朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第1週「1925-1939」

第1回〈11月1日(月)放送 作:藤本有紀、演出:安達もじり〉

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第1回 これは良い朝ドラ 2015年から毎日レビューしてきた筆者太鼓判
写真提供/NHK
※本文にネタバレを含みます

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これは良い朝ドラ

のっけからシャレが効いていた。冒頭、ラジオからアナウンサーが「アー アー 聞こえますか JOAK JOAK こちらはNHK東京放送局であります」とゆっくりとはっきりと語りかける。『カムカムエヴリバディ』の制作はBKことNHK大阪だが、ドラマは「JOAK」――AKこと「東京放送局」からはじまった。

【レビュー一覧】朝ドラ『カムカムエヴリバディ』のあらすじ・感想(レビュー)を毎話更新(第1回〜掲載中)

『カムカムエヴリバディ』はラジオの英語番組を軸にした100年の物語。1925年(大正14年)3月22日、日本で初めめてのラジオ放送がNHK東京放送で行われた。その頃、生まれたのが岡山の和菓子屋を営む橘家の安子(子役:網本唯舞葵)という女の子。

そういう物語のはじまり(昔むかし、おじいさんとおばあさんが山に住んでいました的な)はBKなのに、AK。これ、面白いでしょというふうにやっているわけではけっしてないだろう。でも気づくとちょっとおもしろくて、胸の奥があたたまる。おめざに極上の甘納豆を一粒いただいたような気分になった。ちなみに、大阪放送局が開局するのは1925年6月。

ラジオ放送用の丸いマイクに「EPISODE 001 連続テレビ小説」とテロップが入り、そこから丸い鍋に丸い小豆がぐつぐつと煮える画。昭和のはじめの岡山の商店街のモノクロ映像に徐々に色が着いて、生まれたばかりの物語が立ち上がっていく。なんて洗練された流れであろうか。

『ちりとてちん』『平清盛』『ちかえもん』と名作の数々を作り出してきた藤本有紀の脚本と、『カーネーション』『花子とアン』『まんぷく』と多数の朝ドラと『夫婦善哉』『心の傷を癒やすということ』など名作を数々手掛けて来た演出家・安達もじり。このふたりなら当然のクオリティー。安心して観ることができる。

『みんなの朝ドラ』で朝ドラ研究し、2015年から毎日朝ドラを記録してきた筆者が太鼓判を押す。これは良い朝ドラ。安子が朝、商店街を走って友達を誘って小学校(安子は小3)に向かうカメラの流れも気持ちよかった。

ラジオを泥棒

和菓子屋の菓子の数々、食卓の風景(味噌田楽)、お弁当(卵焼き)……と目に美味しく、いい朝ドラと思ったら、安子の兄・算太(濱田岳)がいきなりラジオの窃盗をやらかす。庶民にはなかなか手が届かないラジオを浅丘町商店街の荒物屋の主人・赤螺吉兵衛(堀部圭亮)が持っていた。

橘家では祖父・杵太郎(大和田伸也)が購入を反対する。算太はラジオを欲しがる安子のため(ということにして自分も欲しかったのだろう)に盗ってくるのだ。赤螺がちょっと目を離した隙に持ち出すとは走っこい。

金太は算太をともなって謝りに来るが、当然ながら吉兵衛は怒る。とそこへ杵太郎が赤螺家の出産祝の菓子を持ってくると、吉兵衛は大目に見てくれる。

朝ドラ『カムカムエヴリバディ』第1回 これは良い朝ドラ 2015年から毎日レビューしてきた筆者太鼓判
写真提供/NHK

なんて素朴な展開であろうか。窃盗に対する深刻な話にはならない。でも泥棒だよ? とちょっと気になるが、算太が妹想いのお兄さんであることはとてもよくわかる。安子のおままごとにつきあっている場面もじつにほのぼのしていた。

算太はお調子者かつ粗忽者に見える。和菓子修業をしているが熱心ではない設定である。しっかり者の祖父に頭があがらなそうな父、和菓子にあまり興味がなさそうな兄と橘家の男性陣の立ち位置も明確だ。ただし3人とも安子に優しい。

吉兵衛が満足そうに聞いていたラジオから流れる落語は「始末の極意」。始末――節約の極意をおもしろおかしく語るもの。吉兵衛はケチで、「ケチ兵衛」と言われるくらいの人物で、その彼が聞いている落語としてはぴったり。

また、「始末」といえばBK制作の朝ドラ『ごちそうさん』では「始末の料理」が出てきたし、『わろてんか』ではヒロインの義母が「始末」を家訓にしていた。BK制作朝ドラには「始末」はつきものといっていいだろう。


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