2020年上半期、世界中の自動車産業が新型コロナウイルス感染拡大によって生産台数の減少を余儀なくされ、大きな影響を受けた。下半期に入ってから少しずつ回復の兆しを見せてはいるものの、本格的に需要が戻ってくるのは、まだまだ時間がかかりそうだ。


 そんな中、自動車産業復活にむけて大きな期待がかかるのが、先進運転支援システム(ADAS)と自動運転システムだ。富士キメラ総研が3月に発表したレポートによると、車載電装システムの世界市場は2030年には2018年比で約2倍となる48兆9120億円に成長すると見込んでいる。その内、ADASシステムは同比で2.5倍となる1兆3037億円、自動運転システムにいたっては同比464.9倍の2兆2781億円と、それぞれ大幅に拡大すると見られていた。当然、それ以降の新型コロナの席巻を考えると、数値自体は見直す必要があるだろう。しかし、それでも今後の自動車産業を牽引する分野であることには間違いない。


 その証拠に、最新の自動車の運転席に座ると、電子ミラーや液晶クラスター、フロントガラスに投影されるHUD(ヘッドアップディスプレイ)、手元のタッチパッドや大型ディスプレイによるカーインフォテインメントなど、目に映る範囲だけでも電装化が急速に進んでいるのがよく分かる。

まるで20世紀の人々がSF映画の中で思い描いた未来の車そのものだ。


 しかし、自動車の電装化やシステムの発展に伴って新たな課題も生まれている。電装部品が増えるということは、それだけ車内で消費される電力が増えるということだ。ところが、自動車のバッテリと発電機から供給できる電力量は限られている。バッテリや発電機自体の性能も向上しているとはいえ、限界がある。今後、ADASや自動運転システムがさらなる発展を遂げて普及していくためには、電装部品それぞれの消費電力をできるだけ抑える必要がある。


 そこで注目されているのが、電装部品において電力のマネジメントを行う、電源IC技術だ。その中でも、アナログ技術を得意とするローム株式会社〈6963〉が10月20日に発表したばかりの「BD9Pシリーズ」は、高効率でありながらシステムの信頼性向上も実現すると注目されている。同製品は、バッテリから供給される電力を一次変換するICで、アイドリングストップなど自動車ではよく起こる突発的なバッテリ電圧変動下においても、安定した動作を可能としているという。また、新たな制御方式の採用により、軽負荷から高負荷まで業界トップクラスの高効率を実現。走行時だけでなく、エンジン停止時の低消費電力化にも貢献する。さらには同製品と、その後段に接続され、電力を二次変換する同社の電源ICなどと組み合わせることで、システム全体で高効率かつ高速な車載用電源回路を構成できるという。

とくに、ADAS関連のセンサやカメラ、レーダー及びカーインフォテインメント、クラスターなどの分野での採用が進みそうだ。


 これから先、自動車産業では、便利さと安心・安全を両立させる技術や部品が、細部においてまで、ますます求められるようになるだろう。自動車産業の復活に向け、確かな技術力に裏打ちされた日本の電子部品メーカーに向けられる期待は大きい。(編集担当:藤原伊織)