を着させて、令和の街へ連れ出し……。何かと目をかけてきた。新刊コミックの発売日に書店に行き、楽しげに読む男性の姿を見て笑いあった。だが、ついにこの日が来たのだ。

喜んだのも束の間。きれいに畳まれた逢坂の服を持ってトボトボと歩く宮上先生。状況を理解した瀬戸はアゴにしわを寄せて、歯を食いしばっていた。
緋村は電話で嬉しい知らせを受け、複雑な表情で伝える。宮上先生が良かったなって喜ぶのだけど、緋村も瀬戸も……みんなどんな顔をしたらいいか、どんな感情を表したらいいのかわからなかった様子。逢坂との突然の別れ、努力が実った喜びを同時に噛みしめたような緋村の表情があまりにもリアルで泣けてきた。

「逢坂総司郎、願いは叶ったか?」

願いが叶い、一度は江戸へ戻った逢坂。しかし、漫画を読んだ読者が続きが読みたいとリクエスト。そして、「まだまだ描きたい、逢坂は漫画が描きたいでござる!」ーー昂る逢坂の願いが再び叶った。



「先生!?」。緋村の言葉に、「わかんない……わかんないでしょーー!!!」泣き笑うような表情の宮上先生。誰よりも春とまん画を愛し、その思いが突き抜けている逢坂。

スタート当初はメインビジュアルも相まって、肉体美のインパクトが大きかった。一体どんなドラマになるのか想像が付かなかったけれど、一つのこと、漫画に熱中して、それをごく自然に支えあう仲間がいて、時にはぶつかることもあったけれど、各々が熱を注げる雰囲気があった。

ライバルの登場でお互いを高め合った逢坂と緋村。
一時は険悪な関係だったが、意見をはっきりと主張した丹内と瀬戸。ぶつかって初めてわかることもある。

宮上先生も、昂るまま衝動的な逢坂にはその熱が消えないように。アシスタント歴が長く、どこか目標を見失っていた様子の緋村には、自身の心の奥底から気持ちが湧き出る時まで待つ。宮上先生の愛あるアシストもこのドラマを魅力的にしていたと思う。

今回はおまけ漫画を手掛けた逢坂。この先、読み切りに連載……とまだまだやることはあるぞ、逢坂くん!
(柚月裕実)



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番組情報

『武士スタント逢坂くん!』
※放送終了

主演:濱田崇裕(ジャニーズWEST) 森本慎太郎 久保田紗友 長井短 今井隆文
原作:ヨコヤマノブオ『武士スタント逢坂くん!』(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)
脚本:坪田文 伊達さん
演出:渋江修平 大江海
音楽:近谷直之

編成企画:安島隆 河野雄平
コンテンツプロデューサー:岩崎広樹
チーフプロデューサー:福士睦
プロデューサー:諸田景子 長松谷太郎 中野有香
制作プロダクション:ギークサイト
製作著作:日本テレビ ジェイ・ストーム
(C)ヨコヤマノブオ・小学館/NTV・JStorm

番組公式サイト:https://www.ntv.co.jp/bushi/
番組公式サイト:@bushi_ntv


Writer

柚月裕実


Web編集/ライター。ジャニヲタ。アイドルがサングラスを外しただけでも泣く涙腺ゆるめな30代。主にKAT-TUNとNEWSですが、もはや事務所担。

関連サイト
@hiromin2013

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